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捕まえたよ


肌寒さと寝返りをうつたびに痛む体に邪魔をされ目が覚めた。目を開けると辺りは薄暗く、小さなランプが明かりを点しているだけだった。辺りを見回してみると、台の様な物の上に小さなランプが一つと、今自分が寝ていたパイプベッド、そして窓が一つあるだけだった。しかも窓はカーテンで閉じられていて、光が一切入ってこない様になっていた。俺はどうしてこんなところにいるのだろうか。思い出そうとしたがその途端激しい頭痛がしてそれも叶わなかった。ベッドから立ち上がりまるで背景と一体化している様な真っ白いドアを見つけ、ドアに向かって歩こうとしたら身体中がズキズキと痛んだ。俺はあまり体に振動が来ないようにゆっくりと歩いて、やっとドアの前にたどり着いた。しかし、唯一銀色に光っているドアノブに手をかけたが、鍵が掛かっている様で開かなかった。俺は諦め、またベッドに戻り横になった。思い出そうとするたびに起こる激しい頭痛、身体中の痛み、俺は一体どうしたのだろうか。そしてここはどこなのだろうか。今の状況を把握しようと考えていたら、ガチャリと鍵の開く音がした。急いで起き上がると身体中からものすごい痛みを感じて顔を歪める。
「起きてたんだ」
長く蒼っぽくウェーブの掛かった髪、高い声、大きな目、白い肌、女か男かわからなかった。そいつはゆっくりと俺に近づき、肩に手を置いた。そして俺のことをじっと見ていた。俺はなぜかその視線に絶えられなく、目を反らした。
「・・・お前は誰だ?ここはどこだ?俺は一体どうしたんだ?」
そう言うと、そいつは驚いた様に目を見開いた。でもその表情は一瞬で、すぐに微笑む様な笑顔に戻った。
「俺は君を助けたんだよ」
俺、と言ったということはこいつは男なのだろう。それはわかったが、助けたというのはなんなんだ、俺は誰かに追われてでもいたのだろうか。ふと、俺は大事なことに気がついた。
俺は、自分の名前を覚えていない。
バッ、と目の前にいる男の顔を見ると、何?とでも言いたそうな顔をされた。
「・・・なあ、俺の名前を教えてくれんか?」
「・・・!君の名前は、真田、真田弦一郎」
そう言われたが、なんだかしっくり来ない。でもなぜか、この男に名前を呼ばれると心地よくて、不思議な感じがした。不意に頭を撫でられ、体が跳ね上がったが、男は笑顔のまま俺の頭を撫で続けた。こいつは一体誰なのだろうか。なあ、とそいつを呼ぶと。
「俺の名前は幸村精市」
まるで俺が言いたかった言葉がわかっていたのか、それとも偶然なのか、わからなくて唖然としていた。そいつは俺の胸を軽く押すようにベッドに寝かせると、また頭を撫でられた。真田、そう名前を呼ばれると急に眠気がして、俺は目を閉じた。こいつは俺のなんなのか、俺はどうしたのか、ここはどこなのか、色々聞きたいことがあっが、今は取り合えず眠ることにした。お休み、と言う言葉を最後に俺の意識がプツンと途絶えた。
「こうしてでも手に入れたかったんだよ・・・真田。一生俺のもの。柳になんて絶対に渡さないから」(もう、離さない)
そう言って微笑んだ男の顔を、眠っていた俺は聞くことも見ることも出来なかったんだ。










真田記憶喪失。柳と真田が恋心を抱き合ってるのが嫌で(勝手な思い込みかもしれない)真田を階段から突き落としたかなんかして監禁しようと考えたんでしょう。記憶喪失なのは予想外で。



あきゅろす。
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