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【RX+師弟悪魔】
尻尾?の気持ち その2

さて屋敷に戻り、侍従の手を借りて愛用のマントを脱ぎ捨てると
ポフンと床に落ちる黒い塊
条件反射で攻撃体勢に入る侍従を止めて、よく観察すれば
黒い瞳がフルフルと此方を見上げている

「モジャ?お前ついてきてしまったのか?」

抱き上げると嬉しそうに擦りよってくる
質量の割に全然重さを感じ無かったので気がつかなかった

「やっぱりね、急に姿が見えなくなったからそんな事だと思った」

緊急回線のモニター越しに、ゼノンがため息をつく

「今日はライデンが居るから迎えに行けそうもないや
今晩だけ預かってもらえないかな?」
「吾輩は一向に構わないが、こやつは一体何を食べるのだ」
「食性は肉食みたいだけど、僕等が口にするモノは基本的に何でも食べるみたい
ただ味付けは少し薄めにしてあげてくれる?」
「承知した、何心配せずともゾットの一部だろう?何日でも預かろう」

そう言って回線を切る閣下の顔は妙に嬉しそうだ
モジャが、本能的に閣下を慕うのは構わないのだが
問題は易々と僕の結界を破った事だ

文化局内の実験個体や、セキュリティー用の合成生物を外に出さない様に
僕が侵入を許したモノ・退出を許したモノしか結界を出入りする事は出来ない

例え大魔王陛下であっても…

ソレを唯一破れる者はゾットのみのハズなのに
いくらゾットの一部とは言え…非力な小動物に破られるとは予想外だ

ウチの結界をくぐり抜けられるのなら
魔王宮のセキュリティーすら問題なく飛び越えるのだろう
実際、副大魔王の私邸のセキュリティーにすら引っかからないのだから…

その特性をよからぬ輩に利用されては、厄介な事になる

モジャが帰ってきたら、もう一度厳密に調査する必要がありそうだ
可能であれば、その能力を封印あるいは外科的に切除しなければならないかもしれない…

「ゼノン?」

トロンとした目をこすりながら、枕を抱えたライデンが
明るい廊下からモニター室を覗きこむ

「何でもないよ、先にベットで待っていてよ」
「はぁ〜い」

妙に素直なのは寝惚けてるからかな?
子守唄替わりのハーブもよく効いているみたいだけど
最近は激務続きだったからゆっくり眠れるといいね
お互いにいい夢を見られるかな?深い眠りの中で

※※※※※※※※※※

「さて我々もひとっ風呂浴びるとするか」

夜食に出されたサンドイッチを吾輩の分までペロリと平らげ
毛繕いをするモジャをそっと抱き上げる

モジャ?

怪訝そうに見上げるモジャを抱えて、浴室に
副大魔王の私邸に相応しい、豪華な浴室は広くバロック調にハデハデしい

浴室に控えていた侍従の全てを下がらせ
まずは自ら小脇に抱えた小動物を洗ってやる事にする

「ほら怖くないからな…」

そっとシャワーの湯をかけると、モジャモジャのカラダがみるみる縮んでゆく

「中身は思ったよりスリムなのだな…」

湯が気持ちがいいのか?今のところ暴れる様子は無い
愛用のシャンプーをたっぷりすりこみワシワシと洗ってやる
大体アイツは、自分のカラダなのに手入れが悪いのだ
何処まで手触りが良くなるか?いい機会だから試してやろう

十分に下洗いをしてから、トリートメント剤も入れてやりたかったのだが…
そこは獣故に、蒸しタオルで全身を覆いじっとしているのは、流石に無理なようだ
プルプルとはじき飛ばしてしまうので、今日の所はリンスで勘弁してやるか

自分の髪にはトリートメント剤を入れて
ゆっくり浸かる湯船で、小動物が嬉しそうにチャプチャプ泳いでいる
そう言えば本体と風呂に入った記憶は無い
親睦を深めるだの何だの?なにかしら理由を付けたら…
一緒に入ってくれるのか?そしたら無理矢理にでも手入れをしてやるのに

少し悪い笑みを浮かべると、黒い瞳がじっと此方を見ている

「お前はちゃんと手入れをさせてくれるから偉いぞ」

そう笑いかけると、ひとり湯船を上がり髪の手入れを続行すると
モジャは大人しく遊んでいる様だ
チャプチャプと泳ぐ音が聞こえてくる

※※※※※※※※※※

どうやらお互いに長湯をしすぎたようだ、
くったりと湯あたりしたらしいモジャのカラダを拭いてやりながら
ビール缶を空けると、黒い瞳がまたじっと見上げてくる

まさか…これも飲むのか?試しに少し皿に注いでやると
あっという間に飲み干してしまい、結局一本飲んでしまった

さすがにカラダが小さい分?酔いが回るのが早いのか?
スピスピと分かりやすい寝息をたてながら眠ってしまうモジャ

ドライヤーをあててやり、念入りにブラッシングをしても起きる様子はない
やりやすいだけ?眠っていてくれた方が助かるか…
少しだけフンワリとした毛並みは、何時もに比べればだいぶ手触りがよい
ほらみろ、ちゃんと手入れをすれば、ソコソコの手触りにはなるのだ

眠ってしまった小動物を抱きしめながら、本体の事を思う
吾輩は吾輩…変わらないつもりなのだが、アイツにはどう写るのか

古い旧友として、気取らない言葉…相変わらず他愛のないワガママは許容してはくれるが

何故か避けられているような気がする…いや避けられてるな

吾輩の立場を考えてくれる、不器用な気配りなのは解っているつもりだが…

やはり寂しい…

今は離れていても…もっと頻繁に逢いに来てはくれないのだろうか?昔の様に
役目上おいそれと王都を離れる事は叶わず
待つ事しか出来なくなった自分が酷くもどかしい

「薄情者なアイツの代わりに、今日は一緒に寝てくれるか」

フワフワの毛玉とベッドに潜り込みながら
臆病な絶対者は、ゆっくりと目を閉じた


まだまだ続くよ




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