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short
あさいゆめ


※呂佳視点




夢は浅い眠りの時にみるものだ。
深い眠りの後に起きるとすっきりするが、夢を見てから起きると頭がぼーっとしている。
頭がすぐに働かない状態になるのは、眠りが浅くて十分に休息できないためだ。

なぜ俺はこんな事をだらだら考えているか。
最近、眠れないのだ。
疲れているのに眠れない。
毎日のように夢をみるようになってしまった。
ていうか、夢のせいで寝れない。
内容が変過ぎて、気になって眠れない。






あさいゆめ






夢には大きくわけて二種類あるのだと俺は思う。
一つは、絵画やテレビを観るように、フレーム越しにただ眺めるだけの夢。
もう一つは、自分も夢の中の出来事の一員となっている夢だ。

俺は眠っている間も不思議と意識がはっきりしているため、夢だと理解した上で夢をみることが多い。


今日はこんな夢をみた。


利央が白いふわふわの服を着て、頭にこれまた白いふわふわのカチューシャをつけていた。
可愛い。
利央がこちらに手を振って叫んだ。

「よいこは寝る時間だよぉ、一緒に羊を数えましょー」

ああ、羊だったのか、その格好は。

今回の夢はフレーム型夢のようだ。

利央はとことこ画面端に向かうと、右手を挙げた。
利央の前にはずらっと並ぶハードル。

「羊がー」

一匹、と利央がハードルを一つ飛び越えると、そのハードルは利央に変わった。
羊利央が二人になった。

「羊がー」

二匹、とダブル羊利央が唱えると、次に飛び越えたハードルも利央に変わった。
トリプルもこもこ羊利央。
可愛いのだが、手を伸ばしても触ることはできない。

いや触れるわけねーだろ。
これは夢なんだから。

しばらく羊利央を眺めていると、十匹になったところで利央動きを止めた。

「みんな寝れたよねー、じゃあオレも疲れたので寝まーす」

待て、勝手に寝てんじゃねぇ、羊としての役割を果たせよ。
疲れたから寝るって、お前羊なめてんだろ。
せめて俺を眠りにおとしてから寝ろよ。
聞いてんのか、起きろっ。



目が自然と開いた。
朝だ。

「いや、寝てるから夢みてんじゃねーか」

疲れているのは俺だって話。




今日はこんな夢をみた。


俺の手には大量の花びらがあった。
服装は黒のスーツ。
今日の夢はストーリー型夢のようだ。
教会のベルの音が聞こえる。
どうやら結婚式らしい。

誰のだろう、と思って辺りを見回すと、和己と準太の姿が見えた。
和己は羽織袴で、準太はウェディングドレスだった。

統一しろよ。
って、そこじゃねぇだろ俺。

俺は意識レベルで爆笑していた。
夢の中の俺は顔に少しも出さずに花吹雪に参加する。我ながらすげえな。

ブーケトスにうつります、という司会の声が聞こえたので、そちらを向いた。
そこには利央がいた。
手を上に伸ばしている。
欲しいのか。
だったら取ってやろうか。
そう思っているうちにブーケは投げられ、誰かがキャッチした。
慎吾だ。

慎吾はブーケを利央に差し出して言った。

「利央、やるよ」

「慎吾さん……」

目を潤ませる利央。
そんなバカな。
おかしい。
利央、お前と俺は付き合ってんだぜ。
そんな顔してんじゃね……。
待て、
それ以上近づくなよ慎吾、ぶっ飛ばすぞ、おい聞こえてんだろてめえ、あ、今こっち見たな、やっぱり聞こえてんじゃねぇか、利央離れろ今すぐに、利央、おい利央、待ておい。




「てめえ!」

目が覚めた。
叫び声が家の人間に聞こえていませんように。
朝から嫌な夢をみてしまった。

柄にもなく、正夢になりませんように、と引き出しの中のロザリオに祈る。




今日はこんな夢をみた。


一糸纏わぬ姿の利央が俺の身体を跨いでいた。
触れ合う部分が熱い。
妙にリアルだな。

「兄ちゃん」

なんだよ。

「もぉ、焦らさないでよっ」

焦らしてねぇよ。
まだ状況もよくわかってねぇんだよ、俺の夢なのに。

「んーっ、兄ちゃん、ねぇ」

はいはい、どうして欲しいんだよ。

「ちゅーしたい」

おぇ。
ちゅーって、お前言ったことねーだろ。
いつもキスって言うじゃん。
お前誰だ、利央はそんな事言わねぇよ。
もしや。
……俺の願望なわけ?

ちゅーが?
まさか。

「ねーえーってば」

まぁ、甘えてねだられんのも、たまには悪くないかもしれない。

だって夢だし。

利央の頬を撫でて、顔を近づけた。
利央の必死な顔が間抜けで笑える。

あと一センチ。




「……寸止めかよ」

ぱっちり目が覚めた。
朝日が眩しい。




今日はこんな夢をみた。


一糸纏わぬ姿の利央が俺の身体を跨いでいた。
触れ合う部分が熱い。
妙にリアル……これ、昨日もみた夢じゃないのか。

「兄ちゃん」

焦らすなだろ。

「もぉ、焦らさないでよっ」

ほら来た。

「んーっ、兄ちゃん、ねぇ」

キスならしねーぞ。

「なんでっ」

それは、お前は俺のみている夢の中の利央だからだ。

「なんだよそれ。兄ちゃんわけわかんない」

わけわかんないのはこっちだ。
お前服着ろよ。
欲求不満じゃねーのに、なんでこんな夢みるんだ。
ついでに言うと、淫夢って程の夢じゃないし。

利央がムッとして言った。

「ひどい!少し位どきどきしなよぉ!」

だって夢だろ。

「なんでオレがこんな格好してんのか、ちょっとは考えてよ!」




もやもやの中で目が覚めた。
アイツ、一体何が言いたかったんだ。




今日はこんな夢をみた。


一糸纏わぬ姿の利央が俺の身体を跨いでいた。
触れ合う部分が熱い。
妙にリアルって、おいおい。

「兄ちゃん」

服を着ろ。

「キスしてくれたら、着る」

あー、なんで寝てんのに疲れないといけないんだ。

いいぜ。
どうせ夢だし。
また寸止めだろ。

顔を近づけて。





ふに。


目を開けると利央がいた。
ちらりと窓の外を見る。
まだ薄暗い。

「兄ちゃん」

ああ、なるほど。

「利央、夜這いか?」

「あの、え、よば、別にっ……うん」

欲求不満なのはお前のほうだったのか。
利央の唇を塞いで、俺は笑った。

明日からはぐっすり眠れるかもしれない。







end



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あきゅろす。
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