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short
健全青少年.1


※露骨




オレと兄ちゃんは恋人同士だ。

きっかけは一つのキス。
映画を観ていたらなんかそういう雰囲気になって、兄ちゃんがオレにキスしてきた、というもの。
でも告白したのはオレからだった。
呆気にとられた兄ちゃんの顔が面白かった。
とにかく、OKしてくれたから、オレと兄ちゃんは恋人になったのだ。
時々キスするときは幸せな気持ちで一杯になる。
1ヶ月が経っても、ラブラブな関係はかわらず続いた。
キスはするけど、ディープキスまではしてくれない。

まあ、まだ1ヶ月だし。

と思って更に1ヶ月。
相変わらずキスだけ、舌とか絡ませたりもない、しかも回数とかあんまり増えない。

あれ、もしかして別にラブラブじゃないんじゃないか?

と、疑問を抱きつつ。
もうすぐ付き合って3ヶ月を迎えようとしていた。





健全青少年.1





兄ちゃんは、オレとセックスしたいと思わないのだろうか。

本人に聞きたくてたまらない。
階下で兄ちゃんが風呂を使っているので、ガスの機械のゴオッという音がオレの部屋に響く。
いつも聞き慣れているその音が、今日はやけに耳に障る。
イライラむかむかする。
わかっている、別にガスには何の罪もない。


悪いのは兄ちゃんだ。


もう3ヶ月経ってしまった。
オレ達は恋人だというのに、キスしか、していない。
触れるだけのキスしか。

これ、問題だよね。
いや、何と言うか、男同士とか兄弟とかそれも問題だけど、恋人としてこれはどうかと思う。

べろちゅーしたいとか。
触りたいとか。
セックスしたいとか。
兄ちゃんあなた男なんだから、多少はあるでしょ。

そもそも最初にキスしてきたのは兄ちゃんなのだ。
オレに対する性欲がないわけじゃない。
どうせ一人で抜いてんだろーし、だったらオレとさぁ……。


オレと付き合ってからって、兄ちゃんいつ抜いてんのかな。


ふと気になった。
兄ちゃんが一人でしてる所に無理やり乱入すれば、もしかしてセックスできるんじゃないだろうか。
かなり強引だけど悪いのは手を出してこない兄ちゃんなんだからね。


やっぱり部屋だよね。


兄ちゃんの部屋に入り込んで、ゴミ箱を覗いた。
下の方にティッシュが何枚かまとまって捨ててある。

やっぱり一人で抜いてるんだ。


オレだって一人でしてる。
恋人がいるというのに、オレも兄ちゃんも寂しいなぁ。

オレに魅力がないから、ヤりたくないとかだったらどうしよう。
第一に男とか、ヤダって思われてるのかも。
そうなったらオレダメだ。


「あーもー」

バタンと上半身だけベッドに倒れて、はみ出た足をバタバタさせた。

ヤりたいです、なんて言ったらヤラシー奴って思われるよね。
兄ちゃんが誘ってくれればさ、こんなに悩む必要ないのに。


その時、振り回していた足がベッドの脇の何かに当たった。
続いて、本が雪崩になる音が聞こえて、慌てオレは足の動きを止めた。
一瞬にして、キレイだった床がマンガや教科書で散らかった。
ジャンルぐらい統一させて積み上げなよ。
そこら辺にある本を適当に重ねた乱雑タワーだったらしい。

一応、倒してしまったのはオレなので、元通りにするためにベッドから降りて本を拾う。

気付けば、ガスの機械の音は止んでいた。
ヤバい、兄ちゃん戻ってくる。
拾っては重ね拾っては重ねと続けて、部屋の主が戻る前に何とか元通りになった。

やんなっちゃう、全部兄ちゃんのせいだ。


そうして、ぐったりとフローリングの床に這いつくばって、何気なくベッドの下に視線をやった。
何か雑誌のような物がある。

あっちにまで散らばったのかな、と思って手を伸ばして後悔した。


エロ本だった。


昔買ったやつかも、と期待して日付を見る。

今月号だった。

おそるおそる中身をパラっと捲ってみる。

巨乳。
と巨乳、巨乳。


「巨乳オンリーじゃん!」

オレ、胸ないんだけどどうしようって男だから仕方ないんだ、そうだ。
でも何、兄ちゃん巨乳好きなんだね。
知らなかった。

抜く時、これ使って抜いてるって事か。
オレ、隣の部屋にいるのに、オレの事想像してじゃなくて、こんな紙切れで。


うわぁ、なんかよくわかんないけど、ムカつく。
ムカつき過ぎて涙が出てきた。

止まんない、ああ、兄ちゃんが戻ってくる前に引っ込んでよ。


なんて願ったそばから、ドアが開く音がした。

「おい、人の部屋で何やってんだ」

怒ったような声を出して近づいてくる。

何やってんだ?

こっちのセリフですけど!

「兄ちゃんこそ、何やってんだよお!?」

オレは床を叩いて立ち上がった。
その衝撃で涙が飛び散る。

「きっ、巨乳巨乳ってさぁ、オレに対する嫌がらせなわけ?」

兄ちゃんはオレの手のエロ本を見て焦っていた。
今さらだけど、ベッドの下なんてベタな所に置いておくとか、兄ちゃんおかしいよ。

「恋人いるのに、おかしいよ」

そう言うと、あろうことか兄ちゃんは開き直って反撃してきた。

「恋人いようが、別にエロ本くらい持ってたってかまわねーだろ」

しかも、お前だって持ってるだろ、と続けた。

決めつけないで!

「持ってるわけないでしょ!」

涙、再来。
拭っても次から次から溢れてくる。
オレは、このぐしゃぐしゃの顔で立ち向かった。

「兄ちゃんと色々するのを想像して、オレはしてんの。紙切れなんかで抜く兄ちゃんと一緒にしないで……」

聞くなら今しかない。



「兄ちゃんは、オレとセックスしたいとか思わないの?」



言えた。

なんだか体から力が抜けて、オレはその場に座り込んだ。
恐くて兄ちゃんの顔が見れない。
涙も止まらない、今きっとブサイクだ。

「利央」

「……何」

兄ちゃんの腕が伸びてきて、オレの頭を抱き締めた。
風呂上がりの体は暑い。

「俺さ、お前に突っ込みたいんだわ」

そうなの?
なんだ、良かった、俺がイヤとかじゃなくて。

「オレ、下で大丈夫だよ。むしろ下がいい」

「……変な所で男前だな、お前」

兄ちゃんが呆れたように言った。
腕の力が強くなる。
涙が引っ込んだ。
兄ちゃんが一瞬離れて、唇が重なった。
いよいよ兄ちゃんとするんだな、と思ったのだが。

「よし、パソコン開くか」

「は?」

兄ちゃんは俺から離れて、机の上のノートパソコンの電源を入れた。

「だってお前、男同士のヤりかた知ってんの?」

知らないけど。

「え、兄ちゃん知らないの」

「……お前な、俺が何でも知ってるって思ったら大間違いだよ」

「ていうか今から調べんの?いつヤれんの?今いい雰囲気だったのにパソコン起動とか、兄ちゃん前もって調べておいてよぉ!」

「うぜえ黙ってろ!下に母さんいるんだぞ!あとがっついてると思われたくなくて調べませんでしたー、わかったかバカ!」

兄ちゃんのほうが声でかいじゃん!
キリがないので心の中で叫ぶ。
嬉しいんだけど、兄ちゃんの言い方が俺様なのがムカつく。


機械的な音の後、画面が明るくなった。
兄ちゃんのゴツい指が素早く動く。

「検索ワードって、この場合何て入れるの?」

そう聞くと、兄ちゃんはちょっと考えてから、露骨な言葉を入れた。
だーっと出てくるサイトの説明の羅列。
その中のわかりやすい物を兄ちゃんが物凄い勢いでスクロールしていった。
速すぎて読めないオレの事はお構い無しだ。

「別に無理に後ろを使う必要はないみたいだぞ」

「へー」

「用意するのもローションとかゴムとか。なんだ、女とやるときとかわんねーな」

待った。

「女の人とヤったことあるの?」

あからさまに、げっと顔をしかめる兄ちゃん。
ああそう、別に良いんだ、だって今付き合ってんのはオレだし。

「まだお前と付き合う前に、1回だけ」

「うん」


その人も巨乳なの。
別に聞かないけど。


「大体わかった。なんとかなるだろ」

兄ちゃんがパソコンの電源を切った。
それを合図に、オレは兄ちゃんに擦りよって、あのエロ本の女の人達と同じような上目遣いのポーズをとった。

「っりお、誘っても今日はやらねーぞ」

一瞬兄ちゃんの頬が赤く染まった。
でも、流されてはくれない。
やっぱり巨乳じゃないっていうのはハンデがあるのかもしれない。

「じゃあいつするの」

「あー、その内?」


その内って。
兄ちゃん、あのね3ヶ月だよ。

もう3ヶ月経ってるんだよ、オレの焦りに気付いてくれないなんて!



「兄ちゃんのへたれ!」



兄ちゃんの頭を殴って、自分の部屋に急いで戻った。









→2に続く


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あきゅろす。
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