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夢物語
アリサ
「おはよう!みんな」


キヨハル語り
「今日も彼女は教室に入ると、元気に挨拶をする。
俺はいつも通り挨拶を返した。」


キヨハル
「おはようアリサ」


キヨハル語り
「今日もいつもと変わらない日常を送ることになるだろう。
そう思いながら誰しも生きている」


アリサ語り
「大丈夫、まだ私は頑張れる」


キヨハル語り
「アリサはクラスで一番元気があり親しまれている存在
いつも笑顔で友達も多く、彼女を嫌う人物は居ない
俺はキヨハル、転校して来てまだ日も浅い
この学校に慣れていないせいか場に慣れる事に必死で
口数も自然と少なくなっていた
だが何故か周りには常に人がいるような気がする。」


アリサ
「キヨハル、この学校に少しは馴染めたかな?
いつまでも無愛想だと石像になっちゃうぞ」


キヨハル
「少しは馴染めた、アリサがムードメーカーだからな
嫌でも慣れてくる」


アリサ
「あっヒドイなぁ〜私はキヨハルが早く馴染めるように
努力してるのに!」


キヨハル
「俺は頼んだ覚えはない
アリサも少しは落ち着いて休む時間作れよ
いつも誰かと話してるよな」


アリサ
「私はおしゃべりが好きなの!
心配無用!ちゃんとお家で休んでるから大丈夫よ」


キヨハル
「なら、その不健康な顔色と体重なんとかしろ」


アリサ
「………(呆然とする)」

キヨハル語り
「前から気になっていたことをハッキリと口にすると
アリサはポカンと口を開けたまま呆然と俺を
見つめてくるのだった」


アリサ
「ありがとう…でも大丈夫だから」


キヨハル語り
「これが彼女の口グゼのような気がした
いつも会う度に聞いている気がする。」


アリサ
「じゃ、授業始まるからまたね」


キヨハル語り
「手を振り彼女は席に着く
しばらくすると授業が始まった
……が眠くてたまらない
俺は欲望にまかせ、居眠りすることにした。

そう、これから見る夢が
俺とアリサのはじまり。」


OP曲「unsound #α


キヨハル
「…ん?あれ?」


キヨハル語り
「俺は確かに授業中居眠りをしたはずだった
けれど俺は今、何で知らない家にいるんだ?」


アリサ
「…キヨハル」


キヨハル語り
「名を呼ばれ振り返るとそこには俺の知らないアリサがいた
笑顔もなく、白い肌には痣が沢山あり
瞳は暗く、痛々しい彼女がいた」


キヨハル
「アリサ…お前、どうしたんだよ」


キヨハル語り
「アリサの腕を掴む 俺のいきなりの行動に
アリサは驚いた表情をし、か弱い力で振りほどいた。」


アリサ
「違う…貴方は“ここ”のキヨハルじゃない
本物?どうしてここにいるのよ
出てって!ここはお前のいる場所じゃないんだ!」


キヨハル語り
「声を荒げ全身で俺を拒絶するアリサ
クラスで見た彼女の面影は一切ない。」


キヨハル
「アリサ落ち着け、何で俺を拒絶するんだ」


アリサ
「ここは私の唯一の…癒しの場所なんだ
ここでは誰も私を傷つける者はいない!
必要ないんだ!」


キヨハル語り
「ワナワナと震え始める彼女を見て
何に怯えているのかと考える
もしかしたら俺の存在が
今の彼女を怯えさせているのか?」


キヨハル
「おいアリサここは何だ?夢か?夢なら嫌な夢だな
いきなりお前に出てけと言われたり
拒絶されたり、訳がわからない」


キヨハル語り
「ハッとしたアリサ
そうか、アリサも混乱していたのか」


アリサ
「ここは私の夢よ、キヨハル」


キヨハル語り
「震えがおさまり、静かにアリサは語り始めた。」


アリサ
「ここじゃなきゃ、私が心休まる場所はないのよ」


キヨハル
「という事はお前も居眠りしてるのかよ
アイツの授業退屈だもんな
何言ってるのかわからないし」


アリサ
「そうね、昨日はろくに寝てないのよ
わかったなら出てってもらうわ」


キヨハル
「出てくも何も、どうすればいいのかわからないな
それに俺はお前を傷つけるとかしない」


アリサ
「あっ…嘘よ…いらない、そんなもの
そんなのじゃ私を癒せない」


キヨハル語り
「アリサは両手で顔を隠してしまう
傷だらけの彼女の腕は心の傷だと胸が痛くなった。」

キヨハル
「それ、一生懸命隠してたのか?
だから学校では明るくふるまっていたのか?
それでお前は辛くないのか?」


アリサ
「辛いわよ…でもせめて学校では楽しく過ごしていたい
けど…心が持たない
だから!ここだけが私の救いなのよ!」


キヨハル語り
「そう言うと彼女の周りに人が集まりだす
彼女をいたわり優しく抱きしめ
一生懸命彼女を癒し始める」


アリサ
「ここでは誰も私を傷つける者はいない
だから…今のキヨハルはいらない!!」


キヨハル語り
「普段の彼女から想像出来ない言葉を聞いた
一体彼女に何があったんだろう
そんなことを考えてると
気付いたら俺は
眠りから目覚めていた」


キヨハル
「…夢、だよな
気にしなくてもいいよな」

キヨハル語り
「だけどあのアリサを見て
胸がザワザワとする
まだアリサは眠ったままだ
青白く痩せ細った彼女
このままだと大変なことになるんじゃないかと
不安が胸を支配する


そしてその不安は的中してしまった
アリサはあれから目を覚ますことなく
入院生活をし始めた。

そんな中でも俺は
夢の中で何度も彼女に会う
何度も、何度も、

そして…
   俺の中の彼女が徐々に消えて行く」


アリサ
「何でキヨハルだけ私の夢の中に入ってこれるのか
ある人に聞いてみたの」


アリサ語り
「それは、私が現実に疲れ眠っていた頃
その夢の中に夢魔が現れた」


暗夜
「こんばんは、お譲さん
現実に疲れたのかい?」


アリサ
「ええ…とても…
苦しいの…」


暗夜
「なら、君が望む夢を想ってごらん?
僕が作ってあげるよ」


アリサ
「なら…私を誰も傷つけない夢がいい
安らかな幸せな時間が欲しいの」


暗夜
「了解した
今日から君は、君の世界で生きるんだ」


アリサ語り
「そうして私の夢は始まった
優しい私だけの夢が
やっと心から笑える時間が出来て
心身共に癒されたのに

キヨハルが私の夢の中に来てしまった
だから私は夢魔にそのことを質問したわ」


アリサ
「私の夢に現実のキヨハルが来てしまったの
一体どういうことなの?」

暗夜
「ふぅん、こういうケースは初めてだ
どうやら彼と君の波長が偶然一致してしまったようだね
だから容易く介入されてしまったんだよ
…君が望まなくてもね」


アリサ
「そうなの…どうにか追い出す事は出来ないの?」


暗夜
「彼の意思次第だね
それは彼しか決められない事だ
僕の力ではどうすることも出来ない」


アリサ
「キヨハル、どうして私の夢の中に
介入してくるの?
放っておいてほしいのに」

暗夜
「そんなに嫌だったら彼を説得するしかないね
君の世界を守る為にも…」

アリサ語り
「そうして今の時に戻る」


キヨハル
「ふーん、あ、傷治ってるし太ったな、アリサ」


アリサ
「ちょっと話そらさないで、それで聞いてみた結果は
私と貴方は、夢の波長が合うんですって」


キヨハル
「へぇ、じゃあ俺はアリサにとって特別になれるんだな」


アリサ
「なれればいいわね」


キヨハル
「それより、何でアリサは夢の中に閉じ籠ってるんだ?
クラスの皆が心配してる、学校では楽しいじゃないか」


アリサ
「そう…キヨハルには
そう見えていたの…
私は家も家族も嫌なの
辛いだけの現実なんていらないわ」


キヨハル語り
「そう話すとアリサの周りが暗くなる
まるでアリサの心の色のようだ」


アリサ
「知りたい?後悔するわ
見ていて気持ち悪いだけだもの」


キヨハル語り
「そして彼女の現実が再現された
彼女が親から受け続けた性的虐待
お前などどうでもいい、と見離れた言葉の暴力の数々
その現実の積み重ねが彼女を苦しみに染めた。」


アリサ
「ここでは辛いこともない
それだけでも安心できる
あの家族も、地獄の様な日々も…」


キヨハル語り
「そう言い安らかに笑う彼女を見て俺は…

彼女の今の現実を伝えることが出来なかった
医師から残酷な話を聞いて
彼女の生死に係わる事だったのに
今の彼女を見てしまっただけで俺は…


あぁ、今、幸せなんだな アリサ」


アリサ
「ありがとう、他人に話せて少しはスッキリしたわ」

キヨハル語り
「青空の下、彼女は立ち上がり背伸びをする
ここでは彼女は自由だ
辛いことも傷つくこともない」


キヨハル
「目が覚めても辛い現実しかないなら…」


キヨハル語り
「俺は目を覚ました
彼女のベットの傍らで


俺は…幸せそうに眠る彼女を見送った
   そして…彼女の心電図は

一線を引く………。」



ED曲「unsound #β


fin

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