(大学生設定※死ネタ)
ふわり、と桜の花弁が風に舞い散るのを見送り、俺は目を伏せた。
今日は大学の入学式だった。立海は中、高、大一貫だからテニス部のみんなともずっと一緒だ。だから入学式は短く、これという変化も無く終わった。
しかし、たった一つだけ大きく変わってしまったものがある、その影響は計り知れないほど大きいもので、俺はチクリと痛んだ胸をぎゅう、と押さえた。
高校の入学式の時、幸村はまだ生きていたんだ。三連覇を約束した幸村は全国大会の時に戻ってきてくれた。残念ながら三連覇は成し遂げられなかったが、次は高校で果たせなかった約束を果たそうと約束をし、俺達は次の目標に向かってまた日々練習を重ねた。
しかし、急に幸村がまた倒れてしまったのだ。
再発だった。俺達は初めて神様を信じなくなった。どうしてだろう、幸村も、俺も、みんなも絶望に追いやられてしまった。悔しかった、苦しかった、涙が溢れた。赤也も丸井もまるで幼稚園児の如く泣きわめいていた。
今日、幸村は入学式に出なかった。出れなかった。
幸村はもうここにはいないのだから。
「真田、俺早く病気治してまたコートに立つからね」
幸村の言葉が脳内に響いた。
ああ、神様なんてものはきっと存在しないのだろう。
幸村はあんなに頑張っていたのに。みんなとコートに立ちたいって。
―真田―
あ、れ?
幸村は、どんな声をしていた?
幸村が俺の名前を呼んでいたことを思い出した。
だが、声が思い出せない。
ど ん な 声 を し て い た ?
こんな感じだ。というイメージならある。
だが、ハッキリと覚えていない。
何故?どうしてだ?
俺はあんなにも幸村のことが好きだったのに。(好きなのに)
そう言えば、普段テニス以外の話しではどんな会話をしていた?
覚えていない。
忘 れ て し ま っ た ?
嗚呼、どうして
俺は幸村を愛しているのに
幸村も、俺の声を忘れたか?
俺は、忘れてしまった
「・・・幸村」
帰ったら昔のビデオでも見よう。
幸村が、輝いていたあの時の。
聞けばきっと思い出すから。
大好きだった、幸村の声を。
声から忘れていくらしい
(これだけは忘れない)
(お前が俺を愛してくれていたこと)
(俺がお前を愛していたこと)
(そして今も愛していること)
Cathy
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