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【RX+師弟悪魔】
尻尾?の気持ち その1

文化局の温室で何時ものお茶会
と言ってもみな仕事が忙しいらしく?
今日は雷帝の皇太子が一名

今日は新作のタルトを特別にご馳走してくれるんだって
ちょっとした優越感を感じながらも、嬉しくて仕方がない
早く戻ってこないかなぁゼノン

出されたハーブ紅茶を飲みながら、ぼんやりと時間を持て余していると…
ガタンと何かが落ちる音がする

「えっ…今の何?」

温室から続く、仮置き場の書庫から聴こえてきたみたいだ
おかしいな…ここはゼノンのプライベートエリアだから
ゾット以外誰も入ってこれないのに?そして今、ゾットが居るワケがない
まさかこの強力な結界を破る侵入者?

「確かめなくっちゃ…」

危険とかそんな事は考えもしなかった
俺にとっても大事な場所になったココを純粋に守りたかった

大丈夫俺だって結構強いんだから

書籍を守る為か?薄暗い部屋に並ぶ書庫の棚には
乱雑に積まれた本と得体のしれない箱や道具?ガラクタ?が並ぶ

念のため右手に小さな雷を握りしめ
正体不明の相手を刺激しない様にそっと声をかける

「誰か居るの?」

暗がりはシーンと静まり返っている…何だろう?気のせいだったのかな?

ガタッガタン!

気のせいなんかじゃない

「誰だ!!!」

確信を持って音のした方向に走り出すと
あれ?床に転がっているこの木箱、見覚えがあるんだけど…

ガサッガサササ
何か黒い塊が、棚の隙間を移動するのが見えた!

「本を焦がしちゃったらゴメンね」

と呟きながら、特大級の稲妻を錬成する
標的は謎のモジャモジャ
バリーンとけたたましい雷鳴が閃光と共に轟く

「!?何っ今のは…」

キッチンで用意をしていたゼノンは慌てて温室に戻る
今の雷鳴は…僕のエリアで危険なモノなんて無いハズなのに
書庫からはほんのり焦げ臭いニオイが漂う

「ライデン」

駆け込んだ書棚の隙間に、ライデンがペッタリと座りこんでる

「ゼノン…ゴメンちょっぴり焦がしちゃった」

半泣きで振り返る、彼の頭をヨシヨシと抱きしめる

「どうしたの?こんな所に雷を落とすなんて」
「あれ…あれ見てよゼノン」

そう指を指されて、床に目を落とすと
何?焦げた床の上に黒い塊?モジャモジャ?
落雷の余韻か?まだ放電しているソレは それでもピクリピクリと動いている

「これは…」

※※※※※※※※※※

「で…これは一体どういう事なんだ?」

温室の日溜まりでお茶を啜りながら
デーモンは目の前のバスケットの中で、もぞもぞと動く黒い毛玉を不思議そうに眺める

「この所ここで治癒能力を使いすぎたせいかな?
余波で半端に生き返っちゃったみたいなんだよね」

紛れもないゾットの尻尾…いや尻尾だったもの
モジャモジャの毛に隠れてはいるが、地球の小豆を思わせる?小さくつぶらな黒目もあれば
口もあるみたいだ、ピンク色の小さな舌が、小鉢に入れられたミルクを舐めている
小さく短めではあるが、猛禽類を思わせる足もあり自力で歩行も可能らしい

大昔事故で千切れてしまった尻尾、再生魔法で立派な尻尾を復元したのだが
元々の尻尾は大切に補完していた、お気に入りの木箱に入れて

ところがその尻尾が治癒魔法の影響で、偶然?別の生命を持ってしまったらしい
学術的には面白い現象だが…やはり本体の並々ならない生命力の強さも影響してるのだろう

「それと…状態が固定されたのは、ライデンの落雷の影響もあるかな?」

昔から言うでしょ?死者の再生には高電圧(落雷)が重要だって

「え〜なにぉう…俺のセイじゃないよ
だってソイツ最初から凄いスピードで移動してたよ」

2名のすぐ側でモグモグと先日食べ損ねたモノと同じタルトを食べながら、
ライデンが不服そうに応える

確かにビックリしたから、特大の雷を放ってしまったけど
捕まえてみたら小動物?だったのも気恥ずかしい…

あの後ゼノンが、真っ直ぐコイツの治療兼研究調査?で実験室に立てこもってしまったので
せっかくの二名だけのデートを潰された様な気持ちもしなくは無いかな?

怪我をさせたのは俺だし、まぁゼノンの探究心を考えれば仕方ないんだけどね

「触ってみてもいいのか?」
「特に危険は無いと思うよ」

念のため飼い主?の許可をもらってから頭らしき場所を撫でると
ゴワゴワと固い手触りと適度な温かさ…間違いなくゾットの尻尾だ
撫でられるのが嬉しいのか?
頭を上げるとスリスリと擦りよってきたかと思えば
ピョンと膝の上に飛び乗ってくる毛玉

何だか…少し可愛いじゃないか

昔は照れがちだった(最近は諦め気味の)本体の都合は考えず、
この尻尾をよく小動物の様に撫でていたモノだが
尻尾の方から積極的に懐かれる日が来るとは思って居なかったので
感覚的には不思議だ

「本体と一緒で、その子も閣下の事が好きだねぇ」

「こやつには名前は無いのか?」
「そうだねぇ便宜上モジャとは呼んでるけど…何かいい名前をつけてくれる?」
「………いや変にコジャレた名前より、本体らしくていいのではないか?」

他愛の無い談笑を聴きながら、ちょっぴり面白くないのはライデン
この間の埋め合わせと今日は招待されたのだけど…
話題はやはり黒モジャ中心だし
ひいては2名ともコイツの本体が大好きって事でしょ?

なんか置いてきぼり感を感じちゃうんだよね…なんかね…

ちょこんとゼノンの隣に座り直すと、ペッタリと抱きついた

「どうしたの?ライデン」
「ねぇ…今晩はここに泊まってもいい?」

少し潤んだ大きな目がじっと此方を見上げる
この目に僕が弱い事を彼は知っているのかな

「僕は大歓迎だけど…閣下構わないかな?」
「公務も暫くは無いからスケジュール的には問題はないな、よろしく頼むゼノン」

彼特有と言うか特権的な、子供っぽい?すねモードを察した副大魔王は
膝の上の小動物をもう一度撫でると、抱き上げバスケットに戻してやる
邪魔者は退散した方が良かろうと言う、年長者の気配りだ

「吾輩は先に屋敷に戻るから、あまり迷惑をかけるなよライデン」
「子供扱いしないでよ」

ぷ〜とむくれる顔が妙に可愛らしい、金色の前髪をワシワシと撫でる

「邪魔したなゼノン、それとモジャまたな」

ひらひらと手を振り温室を出て行くその背中を、黒い目がじっと見ていた


続く



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