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傍ら<ギャグシリアス>









皮肉にも、一緒にいるうちに


気づいたことがある。











「僕に近寄らないでください」

「なんで?!」


当たり前のように僕の横にくる白蘭に冷たく言い放って、距離をとった。
白蘭といえばそんな僕の態度にショックを受けたのか、口を開けて驚いている。
『ガーン』という効果音がつきそうな感じで。

でも、
僕は気づいてしまったんです。









「……です、よ…」

「え?」


独り言のように零した言葉はよく聞こえなかったらしい。
白蘭は困惑したような表情をしてから、なんとか聞き取ろうと僕に近づいて耳を傾けてきた。













「僕とキャラが被るんですよ!」



声を荒げてそう言えば、時間が止まった気がした。
きっと、言われた白蘭もポカンとしているんだろう。
でも僕にとっては重要なことなんです!
自分でいうのもあれですが、このノリといい、変態さといい…









「…似た者同士?」

小首を傾げながら言う白蘭に、普段ならブチッという音とともに罵声を浴びせるところだが。
今の僕には言われた言葉のほうが衝撃的で、ピシリと固まってしまった。
それからなんだか泣きそうになる。
いやむしろ、







「死にたい…」

「『死ね』じゃなくて『死にたい』?!そこまで嫌なの?!」


驚いたような必死な白蘭に、僕はただ頷くことしかできなかった。
何も言えなくて、きゅっと唇を噛み締める。









「ほ、ほら僕は『クフフ』なんて笑ったりしないし、髪型も普通だし…」

「僕は普通じゃないと?」


ジロリと白蘭に目をやれば、うーんと考えたあと、それは真剣な眼差しに変わる。
その様子に、何を言われるのかと少しだけドキリとした。











「骸君は……可愛いよ?」


真顔でそんなことを言った白蘭に、ゾワッと鳥肌がたつのがわかった。
僕の周りの空気が酷く冷たいのは気のせいでしょうか。
それはもう、凍り付きそうなほどに。









「やっぱり死にます」

「待って待って待って!」


俯きながらフラリと立ち上がった僕の手を、パシッと白蘭に掴まれる。
思わずそのまま止まってしまった。







「まだ何かあるんですか?」

振りほどきたいのに、それができなくて。
思っていたよりも強い力で掴まれていて驚いた。









「骸君がいなくなったら嫌だよ」

「はっ…何を言って」




そんな声で、
そんな切なそうな声で言わないでほしい。











「ずっとオレの傍にいて」



また、あの真剣な顔。
目が…そらせない。







「…っ…」



違う違う違う。

僕が傍にいたいのは…












「骸君」




『骸』








「あなたじゃ、ない」


絞り出すように出した声は、空気に溶けこむ。
そのまま僕も消えてしまいたかった…















『なんですか?恭弥』




『ずっと…僕の傍に、いて』



突然君が寂しそうにそう零すから、何事かと思った。
でもそんな君を安心させたくて、






『クフフ、当たり前じゃないですか。

僕はずっと君の傍にいます』


『ほんとに?』

『はい、約束です』





約束、したのに…




どうして僕はここにいるのだろうか。
君の傍にいれないならいっそのこと……

そんなことを思いながらも溢れる過去は止まらなくて、










『それから…』

『おや?まだ何かあるんですか?』





そういえば、もう一つ









『必ず、僕のところに帰ってきて』







僕はまだ死ぬわけにはいかない。
その約束だけは、

なんとしても守ってみせます。














「……白蘭」

「ん?何?」


冷めた声で言う僕に対して、いつもと変わらない明るい声で反応した白蘭はにこにこと笑っていた。
その笑みの下で何を考えているのかは、まだわからない。










「僕は帰ります」



恭弥の元に。

その瞬間、空気がヒヤリと冷たくなった。
冷や汗が首筋を伝う。
覚悟は、してるつもりだった。












「帰さないって言ったら?」









(それでも僕は、君の傍にいたい)














end...



















2008.8.26

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あきゅろす。
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