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真っ緋な果実


果物は、まだ実りたてのころは酸っぱかったり渋かったりするけど、だんだん熟して来て甘くなっていく。
けれど、熟しすぎると今度は腐ってしまう。
熟しているときは甘くて美味しいのに、熟しすぎてしまったらぶよぶよになってきてしまって美味しさが減ってきて、そして腐る。
そう、今の俺はまるで果物。最初は実さえもなっていなかったのに、いつのまにか君に恋をしていて、実がみるみる大きくなっていってそして熟して、そして腐った。
愛しすぎてしまったのかもしれない。俺のこの感情はだんだん歪んでいき、ぶよぶよになって、そしてどろどろになった。
今の俺は甘くもなければ美味しくもなくて、美しくも綺麗でもない。それなのに君は、そんな果物をいつまでも大事にとっておく。捨てることもせず、食べることもせずに。
「真田、」
少し焼けた肌に手を伸ばして、頬を撫でると君は撫でているところを赤らめて嬉しそうに微笑んでくれる。そんな君が大好きだったのに、今は君の泣き顔ばかりを求めていて、今すぐ犯して首を絞めてその顔を歪ませてやりたい泣かせてやりたい、そんなことしか思わなくなってしまった。
それなのに、やっぱり君は俺のことを突き離したり拒絶したり殺そうとしたりしたことは一切なかった。いつも愛してると言って笑っていて、いつでも俺の傍にいてくれたんだ。
嗚呼、君は腐ることは無いんだね。いつまでも純粋で、汚れを知らない小さな実。でも、そうだったら俺恐いよ。いつになったら俺は無くなるの、腐って溶けていなくなるの。もういいから早く君も死んじゃえばいい。そう思いながら頬を撫でていた手をするりと下にすべらせて、首につかみ掛かった。
殺す勇気も無いのに、俺は今日も君を殺すフリをするんだ。


早くこの俺を食べて死んで

(それか早く君も腐って、この俺を殺してよ)









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