まるで獲物を捕らえるかの様な鋭い目。俺は蓮二に捕らえられた、その鋭い目によって。そう、蓮二の獲物は俺なのだ。目をそらしたいけれど、捕らえられてしまった俺はピクリとも動けないんだ。 外からは部活をしている奴らの声が聞こえる。今日、テニス部は珍しく休みだ。だから帰りに蓮二に付き合ってほしいところがあったから帰る約束をしていた。ただ、それだけだったのに。俺は今ひどく後悔していた。俺が蓮二を誘っていなければこんなことにならなかったんだ。こんな、おかしく、狂った、歪んだ愛に気づかずにすんだのに。 「いつまで逃げているつもりだ?弦一郎」 名前を呼ばれた瞬間、体がびくりと跳ね上がった。背筋が凍るような寒気差を感じたが、胸には焼けるような熱さを感じた。ふと、柳は俺から目を離した。その瞬間自由が効くようになって、俺は制服の胸元のをぎゅっと握りしめた。胸が熱い、背筋の寒さなんて気にならなくなるほどに。この感覚、これでたしか丁度百回目。理由なんてもうとっくに気づいていた。けれど俺は、ずっと気づかないフリをしていたのだ。 「好きだ」 ずっとその言葉を言いたかった、言ってほしかった。けれどその反面、言いたくなかった、言ってほしくなかった。だって、この言葉一つで全てが変わってしまうから。俺達は親友なのに、それ以外の関係になってしまうかもしれないから。俺は、それが怖かった。確かに俺が蓮二のことを好きなのは紛れもない事実だ。けれど、俺は蓮二とずっと良き親友でいたかったのだ。好きだから。 「・・・す、まない・・・蓮二・・・っ」 「なぜ謝る・・・」 蓮二に抱き締められると、身長差は一センチしか変わらないはずなのに自分がものすごく小さく思えた。嗚呼、俺達はいつから道を間違えていたのだろうか。そんなことさえも解らない。もう、いっそのことなにも解らないままでいいのだろう。だって、もうそれが解った時点で俺達が狂妄だという事実は変わらないのだから。 狂妄という言葉を使いたかっただけ・・・だったり・・・。狂妄(きょうぼう)、正気とは思えないほど道理にはずれていること。 |