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星屑を纏う聖者
千鶴語り
「綺麗なままでいたかったから…」


語り
「産まれ持つ力とは何て
残酷なものか…
人はなぜ
綺麗なものを汚さずには
いられないのか」


ミチェ
「泣いてる…
悲しい魂…
ねぇ魔鬼、彼はどんな人なの?」


語り
「ようやくミチェの前に姿を表した魔鬼は淡々と答えた」


魔鬼
「彼は星屑を纏う聖者
千鶴(ちずる)だ
星の聖なる力を生まれつき持ち、夢の中で人々を救ってきた」


ミチェ
「凄く綺麗…」


魔鬼
「彼は両性だからな
だが男として生きていたみたいだ」


ミチェ
「じゃあ何で、星屑の水晶の中で閉じ籠っているの?」


魔鬼
「身と精神を守るためだ」

語り
「魔鬼が説明をしている途中にどこからともなくリチェが姿を表す」


リチェ
「お久しぶり、魔鬼」


魔鬼
「お前か…相変わらずだな…ミチェの運命」


リチェ
「リチェだよ!それに性も男なんだから」


語り
「リチェは魔鬼に近付き
おどけてみせる
余裕そうなリチェに対し
ミチェは気分が悪かった」

ミチェ
「また邪魔をしにきたんでしょう?」


リチェ
「何を当たり前なことを
俺無しではお前の進化は有り得ないのにね」


魔鬼
「余りミチェを怒らせるな、歌でも歌われたいのか?」


リチェ
「フフ…魔鬼はミチェの味方かぁ…残念…」


語り
「リチェはそう言うとゆっくりと水晶の中にいる千鶴と融合していく…」


ミチェ
「あれは誰にも止められないんだね」


魔鬼
「ミチェなら止められる
リチェが暴走する前に止めるんだぞ」


ミチェ
「わかってるよ」


語り
「ミチェは紅い鎌を強く握り締めながら千鶴の様子を伺った
そんな中、千鶴の体内では魂同士でぶつかりあっていた」


千鶴
「誰?…僕の中に入ってくるのは…
誰も、僕を汚す事は許さない」


リチェ
「そんな怖いこと言わないでよ…
でも君の中は居心地がいいね」


千鶴
「僕の中から出ていってください
貴方は…壊すために産まれた存在ですね?
魂で感じますよ」


千鶴語り
「そして何て脆い存在なんでしょう」


語り
「千鶴は眉を潜めて再度、リチェに問い掛けた」


千鶴
「僕はもう汚れたくないんです!
僕はただ綺麗なままでいたかっただけなんです!
どうして周りは放っておいてくれないんですか!」


リチェ
「……それはね、君が美しすぎて
脆いからだよ」


語り
「リチェはさも当たり前のように答える」


リチェ
「君みたいな優しくて
綺麗な魂なら誰だって汚したくなるでしょう?」


千鶴
「そんな…人生は嫌だ!
僕は…何も悪いことはしていない!」


リチェ
「そうだよ…君は何も悪くない
悪いのは周りの全て」


語り
「リチェはそう言うと千鶴に近付き握手を求めた」


千鶴
「なに?」


リチェ
「俺は壊すことしか
奪うことしか知らない
だから君の力が欲しい」


千鶴
「…僕は…」


リチェ
「君がいくら良いことをしていても周りは君を汚すだけ
そんな周りより君を理解しようとしている俺に力を貸した方が断然君は楽になるよ」


語り
「リチェの誘惑は千鶴にとってとても甘いもので…」

千鶴
「…今まで
ずっと独りだったから
救いを求めている人以外は全て敵だと思っていました」


リチェ
「もう独りじゃないよ?
俺はそんな君を必要としているんだから…」


語り
「リチェは素直に感情を表すかのように笑う」


千鶴
「僕は…疲れていたのかもしれません…
星の力を使って人を癒す事に…
汚される事に
そしてこの運命に…」


語り
「千鶴がリチェの手をとろうとした瞬間
千鶴の耳に心地好い歌が聞え始めた」


(歌が入ります)


リチェ
「ちっ!またいい所で邪魔をしてくれるね…ミチェ」

語り
「リチェは歌に聴きいっている千鶴に言う」


リチェ
「千鶴…人がどれだけ愚かなのか教えてあげるよ」


語り
「いきなり暗く笑うリチェに対し千鶴は平静を保ったまま答えた」


千鶴
「人は愚かです
争わずにはいられない
嫉妬と妬みに満ちたこの世界はもう終りなのかもしれません」


リチェ
「平気で人は人を殺すんだ!どうでもいい事を理由にしてね!
優越感を持たなきゃ理性が保てないのさ」


千鶴
「そうですね、
でも…それでも人は生きて行かなきゃいけないんです…それに、平和を願う人も多くいます」


リチェ
「そういう奴らは虚しい死に方しかしないんだよ!
汚いやつらがいい死にかたをするんだ!理不尽なんだよ」


千鶴
「それでも僕は
人を救いたいんです
僕は人を壊すために産まれたのではありませんから」

語り
「千鶴は笑うと周りには星屑が漂い始めた」


リチェ
「!!俺を否定するんだね…仕方ないなぁ」


語り
「更に暗く笑うとリチェの辺りには冷たい狂気が満ち始める」


千鶴
「僕はもう…汚れに負けたくない!」


語り
「千鶴の気持に力を貸すように
ミチェの歌が更に響き始めた」


(歌が入ります)


リチェ
「俺は…まだ消えないよ…消えてたまるかぁぁああ!」


語り
「リチェが死神の力を溢れさせ
千鶴の心と体を侵食し始める」


千鶴
「僕は……どんなに人が汚れていても
その中にある慈悲を信じています…」


語り
「千鶴は侵食が進む中
ただ微笑む」


ミチェ
「貴方にはまだやるべき使命がある
だから僕の元へ…
還って来てよ」


語り
「ミチェは歌い終わると千鶴の魂に語り始めた」


ミチェ
「僕の歌を千鶴に
千鶴の魂は僕の所に還るんだ」


千鶴
「!!…人の声は
綺麗ですね…」


語り
「侵食が終わる前に千鶴は無事ミチェの歌で狩られ
魂は歌により契約を終えた」


リチェ
「…魂はよくても
体は手に入れたよ」


語り
「最後に千鶴の中からリチェの言葉が木霊したのだった」


千鶴語り
「笑え、笑いたまえ
最後まで慈悲を信じた
哀れな魂を
清め、清めたまえ
人の邪悪な魂を
君のその声と
星屑の力で」



ミチェ
「星屑を纏う聖者は
最後まで綺麗だった」




END



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