カウントダウン<切→甘々> ※雲雀さん誕生日のお話 なんで『今日』、 君が僕のところにきたのか… 僕にはわからなかった。 ああ、やっぱり君は知らないんだ。 そう思い知らさせた気がして、 それがなんだかすごく嫌で ズキッと胸が痛むのを感じた。 だって…… 「ひーばーりくーん!」 夜の21時を過ぎた頃。 家をチャイムを鳴らすわけでもなく、大声で叫ぶような声が僕の家の前に響いた。 それは聞いたことのある声で、忘れようのない声。 ほっといて近所迷惑になるのも嫌だったから、仕方なく僕は玄関のドアをガチャリと開けてやった。 「……何?…骸」 こんな夜に何の用だと思いつつ、うるさいんだけど。と言葉を続ければ、目の前にいる君…骸は、特に悪びれた様子もなくにっこりと笑みを見せた。 そしてそのまま小首を傾げて、一言。 「泊めてくださいv」 「……」 バタンッ!!! それこそ近所迷惑なんじゃないかというくらい、僕は勢いよく玄関のドアを閉めた。 もちろん骸は外に置いたままで。 「え、ちょっ雲雀くん?!雲雀恭弥くん!!?」 「帰って」 焦ったような骸の声と、閉められたドアをドンドンッと叩く音が辺りに響く。 近所迷惑だって言ってるのに…いや、言ってないけど。 閉めたドアに寄り掛かりながら、吐き捨てるように言えば、ドアを叩く音はなくなった。 諦めたのかと、ほっとしたのもつかの間… 「そんなっ…お願いします、中に入れてください!」 「……」 変わらず骸の声が外から聞こえた。 その声はどこか必死で… 「ひ、ばりく…ぐすっ」 え、何…なんか泣き出したんだけど! 直も聞こえる情けない声に、僕はため息を一つついてから、再びガチャリとドアを開けた。 そこにいたのは、クフンックフンッと気持ち悪い声で泣いてる骸。 「ひっひば、雲雀くーん!」 でもそれは僕を見るなり明るい声に変わり、そのまま僕に飛び付くように抱き着いてきた。 突然のことに、僕はバランスを崩して後ろに倒れそうになるのをなんとか耐える。 「ちょっ…!」 「…ちっ」 小さく舌打ちする骸の声を僕が聞き逃すはずもなく。 狙ってやったのか…と、僕は躊躇うこともなく、いまだに抱き着いたままの骸を殴り飛ばした。 「い、痛いです」 「そういうことなら帰って」 殴られたところを押さえている骸を見下ろしながら、僕はきっぱりと言ってやった。 なんで再びドアを開けてしまったのだろうと、少し前の自分にため息をつく。 そして外に飛ばした骸をそのままに、またドアを閉めようとした…のに、 ガッ 「待ってください、雲雀くん!」 それは骸の体がドアに挟まることで叶わなかった。 というか、骸が自分からドアに挟まってきたんだけどね。 「ワオ、そんなに挟み殺されたいの?」 「違いますっ、泊めてほしいんです!」 『泊めてくださいv』 さっきもそう言ってたけど… 「…なんで?」 「なんでもです!」 何それ、理由になってないんだけど。 そう思ったけれど、どこか真剣な目をしている骸に、僕は何も言えなくなる。 少しの沈黙…でも僕を真っ直ぐ見つめる骸の目は変わらない。 今のこの状況が堪えられなかった…ただそれだけ。 「…勝手にしなよ」 「!」 ふいっと顔をそらしてポツリと零した言葉。 それはしっかり骸に届いたようで、骸の表情がたちまり嬉しそうなものに変わるのがわかった。 「……」 「ありがとうございます、雲雀くん」 玄関を開けたまま僕は先に一人で家の中へと入った。 すると、後ろから聞こえたドアを閉める音と骸の声。 僕は背を向けたまま、骸に聞こえないようにと静かに言葉を零した。 それは、 『泊めてくださいv』 そう言われてからずっと思ってたこと… 「…な、んで……今日なの…」 「雲雀くん?何か言いました?」 「……別に」 先に中に入った僕を追うように今、横にきた骸は首を傾げて僕を見る。 聞こえないように言ったはずなのに、聞こえていないことが 悲しかった。 「さて、そろそろ寝ましょうか」 来たばかりでそろそろも何もないんじゃないかと思ったけれど、いいかげん僕も眠かったから大人しく頷いた。 …けど、 「…ねぇ」 「はい?」 「なんで人のベットで寝ようとしてるわけ?」 そう、今骸は勝手に僕の部屋に入って僕のベットを整えてる。 つまり、ここで寝る気だ。 泊まることは許したけど、一緒に寝るだなんて許した覚えはないよ。 「もちろん一緒に寝ようと思いまし… 「やだ」 そうはっきり答えれば、一瞬だけ悲しそうな表情をした骸がいた…気がした。 それから骸は、困ったような笑み…所詮苦笑いを浮かべながら僕を見る。 「どうしても嫌、ですか?」 僕はこういう骸に弱い。 それを骸も知ってるのか、それとも無意識か… どちらにせよ、 「……わかったよ」 僕はそう言うしかなかった。 大人しく先にベットに横になれば、失礼しますね。という言葉とともに隣に入り込んでくる骸を感じた。 そのことにビクッとしたけれど、骸には背中を向けたまま。 そして同じベットに入ったはずなのに、いっこうに何も起きない…というかされない。 恐る恐る後ろを振り返って見れば、僕のほうを見るように横になってる骸がいた。 僕はてっきり… 「おや?もしかして期待、してました?」 「…っそんなわけないだろ!」 一緒に寝るということは何かされる…そんな考えがどこかにあった。 でもクフフとおかしそうに笑う骸に、その考えは違ったんだと安心したのと、からかわれた気がしてムッとしながらも顔が熱くなるのを感じた。 ふいっと顔をそらして再び骸に背を向ければ、近づいてきた体温。 ドキリ、と胸が高鳴った。 「おやすみなさい」 「……うん」 優しいその声に誘われるように、僕の意識は夢の中へ堕ちていった。 next... [前へ][次へ] [戻る] |