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ira-憤怒-
エリオ
「イーラ…憤怒(ふんど)、対応する悪魔はサタン」

ベルトランが家に帰ると
そこはもう悲劇が起きた後だった
大事な家族は殺されていた

ベルトラン
「一体何が…起きたの?」

現実を受け入れられず
血まみれの床や家族を見て吐き気がした

ベルトラン
「そうだ!あの子の所へ行こう」

頼りになる友人宅へ行っても
同じ光景がそこにあった

ベルトラン
「そっそんな…どうして?もう嫌だ!
誰がこんな事を!!」

大事な人を同時に亡くし
どうしもうもなく芽生えた感情
憎しみ、怒り
いつしか彼はその感情に支配されるようになった

ira-憤怒-

ベルトランM
「僕の大切な人たちを殺した人が憎い
同じ目に絶対に合わせてやる!
体を引き裂かれ肉片と化せばいい!」

その思念は相手への復讐と殺戮しかもう
浮かぶことはなかった

ベルトランM
「周りにいる人間が信用出来ない
誰だ?誰が僕の大切な人を殺したんだ?
あいつか?あの目が据わっている奴
目つきがヤバいな…殺してしまおうか」

町に出ると全てが敵に見えた
一人一人を見つめ
殺戮方法を思い浮かべる

ベルトランM
「あいつはバラバラに
あいつは物が落ちてきて
あいつは車に轢かれ
死ねばいい」

そんな妄想をしていると
ベルトランから黒い霧が出てくる
その霧が町全体に広がり
気付いたら彼が先ほど想像した通りの
現実が起きていた

ベルトラン
「こっこれは!!どうして僕が想像した事が
現実に起こるんだ!」

ベルトランM
「もしや僕の現実に同情した何かが
僕に力をくれたのか?
それなら僕はこの力で…
犯人を殺してやる!!」

何もかもを失い
無差別に危ないと判断した人間を殺していく
その内誰が危ないのか危なくないのか
判断がつかず
力の虜になり殺人を楽しむようになった

ベルトラン
「ハハハハ!!さぁ、お前は誰が憎い?
僕が殺してあげるよ
憎い人間はいらないから!!」

町行く女性や子供、老人に声をかけ
無視されれば殺し気味悪がられても殺し
男は無差別に殺した

そうしてだんだんと町から人がいなくなっていく

ベルトラン
「ねぇ…君は誰が憎い?」

エリオ
「そんな者はいない
強いて言うなら僕の力を存分に使っているお前だ!!」

エリオ達は彼の存在に気付き
直に町に向かう
着くなりベルトランに話しかけられ
眉を寄せる

ベルトラン
「クククっ知らない奴に憎まれる筋合いは無いね
僕に逆らう者や憎む者は死ねばいい!
お前などバラバラになって死んでしまえばいい!!」

ミカエル
「これが…憤怒の力か…何て恐ろしい
油断すると傷がつく!」

クレメンティーナ
「私の結界でもすぐに限界が来ます
エリオ!早めに取り込んでください!」

エリオ
「わかっている!!
くっ…にしても強大だ…
一体彼の身に何が起きと言うんだ!」

彼の力に圧倒され動けずにいると
キャロラインが不意に姿を現す

キャロライン
「彼は強いわねぇ
清らかな奴なんて木端微塵よ★
さぁもっともっと憎んで怒り狂えばいいわ
彼らが貴方の大切な人を殺したんだから!!」

ベルトラン
「お前が…!!お前たちが殺したのか!!
僕の家族を!友人を!!
あんなに生活に困って弱った人間を
何故無残に殺せる!!
憎い憎い!!お前たちが憎い!!
うぁあああああああああぁ」

狂ったように叫び
霧が更に立ち込めエリオ達を襲う
エリオは少し傷付き血が地面に落ちる

エリオ
「ぐっ!う…」

クレメンティーナ
「エリオ!!傷が…大丈夫ですか?」

ミカエル
「クレメンティーナ!近づくな
アレはお前の力だけでは耐え切れない!
傷付くだけだ」

クレメンティーナ
「ですが!!」

ミカエルがクレメンティーナを
押さえつけている間にも
エリオは傷ついていき
どんどん血は流れていく

キャロライン
「いいわぁ…もっとやっちゃいなさいよ!
貴方の大切な人の結末のように
ズタズタにするといいわ★」

アーリマン
「ようやくこの時が来たか
大魔王エリオも憤怒には勝てなかった
そういう事じゃな」

エリオ
「ごほっ…ぐっ
…憎しみの力は
侮れない…な」

体中傷付き膝を落とし、今にも倒れそうになるエリオ
ふと走馬灯のように初めて恋をした少女の声がした。

チェリア
「エリオ」

エリオ
「…?!」

始めは幻聴かと疑った。けれど自分の中にある嫉妬の力が明らかに強まり訴えたのだ。

チェリア
「キャロライン…やっぱり貴方なんか嫌い!
エリオを傷つけていいのも…私だけなんだから!!」

エリオから膨大な嫉妬の力が発動し
周りから沢山のナイフが現われる
そしてそれによりベルトラン達は傷つき
力が弱まった

ベルトラン
「ぐわぁぁぁ!!何だこれは!
お前は…誰だ?」

エリオ
「チェリア…チェリア…お前は死しても尚
僕の元に居たのか…本当に嫉妬深い女だ…
だけどそんなお前が、好きだ
ありがとう…チェリア…忘れていた
僕にはもう沢山の大罪の力があると言う事を」

クレメンティーナ
「エリオ!傷を回復いたします!」

ミカエル
「清浄なる力よ!罪の傷を癒したまえ!」

ミカエルの天使の羽根がエリオを包み
クレメンティーナが呪文を唱え傷が癒えていく

チェリア
「(優しく微笑む)」

後ろから抱きしめる暖かい魂の手を
そっと握り返しエリオも微笑むと
禁断の呪文を唱え始める
それは一人では気付けなかった
例え大魔王でも、心はあるのだ

キャロライン
「これは!!危険だわ!退避するわよ」

アーリマン
「完全じゃないとはいえ
あなどれん大罪の力じゃ」

二人は退散したのと同時に
エリオは呪文を唱え終え魔法を発動する

エリオ
「傲慢・色欲・怠惰・強欲・嫉妬・暴食・憤怒
我に従え我に示せ!
人の中に眠りし力よ!
発動せよ!七つの大罪よ!!」

ベルトランの中にある憤怒の力をも吸収し
大罪の力が光となりエリオの元へ集まる
そしてそれが散った時
全ては光に包まれ時は止まる

エリオ
「お前は…大切な人を殺されたのだな
僕はその犯人を知っている
だが、お前は犯人を殺した所で救われなど
しないだろう
僕はもう自分の力を取り戻したから
人の世界から去るが
何か言い残す事はないか?」

ベルトラン
「僕は…沢山の人を殺した
きっと地獄へ堕ちるだろう
今、生きている間に出来る事は
殺してしまった
人達の安らかな眠りを祈るだけなんだ」

クレメンティーナ
「怒りで我を忘れるとは本当に怖く
強大な力でしたね
憎しみ程、大きな力はありません
この先は一生悔やみ懺悔を繰り返し生きて
行く事が貴方に許された時間だと思います」

ミカエル
「まぁ人を殺しすぎた人間はろくな人生を
送る事はないだろうな
最終的には人でも無くなるから怖いものだ」

エリオ
「大切な人はお前の復讐を果たして望んだだろうか?
お前の手が汚れる事を望む人物だったろうか?
後悔し懺悔しても許されないだろう
お前のしてきた事は憎しみを連鎖させる行いだったの
だから」

ベルトラン
「なら、僕の魂を使って殺してしまった人達を
蘇らせてくれないだろうか?」

エリオ
「それは出来ない
その役割は他にいるからな
憤怒の力に惑わされた哀れな人間よ
お前はその結末を後悔しながら待っているといい」

そして三人は地上から去っていく
懺悔を繰り返すベルトランを残して

ベルトラン
「ごめんなさい…」

ベルトランM
「何度目かの懺悔を口にした時
「もういいよ」と何処かで聞こえた気がした」



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あきゅろす。
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