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ラディス//6
『還っておいで…私の元へ…』


急に訳の分からない声が頭に響いた


「んっ?」


空耳だろうと無視をして歩こうと足を一歩踏み出したときには辺りが光でいっぱいだった



「っ!……何だここ」


眩しさで目を閉じていた真人は開眼一番に目にした光景に唖然としてしまった


何故ならそこは見たこともないガレキの山

頭上には真っ黒な雲


地面は乾いた土が有って

人一人いない空間に息をつめた

風だけが虚しく吹いていた


何故自分がこんな所にいるのか
ここはどこなのか
夢か幻か
真人の頭はそんな事でいっぱいになった


極度に緊張してしまったのか口内が乾いてしまっている


とりあえず真人は辺りを見回してみた


「おっ!何だお前達もいたのか」


そこで目にした他の四人を確認すると体の力が一気に抜けた気がした


そこには可誉達四人もいたからだ


彼女等も今の状況を理解できないらしく目が点になっていた


「……とりあえず考えていても分からないので歩きましょうか」


しばらくすると冬心が観念したかのようにため息を零しながら言った


「あぁ…そうしようか」

優花も賛成らしく先頭を歩きだす

女二人は不安げにゆっくりと歩きだした

俺と冬心は並んで優花の後ろを歩いている


足音が乾いた音で
淋しい風だけが奏でる空気

茫然と歩いていた四人だがある場所に着くと足を同時に止めた


廃墟の中に一つだけ
綺麗なドームがあったのだ


一瞬だけ足を止めた皆だがすぐに中へと入っていく


ここに何かが有ると
自然に湧いてきた確信


真人は妙な胸騒ぎを沈めながら歩きだした

ずっと皆も黙っていたのはきっと不安に押し潰されそうだから
恐怖に足がすくまないように
黙って歯を食い縛り
黙々と歩いていく

足音が響いて
本当に孤独感が包み込んでくる


あぁそうか…
俺は不安なんだ

俺たちは元の場所に戻れるのか
ここは一体どこなのか
知る迄俺はずっとこのままだろうから


そんな風に考えていたらふいに前にいる優花が声を出した


「何だ?これは…」


その言葉に他の三人はそれを囲むように横に並び見た


「何かの機械のようですね」


「これ動くのか?」


「分からないです…でも壊れてるようには見えないですね」


そこには大きなコンピュータが有った
沢山のスイッチやボタンがあるので訳が分からない


真人はとりあえず適当にいじってみることにした

「おい!お前勝手にいじんないほうがいいぞ!」

可誉の止めは無駄に終わるのだが…



………ピコっ


真人がしばらくいじっていると急にコンピュータが起動し始めたのだ


「お前…スゲーよ!どうして分かったんだ?」


「いや適当にいじってただけだから」


可誉の感動を裏切る答えを出した後
一斉に周りの緊張した空気が穏やかなものになった


「コレで帰る方法が分かるかもしれないな」


安心したのか溜息混じりで優花は言う

周りの皆も同じ気持ちなので自然に頷き笑顔を浮かべていた


そして大きな画面に目を向けてみたが訳の分からない英語がずらりと流れていた


そんな光景をしばらく見ていると急にコンピュータが話し始めたのである

『ようこそ、ラディスへ』


その言葉に全員が息を飲んだ


「ラディスって…さっき話してたやつだろ?…本当にここはラディスなのか!?」


真人はコンピュータに確認するように問いただす

本当にここが噂のラディスなのか?
どうして俺たちはここに来てしまったのか
全て聞かなければならないから


『昔はとても美しい国でした…彼が狂うまでは』

だが真人の言葉が通じないのかコンピュータは勝手に話し始めた


「何だよ…彼ってなんだよ!」


真人はコンピュータに思いっきりあたっていた
怒鳴り散らしパネルを叩こうとしたがそれは近くにいた優花に止められてしまう


「とりあえず話は聞いておこう」


苛立つ真人をなだめようと優花が肩を掴み自分の方に振り向かせて止めた

真人はバツが悪そうに唇を噛み締めて苛立ちを持て余していた


その気持ちもわからないでもない
今感じている不安や恐怖はどこにあたればいいのか分からないから

真人の場合人にあたるのだけは避けていたのだろう

だから物にあたってしまったに違いない


そんな二人を見ていた可誉は何を思ったのか真人に思い切りビンタをした

「いってー!何すんだよ猪可誉!」


何だよ!いきなりビンタすんなっつーの!
いてーマジで殴りやがったな


「お前一人で突っ走んなよな!いい迷惑なんだよ」


可誉は再びビンタをしようと手を上げたが真人がとっさにそれを掴んで止めた


「あっぶね!んな布団みたく叩くなって」


「煩い!お前なんか布団以下だ!」


「何だとー!布団叩き可誉が!」


「あーーのーー!」


口喧嘩を始めると途中で冬心が割り込んできた

げっ!ヤバい再び毒舌攻撃を食らうぞ!


真人と可誉はやはり同じ考えらしく黙り込み冬心を見た




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あきゅろす。
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