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お礼SS.3.あなたの背中にキスをする


2010.10.3〜
お礼SS.3

※利央視点


がぶ、という効果音がぴったりなのだと思う。
兄ちゃんのソレは、いつも乱暴だから。






あなたの背中にキスをする






時々兄ちゃんは、なんの前触れもなくオレの背中に噛みついてくる。

噛みつき出してからすぐの頃は何も言わずに我慢していた。
その内に飽きて止めるんじゃないかなと思ったから。
ソレが1ヶ月続いたある日、部活の着替えの時に準さんにものすごく心配された。


お前いじめられてんのか、誰にやられたんだ。

いやいや準さん、歯形って普通恋人同士でつくものじゃん、心配しないで大丈夫だよぉ。

バカやろー。
これは普通のレベルじゃねぇよ。
おかしいって、絶対。


そしてやっと、異常なのかもしれないと気付いた。


兄ちゃんが言うにはキスらしいけど、あれは絶対キスじゃない。
「好き」を伝える行為でもなく、セックスするぞ、の合図でもない。

ただ、何度か噛みついて満足そうに笑って去っていく。
たくさん兄ちゃんの事を考えて、悩んで悩んで。


突然、わかった。


兄ちゃんは、食べようとしてるんだ。

オレを。

頭のてっぺんから、爪先まで全部。






あー。
痛い。

「うーん、なんだっけ。こういうの……カニバリズムだっけ」

「はあ?」

オレの部屋にズガズカ入り込んで来た兄ちゃんは、すごい力でオレをベッドに押し付けて、シャツを捲った。
あとは、がぶっと。


ほんっと痛いんだよね、これ。
人の嫌がることをしてはいけませんって、誰か兄ちゃんに教えてあげた方がいいんじゃないの。
オレが嫌がってないから、セーフなのかな。


とか考えていたら、ふと出てきた言葉がカニバリズム。

いつもなら無言のオレが声を発したことで、兄ちゃんが不思議そうに背中から口を離した。

「どうした、痛いか」

えー。
なんだよそれっ。

「……フツウに痛いよ、兄ちゃん気付いてなかったの?」

気付かなかった、と言いたげな兄ちゃんの顔を見て、身体の力がどっと抜けた。

バカバカ言ってる兄ちゃんのがバカじゃん。


「兄ちゃん、オレの事食べる気なんでしょ」

「何、そのやっすい誘い文句。萎えるわ」

誘ってない!

蔑んだ目で笑われた。



すっごい悩んで、カニバリズムって結論まで行ったのに。

カニバリズムもくそもないじゃんか!


でもこれで安心した……

がぶ。



「だから、痛いって言ってるでしょお!」








end



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あきゅろす。
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