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【水無月梅雨物語】
あぁ、たぶん疲れすぎてるんだ。

六月って休みないからなぁ。

そうだよ。過労からくる幻覚だよ、コレは。

じゃなきゃ、あり得ないよ。





──人語を喋る「カタツムリ」なんて。



【水無月梅雨物語】



六月も終わりに近づくある日、雨の中あたしは道沿いの花壇の紫陽花をのぞきこんでいた。

いや正しくは、紫陽花の葉に乗っている幻覚(喋るカタツムリ)を眺めていた。


「残念ながら、あなたの期待している幻覚ではありません」

「うわぁ! ナメクジもどきが読心術使ったうえに何か喋った!!」
「ナメクジ言うなっ! てーか、心の声だだ漏れなんですよ」
「耳も無いくせに何だだ漏れとか言ってんの? 悔しかったら耳出してみろやー。角出せ、槍出せ、耳を出せ〜♪」


「……あなた分かってます? あなた路上で紫陽花にかがみ込んで一人会話しちゃってるうえ、童謡いきなり歌い出したヤバくてイタイ人ですよ」
「へっ! 傘があったら篭って外に音がもれないんだよ! 分かったかナメクジ!」


「完全にナメクジに成り下がった……」


ちなみにカタツムリがショックを受けている間、防音機能など付いているはずのない傘の向こうでは、やっぱりイタくてヤバい人扱いであった。


「ところで、あんた何? 何かあたしに用? 取り敢えず人語を喋るカタツムリってとこは理解した(無理矢理)」
「案外、物分かりは良いんですね。(無理矢理)ってのが多少気になりますが。私先日あなたに助けていただいた者です。お礼をするため神様に言葉を話せるようにしていただきました」






「……………」
「覚えてますよ……ね?」




「……あぁ! 五百円だと思って駆け寄ったらカタツムリで、かなりショックだったの覚えてる。アレのことかぁ」


「……随分不純な理由ですが、地面に落ちていた私を拾って葉に乗せてくれたのは間違いなくあなたです。ですので、お礼としてあなたの願いを三つ叶えに来ました」

「ふーん……えっ、マジ!? 願い叶えてくれんの? やったね。何このアラジン的展開」



「名乗り遅れましたが、私陸生巻貝理事会の理事長をしている、マイルド・ブリフト・ルイ・ハグマ・フォレオ・ミスチリ・ミュンヘン……」


最初は真面目に聴いていたものの、長いと分かった途端あたしは指を折りながら願い事を数えはじめた。


「……ポートルイス・フール・エイプリル・メガ・ギガントス・メリクリ・オーガスト・スパイス・ハロルド・ムーソリッヒ・タダトモ・コウブツ……」


どこぞの首都やら四月馬鹿やら謎の単語が入っている気もしなくは無いが、まぁ作者の頭ではこれが最大限努力した結果なのだ。
許してあげてほしい。


「……ルー・ライス・オニオン・ポテト・キャロット・ビーフ・S・カルゴです」
「ねぇー、三つしか叶えてくれないんだよね、デン太」
「えっちょ、無視!? 無視ですか!? しかも『デン太』って! 何処に入ってました、そんなの」


「えー、いーじゃん。デンデン虫のデン太って。我ながらナイスネーミング!」

片目をつむり、右手の親指を突き出しながら言った。
これをした人が皆、ペ○ちゃんに見えるのは作者だけらしい。

「いや、別に毎回毎回この長い名前呼んで下さいって訳じゃないので、聴くだけでもして下さいよ。作者これ考えるだけに1週間もかかったんですから」

「長っ! 想像以上に長っ! でもちゃんと聴いたよ。好きな食べ物カレーの材料とエスカルゴなんでしょ。てか共食いじゃーん」


「あぁ、食べ物の所しか聴いてないんですね……。その瞬間にあなたは作者の策略にはめられたんですよ。私が理事長してるとか全く覚えてないでしょう」
「え、何ソレ。理事長とかww」




「自分から言っといてもうなんですが、さっさと願い事言って下さいよ。早く帰りたいんです」
「早く帰りたいって……あんた実は感謝の気持ち皆無でしょ」
「はーやーく。ねーがーい。いーえー」


「何か突如キャラ変わったし! えーとえーと……じゃあアンタの名前、今日からデン太に改名!」
「無理です」

即答された。それはもう光の速さだった。
というか他にもっとマシな願いはなかったのだろうか?


「じゃあ後2つですね」
「なんか、1個減ったあぁぁあぁ!! えっ酷くない? 叶ってもないのにっ!」


「文句は作者まで。尺がないんです。早くっ、次!」

「ストップ大人の事情! えと、じ、じゃあこの鬱陶しい雨どうにかしてよ。無理とかなしで」
「分かりました。でも今存在するモノを無くすことは出来ないので、消すのではない方法をとらせてもらいます」


「?」


「有を無に変えることは出来ない、ということです。ということで……」
「ね、凄く嫌な予感がする。これを人間の間では第六感っていうんだよ。君達は知らないかもしれないけど」



「それじゃ、いっきますよー」






ドシャッ!!

何かが落ちてきた。


雨だ。バケツをひっくり返したような。
訂正。そんな生温いモノではなかった。
プールだ。プールをひっくり返したような雨だ。


そしてその雨を浴びた瞬間、某ジブリアニメのコマに乗った巨大な怪物を思い出した。



「お前はトトロか!? いきなり大洪水降らすなっ! せめて2倍くらいから始めろ!」

「作者が折角、遠回しに説明したのに固有名詞出さないで下さいよ。あなた、ことごとく彼女の努力潰しますねー」


「その努力の仕方を間違ってんの。喋るカタツムリの時点から色々ズレてる! せめてもっと珍しいものとかにしようよ」
「例えば?」
「うーん、……カッパ? とかさ」




「分かりました。最後の願いを叶えましょう」
「……え? 待て待て待て待て待て。いつ!? いつ願ったよ、あたし!」

「これで私の役目は終わりですね。あー、肩凝った。では、一ヶ月後をお楽しみに」
「肩なんて、その体の何処に? ……来月!? 来月、来ちゃうのカッパ。しかも喋る奴」
「勿論です。私の国では全員言葉を話しますよ」
「アンタたちの国があんの!? てかいつ!? いつ来るのカッパ。次こそは絶対捕まえて、その手のコレクターに売りつける!!」





「最後の願い、叶えない方が良い気がしてきた……」
「ねぇ、いつ!?」
「いつかです。いつか」
「五日!? 五日だね! よーし待ってろよカッパ!」
「……もう突っ込むのも面倒臭くなってきた」








さて来月の5日!
果たして喋るカッパは現れるのか!

次回更新を待て!


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