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【リクエスト・過去作品サルベージ】
◆『流刑惑星の楽園』3 鬼畜J×天使X R-18G 一部ダミ×X有り?

「………がまた余計なモノを作ったそうだ」
「だから言ったのだ、欠番の【13番目】など作るべきではないと
なのに主は聞き入れてくださらなかった」
「だが…今回の件は。流石にお見過ごしにはならないだろう?」
「いかにも…罪の受託に関しての背任は…流石のゼウス様もお許しにはなるまい」

アレは人影なのだろうか?影法師の様なソレがユラユラと揺れて、口々に何かを呟いている………
はっきりしない状態で聴くソレの内容は、良く解らないけど、何だか嫌な感じだ………
僕は少し離れた場所からその会話を聴いているのだけど、何故か涙を流してた
無機質な廊下が続くその場所が何なのか?僕には解らなかったけど、酷く懐かしい
それなのにその場所は凍える様に寒くて、僕の居場所なんて無かった…
それだけは覚えている………それだけは昨日の事の様に鮮明に

だけどその場を離れられなかったんだ僕は、ソコには護らなければならないモノ達が居たから

※※※※※※※※※※※※※※

薄ぼんやりと目を開いた僕の目に映るのは
ベルベッドの生地が折り重なる妙に豪華なロココ調の天蓋だ
やたらと豪奢な作りの部屋のキングサイズのベッドの上で、僕は一人で目を覚ました…
いつの間に泣いていたのか?ポタポタと流した涙が頬を伝い落ちる

さっきまで居た場所とは違う………夢を見ていたのだろうか?
いや今もまだ夢の続きなのだろうか???
頭が痛くて…思考もぼんやりとしか覚醒していないけど…喉が渇いて仕方がなかった

気怠い身体を無理に起こすと、僕は辺りを見回す、寝室か何かなのだろうか?ココは?

残念ながら目の届く範囲に、水差しの様なモノは見当たらないけど…
どうやら次の間に、簡易的な水場は有る様に見受けられた
何か飲みたい…ふらつきながら、ベッドの上から降りた僕は
チャリチャリと鳴る金属音に気がついて、ふと足下を見れば…

僕の左足首には、アンクレットと見間違える程に、装飾過多な枷?が巻き付いていた
金色のソレから延びた細い鎖は、ベッドの近くの床のアンカーに繋がっているみたいだけど…
充分な長さがあり、少なくともこの室内での、僕の行動を制限する様なモノではなかった

何でこんなモノが着いているんだろう?ソレを考えなかったワケでは無かったが
それよりも強い喉の渇きが…僕を次の間に向かわせる
照明の光度を落とした寝室よりも、明るいその場所から漏れる光は、寝ぼけ眼の僕には少しまぶしかった

入ってみれば…そこは予想通りに、バスルームとその他の水場が集められた場所だった
洗面台も備えられたソコに蛇口を見つけた僕は、設えられたコップを手に取るのだが
その姿見にゆらりと映る影に、僕は恐れおののき手にしたソレを勢い良く投げつけた

白面に浮かぶ赤い紋章…赤と黒の恐怖………「悪魔」ッ!!!

バリンッというけたたましい音と共に、巨大な鏡にひび割れが走る
反射的に我が身に起こった事を、苦痛と苦悩を思い出した僕が
咄嗟そういう行動に出てしまったのも仕方がなかった

でも…割れたのは洗面台の巨大な鏡なのだ…ソコには誰も居ない

身体を縮め震える僕の目の前に、降り注ぐクリスタルガラスの破片に我に返る
おそるおそる目を上げた天使…いや天使だったモノは
蜘蛛の巣の様なひび割れの入った、鏡をもう一度見て愕然とする

自分を傷つける【敵】だと認識したその影は、変わってしまった自分自身の姿なのだから

何日も自分を苛み苦しめたあの【悪魔】とは違う形の紋
そして頭の両サイドから生えたこの角は…一体何だと言うのだ
震える手つきで、自分の頭から生えたソレを確かめ
割れた鏡にも触れようとした瞬間、聞き慣れた声がすぐ側でボソリと呟く

「駄目だよ…割れたガラスなんか触ったら、危ないからね………」

割れた鏡の奧…バスルームの入口に佇む人影に、ゾワリと悪寒を感じる
ニヤニヤと笑う地獄猫が、腕を組んだまま此方の様子を伺っていた

「ーーーーーーッ!!!」

声も上げられなかった、咄嗟に逃げ腰になる僕の脚は縺れ、直ぐに崩れ落ちる
引き摺っていた鎖を、あの悪魔が踏みつけて、動けない様にしてしっまったから

散らばる鏡の破片の事など気にしていられない
ガタガタと震え上がる僕は、バスルームの壁にすがりつく
そんな僕の様子を…悪魔は笑いながら見下ろしていた

「そんなに露骨に怯えるなよ…メデタク仲魔になったんだ、もう酷い事はしないからさ…」

惑星でしていた様に、震え上がる僕の頭をヨシヨシと撫で上げるのだが
この男のそんな優しさが、一番信用出来ない事くらい、骨身に染みる程に解っている

「ジェイル…よさないか…客人はまだ本調子では無いのだからな………」

薄暗い寝室からもう一つの人影が、バスルームの中に入ってくる
悪魔とは違う姿…まるで元の自分に近い様な白い姿にもかかわらず
ケタ違いのレベルの黒い波動、禍々しいその気配に、僕は更に怯えて縮こまった

「やはり…いきなり生えた角が重すぎて支え切れていないね、歩き回るなら補助帯も着けた方がいい…
それにガラスの切り傷も看てあげなくてはね…そう恐れる事はないぞ、賢者殿、顔を上げるがいい………」

賢者?何処かで聴いた記憶のある言葉…何の事だっただろうか???

「永いこと記憶も力も封印されていたのだから、全てを思い出すには時間も掛かる…
体力が完全に戻るまでゆっくり休んだいい、 私の部下が貴方にとんだ失礼をした様だが、
貴殿の魔界での身元は私が保証しよう……このまま私に従ってくれるならね………」

同席している悪魔とは比べ物にならない威圧感に、生存本能の根幹が震えた
同時に優しげに見えながら、有無を言わせない緑の目に、諦めにもにた焦燥感を感じる…
そのまま差し出されたそのたおやかな手を、殆ど何も考えられないままに取ったのは
皇太子殿下にさり気なく掛けられたチャームによるもの…と後になって解ったけれど
弱り切っていたその時の僕が、その術を感知する事など出来なかった

怯え震えが止まらない僕を、彼の手が引き寄せて、抱き止める様子を
ジェイルと呼ばれた悪魔は舌打ちをすると、忌々しげに見て居た

「………そう良い子だ、懸命な判断だよ…
さぁ此方においで、悪い様にはしないからね………」

肩を抱かれ、促されるままに寝室に戻ると、僕の手の切り傷に、男の唇と舌が触れる
直接に流し込まれるヒーリングの温かさを感じながらも
これから自分はどうなってしまうのかと思えば…ただ恐ろしくて
尚も震え上がる身体を止める事が出来なかったのもまた、仕方のない事だった

※※※※※※※※※※※※※※

樹木に括り付けられて、どれくらい時間が経ったのかすらもう解らなくなっていた
何日だったのか?何ヶ月だったのか?
確実な時間の経過を計れるのが、無残な首の傷痕だけと言うのも…惨い話だが
どうやらすっかりソレは出来上がってしまったらしい…

最後まで残っていた空白部分…やや左側の目立つ部分に
悪魔は自分の名前を刻むつもりだったらしいけれど、気が変わったとらしい
「名無しのままじゃ困るだろうから、俺がアンタに格好いい名前を付けてやる」と言って…
彫り込まれるモノが何でアレ、苦痛以外の何者でもない為
僕は泣きながら許しを請うけど、彼はそんなモノは聞き入れてくれない

「ゼウスの分身なんだから?それらしい名前がいいよね?」

と独り言の様に言い放つと、不意に何某かを思いついたらしく
ダンと音がする程に、乱暴に僕の頭を幹に押しつけると
片手でガシリ固定した上で、その右手の爪先に、小さな蒼色の炎を灯した

「ココだけは少し色を変えてあげようね、より鮮やかな色にアクセントに…」

彼は楽しそうにそう言うけれど、それを受ける者には絶望でしかない
今迄のソレよりも高温なのであろう、その先端がもたらす強い痛みに、僕はただ絶叫した
手元の炎は小さな光源の筈なのに、それに照らされる悪魔の顔は禍々しい
酷く嬉しそうに笑う顔を最悪最低だ…生きた肉体を焼く嫌な臭いが充満する

お願いだからもう許して…それが適わないなら、いっそひと思いに殺してくれ
この苦痛が終わった後に、一体何をされると言うのだ…更に酷い事が待っているのか
それだけでも恐ろしくて…僕はただ泣いた… 助けて…どうして誰も助けてくれないの?

そうしてソレが出来上がった時には、僕の気力も体力ももう限界だった

ココに鏡は無いから、僕自身がソレを見る事は出来ないけれど
ジリジリと焼け付く様なその痛みは脈打ち、首を締め上げられている様にすら感じる

もう嫌だ…どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか………

だらりと鎖にぶら下がる様な格好で、僕は短い息を吐きながら悶える
気持ち良く気絶できたらどんなに楽かとも思うが、ソレも敵わないから

少し前にあの男はココから居なくなっていた、別に珍しい事ではない
定期的に何処かと連絡をとっているのか?
その時だけは、僕の身体から手を離してくれるのだが
その間も…僕に休む暇など与えてはくれない

身体の中に押し込められたソレが、休み無く僕の内側を苛み続ける…
段階を追って、少しづつ大きくされたソレの圧迫感と振動が
そうじゃなくても苦しくて堪らないのに

あの男は…ココを離れる時は決まって、この樹と周囲にかけた結界を解いてしまうのだ

途端に集まってくるのは…ココの動物たちだ、彼等がこの樹の果実を欲するのは本能だ
僕は繋がれたままの状態で…彼等を追い払わなければならない
単純に睨み付けて、諭す事が出来たのは最初だけだった
かろうじてまだ出す事の出来る、細かい衝撃派で彼等を追い払うのだが
番人である僕が、今の状態では深追いなど出来ない事を、彼等は学習しつつある

護り続けてきた【果実】が奪われてしまうのも…もう時間の問題なのかもしれない

「何だ…まだ頑張っちゃっているんだ?喰いたいって言ってるんだから、喰わせてやればいいのに………」

何時の間にやら戻ってきた男が、追い払った獣を見つめる僕に声を掛けてくる
他の事は譲れてもそれだけは譲れない…ギンと睨み返す僕を、悪魔はせせら笑う

「ふ〜ん…少しは良い表情も出来る様になってきたじゃない?そろそろ必要な事も思いだしてきたかな?」

必要な事?思い出す?何の事なのかさっぱり解らないんだよ…
目を反らす僕を見て、何故かふぅと溜息をついた悪魔は
【彼女】の枝に手を伸ばして【果実】をもぎとった

数日前から果実の色は変に黒ずんでいた、元の鮮やかな赤とは明かに違う色に変化していた
そうじゃなくても脆弱な幹の上に、これだけ無数のアンカーを打ち込まれていては
具合が悪くなっても当然だ…バラバラと枯れ落ちる葉の量は何時もの倍以上で降り積もり
花の香りも果実の香りも変化している………発酵臭を伴う様な嫌な臭いに

その果実に平気で齧り付く悪魔は、その味の変化を確かめ楽しんでさえいる

「ほら…アンタも喉が渇いただろう?そんなによがって叫び続けたら?啼き続けたら?
水は無いけど…これでいいでしょう?水分くらい素直に補給しないと身体がもたないよ」

そう言って彼は強引に僕の顔を上に向けると、グシャリと潰した果実の果汁を
ぼとぼとと僕の口の上にたらし込んでくるのだ
彼の舌にはどのように感じているのか知らないが…僕にとってのソレは最早苦痛でしかない
枷の隙間から喉に流れこんでくるソレはにがく、強い刺激を持っていて喉の粘膜を焼く
【彼女】の果実がそんな風に変化してしまった事も、勿論哀しくて涙が止まらないのだが
ソレ以上に物理的な息苦しさから、ゲホゲホと咽せて苦しむ僕を
悪魔は目を細めて眺めるのだ…苦しむ僕の様子を楽しむ様に

「まだにがくて苦しいの?受け入れられない?コレはアンタの感情なのに?」

だから…君の言ってる事は解らないんだよ………

封じられた口の中でそう叫んだ僕の声は、彼には聞こえないはずだけど
引き掴んだ髪をようやく離してくれた彼は、何時もの馬鹿にした目ではなく
まるで哀れんでいる様な不思議な表情で僕を見下ろすと、更に続けて言った

「これだけ時間を掛けて嬲ったら、もっと早い段階で、思い出すと思ったんだけどな………
アンタさ…いやアンタだけじゃない…この惑星の生き物全てが、少しオカシイと思わない?」

唐突に投げかけられた問い掛けに、僕は目を見開く?
オカシイ?何の事を言っているのか?

「普通だたっらアンタは俺を憎むだろう?こんなに酷い目に遭わせているんだから?
彼女と話せる俺に嫉妬するのが普通だろ?意中の女と話せないなら尚更に
なのにアンタからはソレは感じない、行為に怯え嘆きはするけれど…
当たり前の【負の感情】が未だに表層面に出てこない…これって異常な事だろう?」

憎しみ…嫉妬…怒り…自分には無縁だと思っていた感情
仮に有ったとしても持つべきでは無いモノ、我慢してやりすごせばいい不要のモノ
漠然とそう思っていたものを指摘されても、何も感じない…ソレがどうしたと言うのだ

「アンタだけじゃない、ココの連中全部がそうだ
まぁ…アンタみたいな強い【カミサマ】が常駐しているから?
ココの連中には、自己防衛本能が必要ないのかもしれないけれど
それって異常な事だろう?生命体としてさ?捕食関係が混在する空間にも関わらず
【負の感情】が一切存在しない世界なんて、普通は有り得ないだろ?」

当たり前の痛みや苦しみを感知するから、捕食者や敵を恐ろしい存在と認識する
苦痛と死を与えるモノを、恐れ憎むからこそ、ソレを回避する用心深さを学習する
同族に関してもそうだ…他の者より優位に立ちたい、よい条件に有りたい
より優位なモノに嫉妬して妬みを覚えるからこそ、上手く立ち回る方法を身につける

【負の感情】は…基本的な生存本能の一部だろう?生死のある生き物なら当然だ…

「なのに…ココの連中にはソレが無い…呆けてているのか?と思う程に無防備だ
ココが他の世界なら生きていけない程にな?何でだと思う???
アンタは忘れてしまったかもしれないけれど、この樹が連中のソレを吸い上げているからさ…
この【偽りの楽園】を維持する為にな………」

【罪の樹】がこの惑星の生き物達の【負の感情】を吸い上げているだって???
到底認められない突拍子もない話の筈なのに、脳髄の奧がズキリと軋んだ………

『………自立した生命活動を送るには、ある程度の【知恵】は必要不可欠ではありませんか?』

誰かと同じ様な話を議論した事が有った様な…
でも自分が肯定派だったのか否定派だったのかすら解らない
その台詞を、一体誰が吐いたのかすらも解らない………

ズキズキと脈打つ頭痛が、ソレを明確に思い出す事を阻んでいる様にすら感じる
その痛みに呻き背中を丸める僕の頭を持ち上げると、悪魔は僕の顔を覗き込んで言った

「………最も、彼女がアンタの感情すらも吸い上げて、その役目を履行し続けるのは
アンタ自身の為でもあるみたいだけどな
ゼウスに拒絶されて、ココに幽閉されたアンタが、その嘆きで壊れてしまわない様に
この惑星のカミサマとして生きていける様にね………
ココまではっきり言ってやっても、まだ思い出せない?
カビの生えた記憶操作はそこまで強力?それとも思い出したくないの?
でも…まぁいいや、アンタの気持ちなんてどうだっていい
やっと首の刻印も出来上がったからさ、今夜こそちゃんとシてあげるよ………」

これでそのうざったい天界の輪っかともオサラバだよ、どう?嬉しいでしょう?
そう言ってピンと彼の爪が、僕の頭に着いている金属質のリングを弾く
既に所々に細かい傷の入ったソレは、今にも崩壊しそだったが…まだかろうじて形は保っていた
この暴行を受ける様になってから、日に日に曇り弱くなるその光りにも気がついていたが
そもそも何の為にソレが頭についていたのか?僕は知らないから…特段何も感じない

それよりも…今の彼の話の方が、よっぽどに衝撃的だった

意思疎通の出来ない彼女が、僕の感情を吸い上げている?そんな馬鹿な………
手を入れなければ直ぐに枯れてしまいそうな程に弱く、古びた樹木でしかない彼女が
惑星全体の負の感情を、全て吸い上げているなんて有り得ない…

だけど…何処かで、彼の話を肯定する自分もいるのだ…それならば説明が付くから

何故、僕と彼女がこの惑星で独りきりでなのかも…
何故惑星の生き物達が、この果実を執拗に狙ってくるのかも
自分から奪われたモノを取り返しに来ているダケなのだ
【知恵】と言う名前の【生存本能】を欲しているだけだ、欠けたピースを埋める為の

鋭い爪がそのまま、金環のひび割れをなぞるけど…特段それには何も感じない
コレが頭から外れたら、この惨い責め苦から逃れられると言うのか?
忘却している記憶を思い出したら、許されると言うのだろうか?

「アレ?リングの破壊に狼狽えもしないの?まぁ…アンタは天使様の自覚も無いからね
堕天の意味も解らないのは、仕方が無いのかもしれないね…可哀想にね」

つまらないなぁ…と残念そうな顔をする悪魔の様子を、ただ僕は見上げる
今夜何が起こるのか解らないけれど…この男の与えるモノなど、ロクなモノであるワケがない

※※※※※※※※※※※※※※

昼のやりとりのせいだろうか…忘れていた何かがフラッシュバックする
そうだ…初めから独りきりだったワケじゃない
以前は…まだ子供だった遙か昔は、誰かと一緒に居たはずなのだ
周囲から浮いてしまいがちな僕を、何時も庇ってくれる大きな手を持つ誰かと

彼に命じられるままに、様々な試作品を作っていた…望まれるままに
だけど…何時から離れてしまったんだっけ?大切な人と?何で???

「少しは思い出した?アンタの苦しみの根幹を???」

ふってきた声に我に返れば…そこはまだ厳しい現実でしかない

何時の間にか、気を失っていたのだろうか?加虐と頭痛の痛みに耐えかねて???
いや…この男が、悪魔が戻ってくれば、この樹の防護結界は復活する
動物達が不用意に果実を食べる恐れはない、そこから来る安堵感だろうか?
自分の意識を手放してしまったのは………最早どちらだかも解らなくなっていた

「見てごらんいい月夜だろ?この惑星にも月に該当する衛星はあるんだね?
生まれ変わるにはもってこいの夜だろう?しっかりとその目に焼き付けるといい…」

月?そんなモノが有る事すら忘れていたよ………促されるままに空を見上げれば
覆い被さる【彼女】の枝葉の隙間から見える天体は、何時もと様子が変わっていた

本来であれば、白い乳白色の光りを放つ筈のソレは
何故かよどんだ赤色に変わり、此方を見下ろしているのだ…
まるで何かの眼の様に、巨大な何かに覗き込まれている様にすら感じる

「………コレ以上何をすると言うの………僕を戦闘不能にしたらそれだけで充分でしょ」

ここに繋がれてから、始めて口枷を外してもらえたと言うのに、言葉が上手く紡げない
圧迫されて痺れている事もあるけど、ソレ以上に純粋な恐怖心から歯が上手く噛み合わない
頬にくっきりと着いてしまった革ベルトの痕を、悪魔はペチャペチャと舐め回すと
怯える僕の顔を覗き込み、彼は愉快そうに言った

「アンタもよく頑張ったけど、俺も禁欲的に我慢してたんだよ…ずっとね
俺の調教に、惨めに啼くアンタは、予想外に可愛かったからね」

ようやく俺自身で、アンタを犯してやれると思うと堪らなく興奮するよ
さぁ…生まれ変わる覚悟はできたかい?………ゼノン?
勝手に彼が付けたその名前を呼ばれても、何も感じないはずなのに
何処かで引っかかるのは何故か、この時はまだ解らなかったけど

そう言って彼が寛げた前を見れば…既に臨戦態勢のソレは、MAXの状態に勃ちあがっていた
まさか…まさか、ソレを僕の中に挿入すると言うのか?そんな大きなモノを???

ソレを模して作られたモノを押し込められ、無理に拡げられてはいるから
何時かは……そうなる予感はしていたけど、実物は作りモノのソレは全く違う
最終的に咥え込める様になったその大きさも径も、実物の半分にも満たないモノでしかない
それでも…内側は一杯一杯で息苦しくて、恥ずかしくてたまらないのに
そんな質量のモノを押し込まれたら、確実に裂けてしまう…死んでしまうかもしれない

「嫌…嫌だ…辞めて、そんなモノ入らない………」

ガチガチと震える声で言えたのはソレだけだ
終わりの見えない加虐の辛さに、死による解放すら願っていたのに…
一気に嫌なが吹き出る、ごく当たり前の生存本能が、恐怖心を一気に駆り立てる
恥も外聞もなくなった、ふるふると首を振り、絶望的な表情を晒していたであろう僕に
彼はケラケラと笑いながら、無慈悲に答える

「大丈夫ちゃんと拡張してるから、普通より痛みは少ないよ」

そうだ、最初から僕に選択権など与えられない

※※※※※※※※※※※※※※

「嫌だ嫌だ嫌だぁーーッ!!!許してッもう辞めてッやめてぇ…」

引き千切らんばかりに鎖を鳴らして、藻掻き暴れる僕をいとも簡単に押さえ込むと
後ろに押し込められたソレと、それを固定していた拘束具の一式を取り払ってしまう
ソレまでと同様にソコにするりと射し込まれた指が、ヌチャヌチャと中を刺激するのだが
何時もとは明らかにヤり方が違っていた…

時間を掛けて、散々探しつくされたゾワゾワとする場所だけを、執拗に責め上げる
同時に短時間で本数が増やされるソレが、すでに拡がりかけたその場所を、グリグリとこじ開けるのだ
僕の背中は大きく反り返った、何とかやり過ごそうとしても…出来なかったから
引きつけを起こした様な痙攣が始まるまで、さほど時間は必要は無かった

「ひぃ…ああっっ嫌っ嫌っっあああっ」

揃えられた指が、何時もより強くその場所から出し入れされる
追加された潤滑剤が卑猥な水溶性の音を立てるのが、耳障りで仕方がなかった
鼻に掛かったような自分こ声さえも、頭が真っ白になりかける僕の耳元で悪魔が囁く

「ほら気持ちがいいんだろう?無理するなよ…
サービスしてやってるんだから、もっと感じたらいいのに………」

べちゃべちゃと首の傷を舐め回していた舌が、胸元に移動すると
固くなったソレにしゃぶりつき、カリカリと歯を立ててくる
その度にあられもない悲鳴を上げる僕を、悪魔はせせら笑いながら言う

「量産型の天使と違って、アンタが最初から男の身体で助かったよ…
無性の連中は性感帯を作ってやるのに、時間が掛かるからね
単純に行為を知らないだけだから、ちょっと刺激してやれば直ぐに良くなるだろう?
上の口はともかく、前と後はすっかり俺のヤリ方に慣れただろ?解りやすくて可愛いよ」

僕の意思とは関係無く、勃ちあがり始めている前をするりと指先で撫でられ
背中を駆け上がる感覚にゾワリとする、こんな無茶な行為が良いワケがない
「違う違う」と譫言の様に否定し、拒絶し続ける僕の言葉を聞く気も無いのだろう
後ろに射し込まれた指が更に強く中を抉り始めて、僕はマトモに口が利けなくなった

「あああっ…嫌っ嫌ぁ………」

触られても居ない僕の前から、ドロリと劣情が溢れ出すのと同時に、パキンと金属製の音がした
その音は悪魔の耳にも聞こえているのか?金色の目がニヤリと笑う

「ほら…いい加減に認めてしまえよ、この淫乱天使様が…
神紛いでも特別製でも関係ない、もう【清い身体】なんかに戻れないんだから………」

むせび泣き、荒い息をする僕の嘆きなど、彼にとっては何の意味もない
ズルリと後ろに埋め込んでいた指を引き抜くと
まだガクガクと震えている僕の両脚を抱え上げて、押し広げる
ひくつくソコに宛がわれる熱い塊に、僕は大きく息を飲む

嫌だっ絶対に無理だッそんなモノを挿れるなんて…助けてっ誰か助けてっっ

「無理っそんなの絶対に無理っっ」

髪を振り乱して拒絶する僕に構わず
ゆるゆると体内に射し込まれるその質量に、声にならない絶叫が響いた

考えていた程の激痛では無かったが…生物学的には無理な挿入に慣れない身体だ
内側も外側も多少の傷は負うのも当然だったのだろう、鈍い痛みがピリピリ走った
そして想像を上回る圧迫感が、呼吸器すらも突き上げる様に感じる
下腹の内側を、臓器を掻き回して蹂躙される息苦しさに、ただ恐怖感しか感じない
拘束されたままの僕は、悲鳴をあげて泣き喚く事しかできなかった…

それに呼応するかの様に、金属製の破壊音が耳元で鳴り響いていた

「キツ………もう少し力を抜けよ、ゼノン、ちゃんと動けないだろう?」

太腿を撫で上げながら、悪魔がまたあの名前を呼ぶ
違う僕の名前はソレじゃない………あの方が呼んでいた名前は………

痛みに混濁する意識下で、場違いな事を考える自分も、よくわからなくて
何も答えられないままに、はくはくと息を吐き、ボロボロと泣く僕の涙を
赤い唇と舌が丁寧に吸い上げて、舐め上げる、その乱暴な行為とは裏腹に

だが…そんな優しさもまやかしに過ぎない、直ぐさま再開されるスライディング
無理にねじ込まれたソレが、容赦無く内側を突き上げる熱さに、一方的に翻弄される
僕はただ揺さぶられ、ソレを受け入れる事しか出来ないのだから

そこには歪んだ肉欲と、支配欲しかなかった…僕の意思など入り込む余地はない

それでも………傷付いたソコから流れる血で、股と脚を濡らしながらも
徐々に痛みだけではない、熱を帯びた吐息をはき始めた僕も浅ましい
強制的であっても、事前に丁寧に下準備を施されていた身体は
何も知らなかった頃とは完全に違っていた…清い生き物などとっくの昔に相殺されていた

ただ赤い月だけが…僕等の狂った交わりを見下ろしていた、嘆きの涙を傍観する様に

行為に慣れてきたのか、彼のモノ大きさに慣れてきたのか?
それとも身体が…それ以上傷付くよりも、快楽で受け流す事を選択したのか
徐々にその拒絶反応が収まれば…肉体的な苦痛だけは、和らいでゆくけれど
言いようのない喪失感が迫ってくるのは何故だろう?キリキリと痛む心の痛みと共に

痛いのか?苦しいのか?それとも別の何某のかさえ、最終的には解らなくなってまった

そうして…啜り泣く僕の声と、悪魔の息づかいしか聞こえなかった空間に
一際甲高い金属音が上がった………

僕の頭についていた金環が粉々に砕け散るのと同時に
悪魔が熱すぎる何かを、僕の中にぶちまけるの感じた
苦痛と嘆きに対する、せめてもの情けだとでも言うのか?
やんわりと扱かれていた僕の前も、殆ど同時に彼の手を濡らしていた

【堕天】…コレが悪魔の言う堕天だと言うのだろうか…

粉々に飛び散った金環の残骸が、大気に溶け込む様に消失してゆく様を
何の感慨も覚えずに見つめる僕は、多分【天使】としてはオカシイのだろう
意外そうな顔をして見下ろす【悪魔】の顔が、少しだけ滑稽に思えた

でも…キラキラと光り散ってゆくソレは、妙に綺麗だとも感じていた
今迄は…ただ頭に着いている【付属物】くらいにしか思っていなかったけれど
無くしてしまうのは…惜しかったのかもしれない

でも…それよりも、この酷すぎる行為が終わってくれる事の方が重要だったから

これで君の願いは叶ったんだろう?
僕が君等と敵対する【天使】とやらじゃ無くなったのだから
ならもう僕を解放してくれるよね?ここから?
彼女と僕を戒め、苦しめているコレを外してくれるよね?

もう僕等とこの惑星の事を、放っておいてくれるよね?

一度目のソレが、ユルユルと体内に吸収されてゆくのを感じながら
まだ薄いブルーだった僕の目は、じっと悪魔の目を見つめる



続く


はい!!!3回じゃ終わりませんでした!あと1回増えます!!!嘘つきでした

この何でも長文にしてしまう癖は、少し直した方がいいですよね…ヨヨヨヨヨ(嘘泣き)
いや…天使和尚様は純粋な分イジメがいがありまして
鬼畜な管理人には、つい色んなシーンが浮かんでしまいまして
サラッと流すべき所も、なんか細かく書いてしまう…
冒頭の鏡割りなんざ、本来だったら必要ないんですが
書きたくなっちゃうんだもん、どうしてだろう???読者様は付き合って頂けますよね

【罪の樹】=【林檎の樹】の秘密が徐々に解ってきましたね…
チンケな惑星で天使和尚さんが、うすらぼんやりと生活していた理由も

【負の感情】が無いと言う事は、生存能力が無い事に繋がると考えています

ガラパゴスの多くの生き物達が、ヨーロッパ人の進出で絶滅した様に
マラティやジュゴンの様な、攻撃性を持たない海牛類がレッドリストに載った様に
俗に【罪の無い生き物】と呼ばれる穏やかな生き物は、ちょっとした環境の変化や
外部からの侵略に極端に弱すぎるのです…その自己防衛本能の欠落故に

【罪が有りすぎる生き物】も大問題かもしれませんが…
【罪の無い生き物】には滅びの道しかないと言う事
多少の【罪】を持たない限り、生命として環境に適応出来ない…
惨い様でもそう言う事なんでしょうね、綺麗なままでは居られない

だからこそ…【知恵】を【罪に繋がる元凶】を、全ての生き物が求めるのでしょうね

普通にエロを書けばいいのに、堕天使モノになると…何時もの10倍暗くなりますね
コレも管理人のヒエロフィリア性癖?拗らせたコンプレックスみたいなモノですか?

根暗ワールドに耐えられる方のみ、後1回お付き合い頂けると嬉しいです


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あきゅろす。
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