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奈落の底に


ゆらすとガタガタなったところのフェンスを思い切り蹴ると、緩んでいたネジが吹き飛んでフェンスが下に落っこちた。やば、そう思ってフェンスが落ちたところから身を乗り出して下を見てみたら誰もいなくて安心した。ふう、と息を吐くと俺が今やりたかったことを思い出す。ああ、俺死ぬんだっけな。本当は屋上から飛び降りるなんて惨い死に方したくないけど、これしか思い付かないし、まあいいや。てか、屋上って意外と高いなー。学校の二階とは大違い。俺が学校にちゃんと通っていた時はよく二階から飛び降りてたな、柳を見つけると。周りの人達超ビックリしてて、柳によく怒られてた。別に平気なのに。目を閉じれば教室にいる気がして、悲しくて目を開けた。今日は雲が一つもなくて、空がとても高かった。嗚呼、ここから落ちたら俺はあの空の向こうまで行くのかな。俺は手を空に伸ばした。太陽に手をかざすと、まるで俺の手が透けている様だった。
・・・あんまりもたもたしてると嫌になるからもういいや、覚悟、きーめた。そう思って身を乗り出した瞬間、屋上の扉がバン、と大きい音を立てた。嗚呼、来ちゃった。なんとなく誰だかはわかる、気がする。

「精市っ!」

やっぱり、ほら、ついさっきまで考えていた人。俺は返事もしなかったし、振り向くこともしなかった。あーあ、柳の目の前で死ぬことになるとは。なんて不幸なんだろう。でもそれもいいかも知れない。それで俺のことが頭から離れなくなって、一生俺のことを忘れられなくなればいい。

「独りにしないで」

嗚呼、きっと泣いてる。顔は見えないけど、絶対に泣いてる。そういえば、俺が死ねば柳もだけど、俺も独りぼっちになっちゃうのかな。この辛い日常から抜け出せるのかもしれないけれど、柳と、離れるのは、嫌だ、な。

「お願いいかないで」

ぼーっとしていると、柳に後ろから抱きしめられた。柳の体は震えていて、俺よりも高い筈の身長が、とても小さく思えた。首に生暖かい雫がぽたり、と落ちた気がする。首に回されている腕を手で軽く触れた。もう離して、そう言いたかったけど声に出なかったから腕を掴んで外そうとしたけど、腕は俺が諦めるまで外さない様だ。嗚呼、もう、そうして一生離さないで欲しい。離れたくないんだ。俺だって、柳のこと、愛してるから。ねえ、だったらさ、

「じゃあ、柳も一緒に落ちようか」



奈落の底に

(堕ちる瞬間に同時に言った言葉は「愛してる」)










な、なんとゆう微妙な話だ・・・!!←落ちて堕ちましたという話・・・です。



あきゅろす。
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