大部屋。(中編)
6
最後まで、二人の手は固く結ばれていた。
息と服装をひとしきり整えると、疲労感に任せて、変に皺の寄ってしまった絨毯の上に一緒に転がる。
有理は、空いている手で和紗の髪を撫でる。
気持ち良さ気に目を細めてくれるのが、とても愛おしく感じられた。
「和紗…」
有理が、眠たそうな声で呼ぶ。
「なに?」
「ありがと。」
「…どーいたしまして?」
「俺、和紗のこと…好きだからな…」
恥ずかしそうに目を伏せると、長い睫毛が揺れた。
「わかってるよ。」
「あと、和紗はバカじゃない…」
「だろ?やっとわかった?」
「……大ばかだ…」
クスクスと笑って、和紗を見る細い瞳が輝く。
「酷…ま、いいけど。何で大馬鹿?」
「だって、」
はにかんだような笑みを零して、躊躇い混じりに囁く。
「あんなに…俺のこと好きなんて…」
◇ひとだんらく◇
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