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コートから消えた少年は、


真田とテニスしたいよ、そう言った幸村の顔はとても悲しそうで、消えてしまいそうで、すぐに抱き締めた。でもそうしたら今度はこのまま腕をすり抜けて消えてしまいそうだったから強く抱き締める。頭を撫でられて、俺は消えないよなんて言われたらもっと不安になった。その時の幸村の右腕はケイレンしていて、動かせないでいた。その右腕が痛々しくて、憎くて、こんな病院にならなければ幸村は今頃コートの中で笑っていたはずなのに。俺は悔しくて悔しくて、涙が溢れた。一番幸村が辛いはずなのに、大丈夫だから泣かないで、なんて励まされた。すまん、謝ると何で謝るんだよって頭をど突かれた。その時の幸村は笑っていたから、俺も笑った。
でもそんな幸村は、俺のもとから消えてしまった。もうコートに幸村の姿が見えることはない。あの時の様に涙は出てこなかった。理由はわからない。俺は学校のコートのベースラインのところに立った。コートを見ると幸村の姿が見える気がした。すると、生暖かい涙は俺の頬を伝ってコートの上に落ちた。



(結局俺のもとからも消えてしまった)








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