大部屋。(中編)
オレンジ・ジェイド。
<ストレートな告白>
(有理目線)
和紗の部屋。
和紗は、週末の課題があと少しだと言って、必死に机に向かっている。
そんな背中を見つめていたら、何だか、すごく抱きつきたくなった。
最近、俺の中のスキンシップ欲っていうか、そんなのが増えて、頻繁に触れたくなる。
でも、そんな事をしたら変に思われるんじゃないかって思うわけで…
いくら恋人って言っても、やっぱり限度とか考えないといけないだろ?
でも、こうやって考えばかり先走って行動に移せず、いつも俺は後悔している。
たまには、甘えてもいいのかな…
本当に気まぐれに、今日は勇気が出そうだ。
音を立てないように立ち上がって、和紗の背後に移動する。
「和紗…」
驚かせないように静かに名前を呼んで、首元に腕を回し、その広く逞しい背中に寄り添った。
「ゆ…有理っ?!」
和紗の低い声が、体温と共に体を通して伝わってくる。
「…ん?」
あぁ、和紗の心音が聞こえる。
すごく…心地良い…
「どうかした?部屋、寒い?」
心配するような聞き方。
やっぱりダメかな…いきなりこんな事。
「ううん…寒くない…」
不安になって、言葉尻が消えてしまう。
「じゃあ…え、と…何?」
「何でも、ないんだけど…」
「へ?」
ぽかん、としたアホっぽい声が、和紗から漏れる。
「何でもないっ…ごめん、邪魔して…」
急いで腕を放すと、すぐに和紗が振り返る。
色々と恥ずかしくて顔を上げずにいると、暖かいものに包まれた。
和紗の香りが、いっぱいに広がる。
つまり、抱き締められていたんだ。
しかも、今までにないくらいぎゅうっと。
少しの息苦しさが嬉しくて、俺も、和紗を抱き締め返す。
「可愛い…」
いつもなら文句を言う台詞も、今日はいいや…
「か、ずさ…」
「んー?」
「もっと…ぎゅって…して…?」
「……っ!!」
◇ひとだんらく◇
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