「Trick or treat!」 毎年毎年この日には必ずこう言って俺のところに来る。俺がはい、とチョコレートが入った袋を渡すとあるのかよ、とでも言いたそうな顔をしてでも素直にその袋を取る。そう言えば小学六年ぐらいの時に初めて「Trick or treat!」と言われてわけわからなくて(ハロウィンを知らなかった訳ではないぞ!)幸村に変な仮装用の服を着させられたことがあった。確かその翌年からだ。十月三十一日に必ずお菓子を持っていく様になったのは。 「幸村」 「ん?」 「・・・Trick or treat」 そう言うと、幸村は自分の鞄の中をガザゴソと探りだした。そして手を止めると持ってないなあ、と言ってにやり、と笑った。ぐらりと視界が回って、気付くと幸村の顔が目の前にあって、その先に天井が見えた。いや、俺はお菓子を持っていて、幸村は持っていなかったのだ。普通逆だろう。でも幸村が嬉しそうな顔をしているからなんだかもうどうでもよくなってしまった。 Donne-moi quelque chose de bon a mahger! 「君でもいいけどね」 「・・・何か言ったか?」 過去拍手のハロウィン文。Donne-moi quelque chose de bon a mahger!→私に何か美味しい食べ物頂戴! |