スクラップティーチャー
*入浴(2)
大きな浴槽にピンク色のバスボムを浮かべると、いちごの甘い香りとしゅわしゅわ溢れる泡が広がった。
「わぁ…」
軽く体を流してからお湯に浸かれば、そこは天国。
東一が思わず頬を緩ませたその時、遅れて悟史が入ってきた。
「お待たせ。」
恥ずかしげも無く晒される男らしい均整のとれた筋肉質な体を見て、東一は、恥ずかしくてこのまま湯に潜ってしまいたいような気分になった。
悟史が向かい合うように浴槽に身を沈めたので、目のやり場に困った東一は、何となしにいちご色の湯を掬っては眺めてを繰り返す。
「いちごみたいだね。」
唐突に言われ、お湯の色のことだろうか、と東一は顔を上げた。
「ほっぺたが紅くなって、美味しそうな苺…」
自分がそう形容されているとわかり、その頬はさらに紅く熟れる。
おいで、と手招きされて悟史に背中を預ける格好でその膝の間に入ると、それだけで東一の心臓は早鐘のように鳴り響き、気付かれやしないかと緊張してしまう。
「こうして抱き締めるのに丁度良い。」
悟史がそう囁きながら髪の毛に頬を擦り付けるので、東一は、このまま甘やかされていたら、甘い匂いの空気に溶けてしまうのではないかと思った。
そんな風に思考がまどろみかけたところで、ふと疑問が浮かぶ。
「あの、悟史さんて…」
目の前にある真っ白なタイル張りの壁を見つめて切り出すと、優しい声が答える。
「うん?」
「こう…俺とくっついてて、ドキドキしないんですか?」
「うーん…してるんだけど、それじゃあダメかもしれないね。」
どうして、と半ば見上げる形で東一が振り返ると、愛おしそうに見つめてくる悟史と視線がぶつかった。
「だって、俺が東一と密着してドキドキするって事は、興奮している事になるよね?」
「えぇ、まぁ…」
「そうしたら、手を出さないって保障も出来ないだろう?」
そう言って困ったように笑いながら、東一の頭を撫でる。
「でも…何だか寂しいです。」
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