short 二人の日 ※呂佳17才、利央14才設定 とある朝、 「明日から、お母さん達はお仕事で2日位帰れないからね。二人でちゃんとご飯の準備するのよ〜」 そう仲沢家の母は呂佳に言い残し、父とともに出掛けていった。 二人の日 「ただいま〜……って、うわっ」 現在午後8時。 部活が終わり、へとへとになって家へと帰ってきた呂佳に、勢い良く飛び付いて来たのは利央だった。 「暑い、重い!兄ちゃんは疲れてんの、だからどけ利央!」 怒鳴ったり振り払おうとしたり、呂佳はどうにかして利央を押し退けようとする。 それにめげずに、腰辺りに必死にしがみつく利央は涙声で叫んだ。 「兄ちゃん、夕飯!夕飯どうするのぉ、もうお腹が減りすぎてヤバイよ!」 夕飯なら一人で勝手に食ってろよ、と言おうとして、呂佳は今朝方の母親の言葉を思い出した。 そうだ、今日はコイツと二人きりなんだった。 部活の後に弟のお守りとか勘弁してくれよ。 抱き着き攻撃への抵抗を止めて、げっそりとした顔で呂佳は利央と視線を合わせた。 「腹が減ったのはわかった。だけど、なにかしろ食べ物あっただろ。それ食って俺の事待ってれば良かったじゃねーか」 弟の潤んだ瞳が一心に兄の目を見つめる。 「それがね」 利央は、絡みついた腕をゆるめて、呂佳を台所へと促すように背中を押した。 数分後。 次々と戸棚を開けて中を確認していた呂佳は、ようやく最後の戸を閉めて思った。 何もない。 主食もおかずもない。 米は昨日使いきってしまったようで一粒もないし、冷蔵庫の中には梅干ししかなかった。 梅干しだけっておかずに入るんだろうか。と、呂佳は思わずくだらないことを考えてる。 家庭科成績1の利央ではおろか、家庭科5の呂佳でさえどうしようもない状況に、二人はひきつった笑みを浮かべた。 「……利央、今回は俺が悪かった。これはどうしようもねぇわ」 「うん、お腹の足しにならないかなって梅干し3つ食べたんだけど、余計お腹減っちゃってさぁ。おとなしく兄ちゃんを待つことにしたの」 つーか今更だけど、コイツいつから俺の事待ってたんだ? 「お前、何時に家に着いてたんだ」 「今日は部活が無くて、5時位には家にいたよー」 5時から8時っていうと、3時間か。 なんとなく利央が可哀想に思えた呂佳は、ゴツゴツした手で利央の頭を撫でてやった。 こんな事をしていても腹が満たされる訳ではないので、呂佳が利央に言う。 「しょうがない。なんか買いに行くか」 →2 [*前へ][次へ#] [戻る] |