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Acedia-怠惰-
クラーラ
「アセーディア…怠惰、対応する悪魔はベルフェゴール」

一人の少女が自室のベットで横になり
思いにふける

クラーラM
「私はどうしてこの世に産まれてきたのだろう
何も感じる事が出来ない
生きて行くのがめんどくさい」

呼吸を忘れるかのようにクラーラは眠りにつく
すると光が彼女の中に入って行く

クラーラM
「あたたかい…私の中に入って行く
これはなに?この気持ちは…」

眠りから覚めた少女はゆっくりと笑う
思いがどんどん膨らみそれは実行するという
能力にまで達した

クラーラ
「あぁ…ようやく分かった
私が産まれた理由
この気持ちを伝える為に生まれたのね」

痩せ細った体で歩く
この世界に“怠惰”を伝える為に

Acedia-怠惰-

エリオ
「ここら辺で力を感じる
近くに居そうだな
僕の力を手に入れた人間が」

クレメンティーナ
「この邪悪な気配はそうですね
この町全体を包んでいます」

ミカエル
「早々に取り戻さなければな
人間にはその力は扱い切れないだろう」

エリオ
「どうだろうな
才能ある人間なら扱い切れると思うぞ
もともと僕の力は人間が持っていた
“欲”なのだから」

ミカエル
「フっ…神はそれを罪だと主張した…か」

クレメンティーナ
「神にもそれぞれ役割があり色々な方が居ます
それにゆっくりお話ししている暇はないのでは?」

エリオ
「そうだな、早速この町を探索しなければ
奥に行くほど気配が強まるな…」

町は恐ろしいほど静寂していた
人が生きているのかも分からない程

クレメンティーナ
「静かすぎますね
人の気配もしない」

エリオ
「正確には生の気配がしない…」

ミカエル
「まさか、この町の住人が全て死んでいる
なんてことないよな?」

クレメンティーナ
「ありえますね」

緊張感が高まる中
ふと緩やかで優しい歌声が聞こえてくる

ミカエル
「この歌声…危険だな」

エリオ
「これは…怠惰か!」

クレメンティーナ
「人が…こんなにも死んでいます…
あぁ、可哀想に…本来なら普通に生きていたものを…」

屍が奥に進むほど増えていき
気分を悪くさせる
だが皆眠っているように死んでいるのだ
安らかに、とても安らかに

エリオ
「僕の力をこんなにも使いこなすとは
どんな子だ?この歌声も心地がいいな」

ミカエル
「人は惑わされるな
誰しも持つ気持ちなのだから」

クレメンティーナ
「怠惰は心地がいいのですね
ですが気力を奪われる感じです」

エリオ
「甘く見ていると痛い目に合うからな
僕も怠惰には油断しないようにしている
気付くと眠っているのだから」

ミカエル
「それでよく部下の悪魔に起こされたりしていたな
お前も大変だな」

エリオ
「その大変な力を人が持っているのだし
更に取り込んで発揮しているのだから
怖いよ…本当に人間は」

三人が歩いていると
屍が密集している場所に
一人の少女が歌っていた
体は痩せ細り青白い肌で裸足で屍の上に立ち
ただただ狂ったかのように歌う

クラーラ
「さぁ、永久に眠りなさい
何もしなくていいの
苦しい事も悲しい事も辛い事も忘れて
生きる事も億劫なこの世界の秩序を守る為にも
永久に眠りなさい」

歌声は町中に響き世界に広がっていく
恐れたエリオは武器を出しクレメンティーナに告げる

エリオ
「クレメンティーナ!結界を
ミカエル、清浄な力を溜めていてくれ」

クレメンティーナ
「さぁさ白き清らかなる力よ
彼の者達を包み守りたまえ」

ミカエル
「これ以上はその邪な力
世界に満ちさせたりはしない!
清まれ!怠惰の力よ」

クラーラの周りに清浄な結界がしかれ
力も広まる事はなくなる
だが発動し続ける力にエリオは眉をひそめた

エリオ
「どうしてそこまで力を発する
お前にとって善になるのか?」

クラーラ
「私はこの気持ちを伝えるだけ
この思いを伝えるだけ」

クレメンティーナ
「何故そこまでする必要があるのです!
このままでは…貴方は…」

悲痛に叫んでいると
クラーラの側にキャロライン達が表れる

キャロライン
「まぁったく楽しいわね
ここまで怠惰の力がある子だとは思わなかったわ」

アーリマン
「この娘はもともと怠惰の力を宿していた
それだけをただこの世界に出しているだけじゃ」

キャロライン
「こーんな結界なんてすぐに破れるわ!
さぁ、クラーラ
貴方の思いこの世界に伝えちゃいなさいよ
このままだと伝わらないで終わってしまうわよ★」

クラーラ
「い…や…」

キャロラインが杖をかざすと
クラーラから光があふれだし結界を壊していく
たちまち世界に怠惰の力が広まる
先ほどのよりも強く

クラーラ
「私は…ただ何もしたくないの!
何もかもが嫌!嫌なの!!」

彼女が叫ぶと更に力があふれ出す
エリオはただその想いを静かに見つめていた

エリオ
「そんなに今まで生きて行くのがつらかったのか
気力を奪われ、怠惰していく
そんな生活だったのだな
お前の周りがいくら心配をしていても
それは届かなかったのだな」

エリオは発せられる力を取り込んでいく
するとクラーラの思念が囁きかける

クラーラM
「私は…死にたかったの
でも死ぬことさえ…億劫になったわ
周りからは理解されず
孤独の中ベットのなかで静かに死んでいくものだと
思っていたの
何もせずにただじっと死を待っていたの」

エリオ
「お前は怠惰しすぎて周りが見えていなかったんだ
どれ程お前は愛されていたのかを」

クラーラ
「あい…されて?」

キャロライン
「クラーラ!惑わされては駄目よ!貴方は
自分の中にある思いをぶつけなさい!この世界に」

アーリマン
「そうじゃそうじゃ!溜め込む事はない
力に身をゆだねるのじゃ!」

クラーラ
「わたし…は……
さぁ…この世界よ…もう疲れたでしょう
眠りなさい…永遠に」

ミカエル
「先ほどとは比じゃないな
結界を強めるぞクレメンティーナ」

クレメンティーナ
「はい!エリオ!何をぼーっとしているのです?
力を貸してください」

エリオ
「聞こえるんだ…彼女の悲嘆な声が」

力を取り込みながらクラーラに近づいていくエリオ
それを邪魔するようにキャロラインがエリオに魔法を
発動する

キャロライン
「近寄らないで!青き炎よ!彼の者を焼き尽くし
ちゃいなさい☆」

青き炎がエリオに襲いかかるが
エリオは無視をし進み続ける

エリオ
「怠惰の力よ
その魔法を無かったことにするんだ」

エリオが囁くと炎は消える
キャロラインが驚きに後ずさりアーリマンが
受け止める

アーリマン
「魔王は力を取り戻しつつある
ちと不利な状況じゃ
どうする?」

キャロライン
「あの子が怠惰をもっともっと発動させれば
いいだけのことよ★
人がどんどん居なくなれば魔王だって力を
失くしていくわ」

エリオ
「クラーラ!!」

力を発動させ続けているクラーラにエリオは叫び
渾身の力で抱きしめた

クラーラ
「!!」

クレメンティーナ
「エリオ!危険です!離れてください」

ミカエル
「いくら力のあるお前でも無理はするな
魔王よ」

ミカエルが護衛の術をエリオにかける
エリオから暖かな光が発せられ
クラーラごと包む

エリオ
「もういい…疲れたろう
お前の中にある怠惰の気持ち
もう伝えなくてもいい
もういいんだ」

クラーラ
「…わ…たしは…もともと死にゆくただの
人間よ」

目を閉じると
そこにはまだ元気だった自分の姿
周りの笑顔
明るい陽射しの中走って行く自分
向かえてくれる友達
暖かな…人の温もり

クラーラM
「この気持ち…いつ忘れてしまったのだろう
社会に出て数年が経った頃かしら…
私はただ…あの頃の様に
何も考えずに感じるまま生きて行きたかった
それだけだったのかもしれない」

エリオ
「もうこの屑のような世界に思いをはせたりなど
しなくてもいい
さぁもう休め
何もかもを忘れて」

エリオが更にクラーラを抱きしめると
かすかだが背中に温もりが
クラーラが抱きしめかえしていたのだ

クラーラ
「安らかな気持ちをありがとう
魔王さん…」 

そうしてエリオの腕の中で
少女は目を閉じた
すると最後といわんばかりに怠惰の力があふれ
エリオの中へと還る

エリオは無言で少女を抱きしめ
抱えてクレメンティーナの元へと帰ってきた

クレメンティーナ
「人は本当に生が短いですね
どうか、この少女に安らかな眠りが続く事を…」

キャロライン
「今回はまだ力の弱い怠惰だったから
失敗したのよ…次はそうはいかないんだから!」

アーリマン
「退散だな
次も易々と力は取り戻させないぞ、魔王よ」

二人は風の様に消え
四人は静寂な町に取り残された

エリオ
「…あまり、僕を怒らせないでくれよ
二人とも…」

悲しみに目を閉じていたエリオだが
ミカエルに肩をそっと叩かれ目を開ける
そこには安らかに寝息を立てている
クラーラが腕の中にいた

ミカエル
「易々と死なせん
この娘は罪を犯した
償ってもらわないとな」

エリオ
「大天使ミカエルは気まぐれだな
そんな所も嫌いじゃない
さぁこの子は保護でもして
次に行こうか
二人とも」

怠惰の力を取り戻し
次に向かう

報酬は少女の安らかな寝顔


エリオ
「次に目覚める時には
幸あらんことを…クラーラ」



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