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大部屋。(中編)
ピンク・フローライト。
<幻想的>



学生の敵と称される定期テストが終わり、二人は直ぐに和紗の家へ向かった。

普通の友達のような顔をしながら和紗の母に挨拶をして、家に上がる。
そんな時、有理は、どこか罪悪感のようなものを感じるのだった。

しかし、敢えて恋人であると言う必要生よりも、社会的なリスクの方が大きく、どちらの両親にも交際の旨は伝わっていない。



入り慣れた和紗の部屋に入ると、緊張の糸が解けた。
有理は、その安堵を感じながら、ベットに腰を下ろした和紗の隣に座り、肩を寄せる。

「眠い…」

本当は、眠いわけではないのだが、こう言えば楽に甘えられる気がして、何度も繰り返す。

「かずさ…ねむい…」

細い指で、大きなてのひらを握ると、擽ったい気持ちになる。
恋人繋ぎにしたり、指先を摘んでみたりと戯れるうちに、ぐい、と引き寄せられた。

そのまま傾くと、すんなり和紗の胸に抱かれる。

「いいよ、寝ても。疲れてるんだろ?」

膝枕のようにさせられて、一瞬、有理はきょとん、としてしまった。

「いいの?」

「有理の寝顔、見たい。」

和紗は、そう言いながら優しく微笑んで、掌に収まるサイズの肌理細かい頬を撫でる。

「やだ…恥ずかしい…」

「ほら、眠いんだろ?」

子供をあやすのと同じく、髪の流れに沿って撫でられると、連日の睡眠不足のせいもあって、本当に眠くなってきた。
和紗の筋肉質な腿は決して柔らかくないが心地良く、有理は、大好きな香りに包まれて、ほやん、と意識を手放しかけてしまう。

「ほんと…ねちゃ…ぅ」

「うん、おやすみ。」

ほどなく、可愛らしい唇からは、規則正しい寝息が零れ始めた。

会話が無くとも、和紗は、飽きることなく有理を見つめる。
この無防備な恋人が愛おしくて仕方ないのだ。

直ぐにでもきつく抱き締めて蕩けるキスを見舞ってやりたいと思いつつも、ただただ、じっと見守ってもいたい。

「絶対、ずっと…好きだからな…」





◇ひとだんらく◇




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あきゅろす。
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