嗚呼、【フラベル/シリアス】
貴方が何処かで生きてくれているだけで、
唯、其れだけでいい。
嗚呼、愛しい貴方
どうか怯えないで…―――――――
「センパイ、ミーのコト好きですかー?」
返事はない。
それもその筈。フランは、自分の部屋の壁に、隙間無く張られた“ベルの写真”に話し掛けているのだから。
「センパイ、ミーは貴方が大好きで大好きで溜まりませんー…あぁ……センパーイ、センパイ、センパイ、センパイ…………」
壊れたレコーダーのように言葉を繰り返すフラン。
―――ピロロロロ♪
突然鳴り出すフランの携帯。
「この着信音……センパイだ。」
嬉しそうに、狂気に満ちた表情で、携帯を取る。
「もしもしー。センパイ?」
『うん、俺。今からお前の部屋行っていい?』
「いいですけどー……何でですかー?」
『王子暇なの。だからお前で遊ぼうかなって』
「それはいい案ですねー。……待ってますよー」
――プツッ、――――
「………さてと。この写真、どうにかしないと。」
―――ガチャリ
ドアが開く。
「来ましたねー。堕王子。」
「…窓ないんだ、お前の部屋。」
ズカズカと、自分の部屋かのように入ってくるベル。
壁の写真には気付いていない。……フランの幻術にかかっているからだ。
「何しますー?」
フランは、ベルに気付かれないようにドアノブの鍵穴に、注射器に入ったセメントを注入した。それからソファーに座っているベルの隣にちょこんと座った。
「あ、そうだ……見せたいものがあるんですー。」
「ん…俺に?」
「壁に御注目。今…この白い壁はミーの幻術のお陰で真っ白なんですー。」
「……?お前頭イかれた?何言ってんのかさっぱりなんだけど。」
「………。」
白い壁が一瞬で写真で彩られた。
「………は?ぉ、まえ……意味、わかんね……」
ベルはこの部屋一面に自分の写真が飾られているのを気味悪く思い、部屋を出ようとドアノブを回した…が、開かない。
「あ、開きませんよー。セメントで固めましたからー。あと…出口は此処だけですから。」
「でも…突き破れるんじゃね?このドア。俺って頭い「ドア?この部屋にドアなんてないでしょう?」
ベルは辺りを見回した。ドアがない。先程まであったドアが。
壁だけの部屋。入り口も出口もない。
「な…んで………?」
「ミーは術師ですよー?忘れたんですかー?」
「やだ…俺…俺……」
「これからはミー達二人だけですね……」
「ぉれ…………、――――――」
フランは怯えるベルを優しく抱擁した。
「大丈夫、怯えないで。…………………ミーがいるから…大丈夫。」
貴方が何処かで生きてくれているだけで、
唯、其れだけでいい。
そう思っていた筈なのに…。
嗚呼、愛しい貴方…
どうかミー“だけ”を見ていて……――――――――
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