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【リクエスト・過去作品サルベージ】
◆『流刑惑星の楽園』1 鬼畜J×天使X R-18G イントロダクション

【警告注意】本作品の真似をする方が、いらっしゃるとは思いませんが…
現実のプレイでは、絶対にやってはいけない禁手の表現が出てきます
リアルと創作の区別のつかない方、自身のないかたは閲覧をお控えください

打ち付ける雨の粒と強い風で、魔王宮の窓ガラスまでもが軋むのは珍しい
曇天の空の雲は黒く厚く…所々に雷鳴を轟かせていた
魔界と言えど、大魔王家の結界に護られている王都では、天候操作もされて居るため
このような荒れ模様になる事は滅多にない

理由は解っている…
今、この部屋と強引に時空を繋げている惑星の嘆きが、此方にも伝わってきているだけだ
かりそめの簡易結界であっても、皇太子である私のソレでも、その全てを抑えきれない程にその哀しみは凄まじい

コレは…期待以上の拾いものをしたかもしれない…

従僕達の全てを下がらせた薄暗い部屋で、ダミアンはニヤリとその目を細める
サロンの床には展開されたゲートから、深紅に光る魔方陣の向こうから、巨大な力が近づいて来るのを感じる

そして…その力に追い縋る様に、嘆きの余波が津波の様におしよせてくる
空間を飛び越える悪魔が、惑星から盗みだしたモノを…嘆きの根幹を取り戻す為に

このままでは…いくら俊敏が売りのジェイルと言えど、捕まってしまうかもしれないな

私の可愛い猫を、天界サイドの嘆きなどにくれてやるワケにはいかない
業を煮やしたダミアンは、ふわりとゲートの中央に降り立つ
逆巻く金髪は魔力反発の証、バ チバチと放電するソレをモノともしない
詠唱はおろか、躊躇すらせずに、彼はその中央にそのたおやかな腕を射し込む

途端に閃光が走り、ドーンと雷が落ちたような音が鳴り響く
床に吸い込まれた腕が、ゲートの中を掻き回す…空間をズタズタに切り裂いて
無茶も危険も百も承知だ…突然外部から割り込まれた強大な力に
空間位相魔法の根幹が軋みはじめる、術そのものが崩壊して
程無く「道」は、強制終了の状態になりかねないのだが…

必要なモノを回収出来るなら、もう用済みのゲートなどどうなっても構わない
むしろ強制的に道を閉じてしまった方が、嘆きの余波の影響を相殺できる

空間崩壊の直前にガシリと掴み取るのは、鋭い爪の生えた愛猫の手首
ダミアンが片腕だけで、その腕を引っ張り上げるのとほぼ同時だった
ゲートが自己崩壊をして崩れ墜ちた…バラバラになった魔方陣の残骸が
まるで割れた鏡の用に床の上に四散した

その中央でハアハア肩を振るわせ、息を吐くジェイルはまだ立てない様だが
その側に佇み見下ろす主人をギンと睨み付けた

「もうっ何するんだよっっ!俺ごとゲートを破壊する気かよ!!!」
「そんなヘマはしないさ…ちゃんと帰ってこれたじゃないか…首尾と報告を」

涼しげな顔でそう言う皇太子に、不満気な表情を見せながらも
ジェイルは反対側の片腕に抱き込んでいたモノを、少し乱暴に皇太子の前に放り出す
ジャラリ…重々しい鎖が床に散らばる音と共に
申し訳程度に「彼」裸体を、拘束具を巻かれた痴態を、包み隠して居た布がはだけた

途端に空間に広がるのは、ねっとりとした鮮血の臭い…
未だに闇に染まりきっていないのか?まだ薄い色の髪は夥しい出血で真っ赤に染まっていた
耳の少し上から、頭の両サイドに生えた角の隙間からか?溢れ出すソレが止まらない

「これは…まさか、何かの角を頭に刺したのかい?」

ジェイルの加虐性を考えれば…興奮した勢いでそれくらいの事はやりかねない
傷の状態を確かめながら、睨み付ける私に、ジェイルは慌てて弁解をする

「冗談…コイツにはそんな事しないよ、生えてきたんだよ勝手に
だけどそこから血が止まらない…応急処置をしても追いつかないし
俺はヒーリングも苦手だからさ、助けてやってよ…アンタならそういうの得意でしょ?」

変異悪魔といえど、火炎系悪魔のジェイルはヒーリング能力に欠ける
この傷 が手に負えなくなって、私を頼った…ただそれだけの事だ、困った子だ全く…
それにこの「天使」は特別だから、天使のままで連れて来いと、私は指示したのにねぇ

ぐったりと床に倒れ込む虜を、助け起こしてやった私は
出血の止まらない頭の傷口に手を翳すと、ヒーリング照射を開始する

その真っ青な顔色を見れば…此方が想定していたよりも、随分と若い外見だ
ともすれば…私達とそう年齢は変わらない様にすら見える
最も…この天使の特殊な出自を考えれば…
見た目の年齢や肉体だけの若さなど、何の意味も無いかもしれない

王宮内に常駐している医療スタッフを呼んでも良かったのだが
完全に闇堕ちしていないモノに対するソレは、加減が難しいからね
私自らが癒してしまった方が早いだろう
それに真相がはっきりするまで、この天使を魔界側の研究職の渡す事にも迷いがあった

コレが本当に【賢者】と呼ばれる者ならばね

なに…大魔王家の悪癖は健在だ…天使を弄んで闇に堕とすのは慣れたモノだ
勿論その過程で負ってしまった傷の再生に関しても、処置を施してやるのは何時も私だからね

「………っ………あっ…」

無残な傷を刺激された痛みか…ヒーリングが効き始めているのか?
天使の意識レベルが回復しつつある様だ

それまでぼんやりと虚空を見つめ、焦点の定まらなかった彼の双眸に、徐々に光りが戻り始める

「地獄にようこそ…名無しの天使殿…ああ、まだ動いてはいけないよ、傷は今塞いてあげるから」

私は出来うる限りに優しく、腕の中の彼にそう囁いたのだが
相手はその行為を、治療行為とは受け止めなかったのだろう
ぶわりと額に噴き出す汗はしたたり落ち、彼は小さく縮こまりガクガクと震え始めた

「………許して…もう許して、もう酷い事をしないで…しないで下さい………」

ようやく聞き取れる様な小さな声は、掠れて呂律も回っていない
魔界に連れて帰る為にだろう、今でこそ天界人の捕縛用・封印も兼ねた首輪と
それに連結された短い鎖で、両手首に巻かれた革手錠を繋がれているだけだが

その前に何処か別の場所では…もっと手酷い扱いを受けていたのは明白だった

全身に走る細い痣は青黒く変色していて、長期間何処かに括り付けられていた事は、容易に推測できる上に
その隙間に散らばるキスマークも、噛み痕も全部ジェイルのモノだろう

ざっと見た所、頭部の傷以外は…肉体に致命的なダメージを与える傷は無さそうだが
だからと言ってソレが、この天使にとって救いにはならないだろう

天界人に肉の快楽を教え込む最初の行為は、彼等にとっては拷問に等しい
根本的な価値観と精神的なアイデンティティーの全てを粉々に粉砕するからだ
故に最初からここまでの仕打ちをする必要はない
心を挫くなら普通の性行だけでも充分だと言うのに…

可哀想に、柄にもなくそんな言葉が口に出てしまう程に…彼の怯え方は酷いものだった
この性悪猫にされたであろう悪さを思えば…悪魔の王たる私でも同情的にはなる

普通、捕らえられたばかりの天界人は、階級に関係無く傲慢なものだ
悪魔を憎み見下した様な態度を取り、口汚い悪態を吐くモノだが
そんなお決まりの常套句さえ忘れてしまう程に、徹底的に犯されて、調教済みと言う事か

「だって…ソイツの事、気に入ったんだもん…いいだろう?一名くらい俺に回してくれても???」

自分だって定期的に献上されてくる天使共を、嬲って喜んでいるくせに…
どうせ悪魔にしてしまうなら、アンタがヤっても俺がヤっても一緒だろうに?

悪びれる様子もなく、薄笑いを浮かべたジェイルは、私に言い放つ
全く…私を主人とは思っていない様な言いぐさだが…腹心でもあり愛猫である事も替わりはない
付き合いの長い分、躾け治すのも無理な上に、もう終わってしまった事は仕方がない

「私は …あの極悪猫ほどに無慈悲ではないよ、天界のゼウスとも違う………
さあ眠れ…今はゆっくり休むがいい、傷が癒えるまで…覚醒した後に話は聞こう」

ガタガタと震える彼の額に手を当て、強めのヒーリングを掛けてやれば
最早抵抗する気力もないのだろう、再び意識を失った彼の頭はコトリとに落ちる
肉体の再生を優先している間は、目を覚ます事もないだろう
手錠を外してやり、キツク巻かれた首輪に手をかけた、ダミアンはその下から現れたモノに眉をしかめる

「………ジェイル、何もこんな目立つ場所に……」

本来は天使の【識別コード】が彫り込まれている場所、否…髪に隠れる項だけではない
まるで首輪の様に、首をグルリと一周する様に彫らていたトライバルの刺青

彫り込まれてまだ 間が空かないせいか、血と膿が滲んだ患部は真っ赤に腫れ上がり熱を持っている
止血の役割も果たしていた革首輪が無くなってしまうと
堰きとめられていた体液が、たらたらと彼の首筋から胸元にも流れ落ちてゆく
まるで溜め込んだ苦痛を訴える様に、涙を流しているかの様に

そして良く見れば…幾何学的な模様の中に、部分的に崩した文字が浮かんでいた

「もうソイツは名無しじゃないよ、俺が格好いい名前をつけてやったから」

ジェイルがニヤニヤと笑いながら、既に意識の無い男の頭を撫でてくる

XENOM…意味は、悪魔の怨敵・創造神ゼウスの古き時代の隠し名の一つだ

博識のスフィンクスらしい皮肉だ、確かにこの「特別な天使」には相応しい名前だが
それを拷問紛いの行為で強引に首に彫り込まれるのは、また話が違うではないか…

「久しぶりに堕としがいのある奴だったよ、角さえ生えてこなきゃ、もう少し独占して遊んでやれたのになぁ…」

心底残念そうにぼやきながらも、楽しそうに笑うジェイルを見て、ダミアンはただ溜息をつくばかりだ

リングは完全に破壊されてい る、元々切り取られてしまっている翼の痕も痛々しいが
今回彼が負った心の傷は、もっと深刻なモノになるだろう…
覚醒した後に大人しく魔界側に恭順してくれるのだろうか?

それ以前の問題で、心が壊れてしまっていないか?すら今は確認出来ない

いくらデーモンとエースが、指揮官として戦場に出ているからと言っても
惑星調査に向かわせる悪魔選を、誤ったのかもしれない…と後悔してももう後の祭りだ

ぐったりとうなだれる男を抱き上げながら、ダミアンは苦笑いをこぼした

※※※※※※※※※※※※※※

そこは…小さな箱庭の様な惑星だった、澄んだ空気と水、清浄な大地を持つそこは
緑と生き物達で溢れた平和な空間だった、僕はその場所が大好きだった

高度な知力の存在しないその世界では、生き物達の寿命はどうしても短く
僕以外に言葉を操るモノも居なかったけれど
痛みも哀しみも無いその世界の穏やかな時間を、 僕は護ってやりたかった

例え僕のツマラナイ命が、犠牲になっても構わなかった

自分が何者で、何時からソコに居たのかなんて知らない、思い出せなかった
ただ…自分に課せられた使命の様なモノ?だけは明確に覚えていた
この惑星を外部の侵略から護るのが、僕の絶対的な役目なのだ

それと…この星にたった1本だけ自生する「罪の樹」の管理する事
惑星に住まう生き物が、この樹に触れてしまわない様に番をするのが、僕の重要な仕事だった

この「罪の樹」がこの星にとってどんな意味があるのか?僕にはよく解らない…

巨大な幹の古樹には、白い花が咲き乱れ、真っ赤な掌大の実をつける
かぐかわしい香りのソレに、ありとあらゆるタイプの生物が引かれ
その実を食べようと、集まってくるのだけれど、それを味わう事は罪なのだ…

持たなくてよい「知恵の固まり」を吸収してはならないと、決められているから仕方がない
だから番人である僕は、彼等がソレを口にしてしまわない様に番をする
その樹木から離れる事が出来ないのだ、その根元に住まいを構えなくてはならない程に

樹木の番人である僕だけが…既に知恵を持っている罪深い僕だけが
この果実を食べる「権利」を持ってはいるけれど、口にする事は殆どない
ソレを食べなくとも、この星にはもっと美味な果実が、いくらでも実ってるからね
他の仲間に禁じているソレを、敢えて口にする必要も無いと思っていたから

ならばいっその事、そんな厄介で役立たずな樹木など、 引き抜いて処分してしまえば良いのだが
どういうワケかソレも出来ないのだ………

ちょっとした病気にも弱いその樹の具合が悪くなれば、僕は甲斐甲斐しく世話をやく
他の植物達の根が古樹の根を傷つけない様に、必要な土壌の養分を奪われない様に
草を抜き・土壌管理をして、堆肥の段取りまでしてしまう
日々の手入れが怠れ無いのだ、自分でもどうしてそう思うのか解らないけれど

そんな惑星は、つい最近まで至って平穏な場所だった
管理者の僕が、特定の樹木の世話を焼き続ける事が出来る程に、何もなかったのだから

ところが…最近は違う、【侵略者】が、頻繁にやってくる様になったのだ…
隙を見せれば、この星に降り立とうとする彼等を追い払う事に、僕は躍起になって いた

最初はそんなつもりはなかった、惑星の生き物達と明らかに異なる、知的生命体の彼等を見た時は
驚きと同時に言い知れぬ懐かしさも感じた、話し相手に飢えていた僕は、接触を試みようとしたけれど

声を掛けようと、彼等の近くまで行ってみれば…何とも言えない嫌悪感を感じるのだ
二足歩行の姿カタチは…僕と似ているのに、何かが根本的なモノが決定的に違うのだ
駄目だ…このモノ達は排除しなければならない…頭の中で鳴り響く声を無視して
僕は彼等の前に姿を見せたのだけれど………

その知的生命体達は、僕の姿を見ると酷く怯えて狼狽するのだ
こちらの言葉も聞かずに、仕掛けられてきた一斉攻撃に
此方の身体も、条件反射的に反応した様だ…そこから先はよく覚えていない

気がつけば…血塗れの大地の上で、僕は独りで立ち尽くしていた
何処から何時取り出したのかも解らない、巨大な斧をその手に握り絞めて

それまで戦った事なんて無かったから、どうして、僕がそんな事が出来るのか?
それそすらも解らなかったけど…身体は戦う事を覚えていた、何も考えなくても勝手に動く
これも星の管理者の役目だったのだろうか?

それからだ…同じタイプの生命体が、頻繁にこの星にやってくる様になった

僕が持っているソレと、よく似通った言語体系を持つ彼等の会話を聞けば…
どうやら?この惑星に移住を計画しているらしい、その下準備として
ココの星の環境と生態系を調べに来たらしい?
そしてこの星には、彼等の移住を阻む為体の知れない【化け物】が居ると…

【化け物】?それは僕の事なのだ ろうか?失礼な話だ…

勝手にやってきて、勝手に攻撃してきたクセに…僕を排除しようだなんて
何て身勝手な連中なんだろう…それに、この星にとって化け物なのは、お前達の方だろう???

明らかに惑星の生き物達とは違う彼等、悪意と欲望に塗れた罪の臭いがぷんぷんする
アイツ等がこの星にやってきたら、脆弱すぎるこの星の生き物は、残らず餌食になってしまうだろう

勿論、僕が何よりも大切に想っているあの古樹も………そんな事は絶対に許さない

彼等と何度も接触して、戦う度に、僕は戦う方法を思い出してゆく
そうだ抹殺するんだ、この星を奪おうとする者、「楽園」を壊そうとする全ての者を許さない

大義名分はあるけれど…捕食もしない相手を、ただ殺戮する僕はきっと醜いだろうな
でも…元から僕は罪に塗れた存在だ、この惑星上で唯一の汚れた僕が
コレ以上罪に塗れても、血に塗れても関係はない、問題にはならない

そうする事で、この惑星の平穏が護れるなら…それで構わないと思っていた

※※※※※※※※※※※※※※

「はぁ???神がチンケな惑星に居るだって???」

素っ頓狂な声を上げたのは、皇太子の側に控えていたゾッドだ
魔王宮の定例群議に、偵察部隊が上げてきた報告は、確かに突拍子もない話だった

天界の長・創造神ゼウスが、侵略価値も無い様な小さな惑星で度々目撃されている???

小さなその星に、補給用の街と砦を築こうと、調査に入った悪魔を皆殺しにしていると言うのだ
命からがら、かろうじて、その攻撃から逃げ帰った者は、口を揃えた様に証言する
あの霊力の波動は、間違い無くゼウスのそれそのものだと

しかし…非武装地帯に展開する、偵察用の衛星からあがるデーターでは
肝心のゼウスの気配は間違い無く、天界の奧院に存在する
滅多にそこから動かない彼の強大な気配を、間違えるはずもない

では…小惑星の上で目撃されるゼウスとは、一体何者なのか???

閣僚達は俄には信じがたいその話を、偵察部隊の失策を隠す隠蔽行為と失笑するのだが
その末席に控えていた、参謀本部の副長セネカだけは、微動だにせずボソリと口を開いた

「噂に聞く…【神の分身】とやら言われる者では…ありますまいか?」

戦場でその姿を見る事は有り得ない、特別な天使【賢者】その数は10名にも満たないとか?
ゼウスが天地創造を行った際に、その行為を直接に補佐したと言う者達だ
通常は光から量産される、普通の天使達とは違う
神の肉体の一部と霊体を分離して作られた別個体に、余剰な能力を与えられた特別製

その内の1名がなんらかの理由で、ソコに留まっているとしたら…
成る程【神】と見間違える事も有りうるだろう………

老大師のその意見に、すかさず文化局のダイタリアンが反発する

「お言葉ではございますが、その【賢者】の殆どが神に反逆したと記録にございます
袂を分かち時空の彼方に旅だった者も…仮に【賢者】の生き残りだとしても
その様なモノが、何故あの様な惑星に留まっているのか、説明がつきませぬ!!!」

肝心の軍議はそっちのけで、謎の天使の話で喧々囂々となる場を
ニヤニヤと笑いながら眺めていたダミアンは、不意にその右手をスッと上げる
それを合図に鎮まりかえる重鎮達の前で、ダミアンは大魔王に箴言した

「この件…私にお任せ頂けませんか?父上?
ズバ抜けて強い霊力の持ち主なら、私も興味がありますゆえ…」

その目はギラギラと怪しく光り「王家の悪癖」を全開にしているのは用意に察しがつく

問題の天使が憎い神の分身であるならば、尚更に陵辱し弄びたいと感じるのは当然だ
同じ王家の血を引く大魔王が、息子の邪心に気がつかぬワケはないのだが…

それも致し方無いと感じたのだろう、結局はこの父王も息子には甘い

「よかろう…この検案はお前に一任しよう…築城の障害を速やかに排除せよ」
「………解りました、陛下のご期待に添える様に………」

恭しく父親に礼を取ったダミアンは、直ぐさま玉座を立ち軍議を退出する
勿論それに異を唱える幕僚は1名も居ない、悪癖の邪魔をして我が身を犠牲になどしようはずもない
慌てて後に従うゾッドは、嫌な笑みを浮かべてツカツカと先を歩く皇太子にようやく追いつく

「ちょっと待てってば、どうするんだよ?まさかお前自身が、ソイツを捕獲に行くとか言わないだろうな?」
「そのつもりだが?何か問題が???」
「馬鹿野郎、あの領域は今抗戦状態の激戦区だぞ、皇太子のお前に彷徨かれたら
交戦中のデーモンにもエースにも迷惑だろうがっっ!!!参謀本部のルークも怒り狂うぞ!!!それくらい自覚しろって!!!」

俺が四の五の言わずにソイツを捕まえてくるから!その後はお前が好きにしろっっ!
と言い捨てて、その場から走り去ろうとするゾッドの尻尾を、ダミアンの手がワシリと掴み上げる

「いだだだだだっ!!!何するんだよっっ!尻尾が千切れるだろうがっっ!!!」

強い痛みを感じた尻尾を押さえながら、ゾッドは顔を真っ赤にして吼えるのだが
皇太子はその唇に「静かにしろ」とたおやかな指を押し当てると
少しだけ残念そうな笑みを浮かべて、ゆるりとゾッドの髪をなであげた

「お前の気持ちはうれしいが、相手は賢者かもしれない天使だ…普通の熾天使とはワケが違う
お前の魔力レベルでは、返り討ちに逢ってしまうかもしれない、それは具合が悪すぎる………」

カチンときたゾッドが「そんな事は問題ない!!!」と尚も食い下がろうとするのだが
皇太子は取り合ってはやらない「私の我侭で気心の知れた腹心を、友を失うのは困る」と切り返されてしまえば
いくら暴れ者のゾッドであっても、それ以上は食い下がる事は出来なった

口ではぶつぶつと文句を言いながらも、友と言われた事が嬉しかったのだろうか
大柄な男に生えた尻尾が、バフバフと振られているのが見える、本当に解り易い男だよお前は

だが…ゾッドの言い分も間違ってはいない、今私自身が最前線の付近を出歩く事は、要らぬ混乱を招く事になる
その上、私の代行として動ける上級悪魔の殆どは出払っている様な状態だ…誰を選んだら良いか…

若干気は進まないのだが、今王都に残っているのは、軍属ではないあの子しか居ない
私ですら御しにくい自由気儘なあの子に、今回の任務を任せて良いものだろうか?

「ジェイル!ジェイルは居ないか?私の声が聞こえるなら、ここに来い!!!」

呼び出した名前に、ゾッドは驚いた様に私の顔を見る
よりによってアイツかよ…ゾッドにしてみれば、そんな心境なのだろうが、背に腹は変えられない

間もなく私の目の前に簡易ゲートが出現すると、その中央から見慣れた影がスルリと降りてくる
同時にふわりと香るのは、錆びた鉄の匂い…どうやらおもちゃ箱でお楽しみの真っ最中だったのか?

「何の用?ダミアン?俺も今すごく忙しいんだけど?」

実際にそうなのだろう不機嫌なジェイルは、すぐ傍に居るゾッドをギロリとにらむ

戦場に出る事こそは少ない拷問官ではあるが、捕らえてきた虜囚の尋問・管理は一手に引き受けている
ましてや情報局長官までもが、戦場に出ている様な状態だ
監獄の方も飽和状態になっている事は、容易に推測は出来る

「コイツが居るなら、わざわざ俺を呼び出す理由なんてないでしょう?」

ジェイルにしてみれば、そんな八つ当たり的な心境で深い意味は無いのだが…
元々神経質な地獄猫を苦手とするゾッドは、居心地の悪そうな苦笑いを浮かべると
大きな図体を縮めて、その身を隠しきれない私の背中にそっと隠れる様な仕草をする

無理に親しくなる必要はない、ソレを強要するつにりも無いが
この2名を同時に呼び出せば、何時もこんな感じだ

念のためジェイルの暴走行為の監視役として、ゾッドを同行させようか?とも考えていたが
この調子では到底無理の様だねぇ…それ以前の問題でジェイルに団体行動を取らせるのは至難の業だ

多少の危険はあったとしても、今回の仕事はジェイル1名に任せるしかないのだろう

「忙しいのは解っている、だが緊急事態だ…個悪魔的にお前に頼みたい事がある…」

もっと近くに来いと呼ぶ私の指先に、渋々ながら従うジェイルの肩を抱き寄せ
そっと今回の事の顛末をその耳元に耳打ちをすれば

最初こそは不満気でつまらなそうな顔をしていた表情が、みるみるウチに変わってゆく

爛々と光る獣の目は、光の生き物と直接戦える事に歓喜している様だ
過度に血を好むその性質は悪魔の加虐性と言うより、元の種族スフィンクスのソレに近い

拷問官の仕事も性には合っているのだろうが、天界との交戦中のこの時期に
既に拘束されて、抵抗の手段を失った者をばかりを相手にする事に
多少なりとも退屈感を感じていた様にも見える

親しい関係の悪魔の殆どが、戦場に出払ってしまっている今なら尚更に
自分も戦いに参加したい、殺戮に興じたいと渇望するのは、魔族として当然の感覚かもしれない

「了解…そいつを殺さずに捕まえて、こっちに連れてくればいいんだね?」

舌なめずりをするジェイルの顔を見て、一抹の不安を感じながらも、ダミアンはさらに続けた

「話が通じる相手かどうかは、現段階ではまだ解らない…が出来うる限り手荒な真似はするな
討伐が目的ではない、魔界サイドに誘惑して来るんだよ、お前もそろそろソレを覚えるべきだろう?」

一応はそう注意はするのだが、相手は聞いているのか?いないのか?

「その時の状況によるよ…アンタの獲物には、なるべく傷は付けない様にするよ、皇太子殿下………」

そう言って、もう一度ニヤリと笑いながら私の顔を覗き込むと、その赤い唇が私のソレに軽く触れる…
ゴロゴロと喉を鳴らす音と振動が伝わってきて、私は思わず失笑するのだが

それと同時に掻き消える様に、ジェイルの姿は目の前から消えた

ココに来た道を再び開いて、戻って行ったのだろう…彼のテリトリーに
まだ見ぬ獲物を捕獲するための装備の準備も兼ねて

「おい…大丈夫なのか?アイツに任せてしまって???」

私とジェイルのキスシーンを見たくらいで、頬を赤らめている大男に、私も溜息交じりに答える

「まぁ…あの子ももう成体だ、最近は職務も問題なくこなしてくれている
コレも経験の一つだからね、天界人の誘惑もそろそろ覚えてよい頃だろうさ………」

砂漠での彼は『色好みのスフィンクス』と呼ばれていた
悪魔を誘惑できるのだから、天使のソレもそうは変わらないだろう

皇太子はその時、そう考えていたのだが…その認識が甘かった事
そして転魔した彼は最早スフインクスではなく、優秀な拷問官である事を後に思い知る事になるのだが

この選択が…標的にされた天使を無残な状況に突き落とす事になるとは、この時は誰もわからなかった


続く


一回で終わらすつもりでしたが、長くなってしまったのでこの辺りで切ります
多分二回か三回で終了するとい思います、あくまでもSSですからね

禁断の鬼畜J×天使Xのイントロダクションですが…如何でしょうか?
こんな感じでご満足でしょうか?Kさん???

次回は…かなり無茶苦茶な調教シーンがありますので、苦手な方はスルーしてくださいね


◆XENOM=ゼウスって言うのは本当です…聖II信者としては微妙ですが

天使Xを書くにあたって、この設定は使うべきかどうか?最初は悩んだのですが…
恐怖モブ・極悪天使と同様の【賢者】設定なら有りかなぁ?と思い今回は使用しています

前文化局所長ダイタリアン様には、今回は大人しくしていただいて

『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』における「エウロペアの十賢者」的な意味合いで書こうとしています

天界サイドのマッドサイエンティストで…天地創造に直接関与した補佐の一名だったけど
厄介なものを製作してしまった罪を問われ、翼を切られ記憶を封印される事に
そのまま辺境の星に幽閉されてしまった、気の毒?な存在なのかもしれない???

イメージとしては、せっせと薔薇の世話をやく「星の王子さま」みたな存在かな?今の状態は

通常の黒和尚に比べると、随分天然ボケ気味なのは…記憶を封印されているせいでしょう

まぁ…この天然和尚がどの様に覚醒して、悪魔に変異するかは次回のお楽しみです

通常の鬼和尚とは違う、パラレルワールドとしてお楽しみくださいませm(_ _)m

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