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俺を好きだと言った女の子を俺は好きにならなかった。


どうしても手に入れたい。でもそう簡単にはいかないんだ、お前に俺の真剣さというものが伝わっていないから。どうしたら伝わるのだろうか。只でさえ鈍感な奴だし直球で行かなきゃ駄目なのだろう。でも俺はどうしても素直になれない。苦手なんだ、素直な気持ちを伝えることが。
嗚呼、なんで俺はこんなことを今考えているのだろう。只今絶賛告白され中なのに。目の前にいる女の子はおずおずとした態度に顔を赤らめて俺に一枚の封筒を差し出した。受け取るつもりは無かったんだけど、その子は差し出した封筒を俺に押し付けて走り去ってしまった。あーあ、まだ俺何も言ってないのに。こうなると面倒くさいから嫌、だって俺からその子のところに直々に行って断らなければいけないから。別にほっといてもいいんだけど、取りあえず女子には優しくしているんだ、俺優しい奴だから。
押し付けられた封筒には表に幸村君へ、と女の子らしい字が書かれていた。ピンク色の封筒は見るからにラブレター。中を見る予定なんて無い、だって興味無いから。
幸村、と言う声がして振り向くとすぐ近くに真田が立っていた。あ、ここが部室前だってこと忘れてた。きっと今の見られていたはずだ。真田は眉間にシワを寄せていて、俺が持っているピンク色の封筒をじろじろと見ている。そして俺の顔を見ると開けないのか?と封筒を指差して真田は言った。開けないよ、そう言うと真田はふーん、と言って部室の鍵をポケットから取り出し、俺の横を通りすぎるとドアに鍵を刺した。

「俺が告白されててなんとも思わない?」

そう聞くと鍵を回そうとしていた手がぴたり、と止まった。は?と言いたそうな顔をして俺を見てきた真田を横目に俺はため息が出そうになった。俺は可愛い女の子からラブレターをもらうより(さっきの子はあまり可愛く無かったけど)お前からラブレターをもらいたいな。そう思ったけど声には出さなかった。だってどうせ声に出したところで馬鹿なことを言うなとかそう言われるだけだろうし。だから代わりになんでもないよ、とだけ言っといた。真田はふーん、とさっきと同じ様に言うと鍵を回してドアを開けた。早く着替えてコートの準備するぞと言われたから俺はピンク色のラブレターを半分に折ってポケットの中に閉まった。


俺を好きだと言った女の子を俺は好きにならなかった。すぐ手に入るものには興味なかったから。

お前は楽しい奴だ。この俺を悩ませるなんてただ者じゃないからね。絶対に、なんとしてでも手に入れてやる。






にやり



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