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Avaritia-強欲-
アーリマン
「アヴァリティア…強欲、対応する悪魔はマモン」

ジルベルトM
「私の欲しいものは全て手に入った
手に入らない物はないと思っていた
だが手に入らない物は無限にあった
そう、王子の身分である私でも
手に入らない物は無限にある」

Avaritia-強欲-

彼はある国の王子
自室で休んでいるとそこにある
はずの剣が無くなっていた

ジルベルト
「誰か、いないか?私の剣がないのだが」

扉を開け召使を呼ぶ
間もなく剣を持ったメイドが姿を現した

メイド
「お待たせいたしました
他のメイドが掃除をしていました所
危ないので場所を移動させておりました」

ジルベルト
「そうか…ご苦労」

剣を手に取ろうとした時
手を滑らせその剣はメイドを貫いてしまった

メイド
「あっ!」

メイドが避ける間もなく剣はメイドの命を奪う
彼の目の前で

ジルベルト
「何ということだ!!誰か!このメイドを運んで
くれ!」

目の前で命が失われるのを見たジルベルトは
少し動揺しながら他の者を呼ぶ
かけつけた執事がメイドを運び他の者はその場を
綺麗に清掃していく

呆然と眺めていたジルベルト
先ほどまで笑顔でいたメイドの姿が頭を過る

ジルベルトM
「私が手に入らないもの
それは永遠の命だ
こうも目の前で失われるのを見てしまうとやるせない
実感する
人はたやすく死ぬのだと」

数日が経つとそのメイドの墓が出来
ジルベルトはそこに花を手向ける

ジルベルト
「私にもっと力があれば
人の命などたやすく操れる力があれば…」

ジルベルトM
「別に死が怖くないという訳ではない
誰だって怖いものだ
私はそれだけは欲しいとは思わなかった
私が永遠に生きれば
この国はより繁栄していくのだろうか?」

心を迷わせていると
そこにいきなり見知らぬ少女が現われた

キャロライン
「クスクス、何を迷っているのかしら?王子様?」

驚く素振りも見せず彼女に答えていく

ジルベルト
「なに、人が一生手に入らない事で悩んでいるのさ」

キャロライン
「私は黒魔女よ♪
人知を超えた知識だってあるわ
貴方が悩んでいる事のアドバイスくらいは出来るわよん★」

ジルベルト
「では…人は永遠の命を手に入れる事は出来るのか?
私は手に入らない物は早々になかったぞ?」

キャロライン
「クスクス…簡単な事ね
魔王の心臓を食らえばそれくらいたやすいわ
永遠の命なんてすぐ手に入るわ
それ以上のモノも得られるでしょうね」

ジルベルト
「それは本当か?
…そうか、私に手に入らない物は無い
という事か
クククク!!では魔女よ
その魔王とやらを連れてきてもらおうか」

キャロライン
「お安い御用よ★
放っておいてもその内来るわ♪」

ジルベルト
「それは楽しみだ
その間に兵士なども用意させておこう」

国の兵士を集め準備万端で
彼はエリオを待つ
思念はどんどんと色々な物を欲していた

ジルベルトM
「金もある自由な身分もある時間もある
国民を好きに出来る
後は永遠の命だけだ
それさえ手に入れば私の欲しいものは全て
手に入る
そうしたらどうしようか
この国だけではなく他の国も支配し
全てを我が手にしてしまおうか…」

邪悪な笑みを浮かべると彼から黒い霧が発生し
周りの兵士たちはざわつき始める
それを見たキャロライン達は楽しそうに笑い

キャロライン
「クスクス…強欲の力が強まっていくわ
この調子だともうすぐエリオも来るわね」

アーリマン
「今の内にあやつに力を分けてやったほうがいいか?」

キャロライン
「私達の力に耐えきれるかしら?
それも面白そうね★
やっちゃいましょう!」

二人はジルベルトに邪悪な力を分け与える
するといきなり彼は持っていた剣で兵士達を傷つけ
始めた

ジルベルト
「アーッハッハッハ!!
お前らの命も私のモノだ
お前らの時間も全て!!全てが私のモノだぁぁぁぁ!!」

狂ったように笑い
周りを傷つけていく
止めようとする兵士はキャロライン達が邪魔をし
阻止されてしまう

アーリマン
「無駄な事よ…のうジルベルト
人は容易く死ぬのう
お主も同じなのだぞ?
早く魔王の心臓を食らいたいか?」

ジルベルト
「あぁ!食らいたいさ!!
さぁ!魔王よ出て来い
早くしないと折角用意した兵士達が居なくなって
しまうじゃないか!」

彼が叫ぶと同時に
力の気配を感じ取ったエリオ達が現われる

エリオ
「望み通り来てやったぞ
まぁお前などに易々とこの心臓は渡して
やらないがな」

クレメンティーナ
「彼の者達を眠りへといざなえ
スリープ!!」

ミカエル
「空気が穢れているな
主(しゅ)よ!我に清浄なる空気を与えよ!」

キャロライン
「くっさせないわよ!!
空気よ凍れ!コールド!」

アーリマン
「行け我が産んだ悪魔共
あやつを足止めするのじゃ!」

周りが戦闘を始めると
余りの騒がしさにジルベルトは一瞬固まる
だが状況を理解したのか
強欲の力でそれすらも取り込んでしまう

ジルベルト
「お前らの力も私のモノだ!
ああ心地いい力だ
これが魔力というモノなのか…
もっと早く手にしていたかったなぁ」

ニタリと笑い
エリオに切っ先を向ける

エリオ
「お前では僕を殺す事など出来ない
その力は元々僕のモノだ
扱い方など手に取るように分かる」

動じずエリオは呪文を唱え始める

エリオ
「アヴァリティア…強欲よ!!そんなに僕が
欲しいか?ならば還ってこい!
我の元へ戻れ!強欲の力よ!!」

力がどんどんとエリオの元へ還る
全て取り込んだ時には
呆然と立ちすくんでいるジルベルトがいた

ジルベルト
「わ…たしは…一体…」

エリオ
「ようやく正気を取り戻したか
全く…お前はそこまで欲深く欲せずとも
手に入る身分だろう?
この世には手にしたくても手に入らないものが
沢山ある、以前のお前はこの事に気付いていただろう?」

ジルベルト
「あぁ…私は過ちを犯してしまったのだな
一国の王子である私が自分の欲の為に
民を傷つけてしまうとは
なんと愚かしい事なのだろう」

クレメンティーナ
「彼は元から正義感が強いのですね
真面目な方なのに欲の力に屈してしまった
という事でしょうか」

ミカエル
「愚かしい事だ
人の心というモノは惑わされやすい
真面目な人ほど、素直だからな
惑わされやすいんだ」

エリオ
「ジルベルト、悔やむのならお前は行動しろ
その力を持っているはずだ
人を束ねるという力を」

ジルベルト
「あぁ…もちろんだ
私はただ…死が怖かった
逃避するように求めてしまった
その気持ちは誰しもが持っている
より理解した私なら
民に贖罪しながらより国に尽くしていけるだろう」

クレメンティーナ
「もう大丈夫そうですね
キャロライン達もいつの間にいなくなって
いますし…次の力を取り戻しに行きましょう」

ミカエル
「逃げ足だけは早いな…どこまで邪魔をして
くることやら」

エリオ
「蹴散らすだけだ
僕は僕の力を取り戻すまで
…ジルベルト達者でな」

エリオ達は去ろうとした
だがふとエリオは足を止め振り返り
意地悪な笑みを浮かべ最後に一言

エリオ
「永遠の命が手に入らなくて残念だったなジルベルト」

ジルベルト
「あぁ、その事か
そのようなモノ、元々ないものだろう
ならば必要ない
私に必要なのは今生きるこの命なのだから」

その言葉を聞いてエリオは不敵に笑い
その場を去って行った



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