〜hot chocolate〜
5
―――良かった…。
以前なら、とんでもない目に遭った、と思うところだが、ここ最近の経験から、こんなもんで済んで良かった、と思ってしまう自分が悲しい。
目の前のモノは見ないようにして、手の甲で、口元を拭い、頭の中で帰る算段を始める。
そこに、相田の独り言のような、問い掛けのような声が聞こえた。
「ねぇねぇ、ちーちゃんにはもう、ヤラれ…てない訳ないか」
事実、そうだが、訊かれもしないのは(答えるかどうかは別だ)それはそれで、腹立たしい。とりあえず、否定しよう、そう思っていた祐輔の答えを待たずに、
「ボクにもヤラせて?」
「え…?」
簡単に組み敷かれてしまった。
右手が両手を頭上で纏めて、押さえつけ、空いた左手は慣れた様子で、ネクタイを解き抜き取り、シャツのボタンを外していく。
「ちょっ!ちょっと!」
抵抗しようとした、その時、はだけたシャツの隙間から、左手が滑り込んできた。胸元を撫で回される。
「ぅひゃっ!」
這い回る手に、擽ったさが込み上げる。
「く、擽った…!」
逃れようと、身を捩る。
「う…ひゃ…あはは…」
こんなの、友人達との遊びでの、ジャレ合いか、罰ゲームか。それだって、もう何年もない。擽ったくてたまらない。
「んー、何かショックかも〜」
そう言いつつ、相田の手は止まらない。
「あは…はっ、ヤメ…はははっ…」
笑いが止まらない。
「あ、もしかして、ハジメテ?」
弄る指先が、右側の、何かを中心に動いているのに気付いた。時折、クルリと円を描いて、這う指先は、直接、そこには触れてはこない。
―――な、んだ?
一度、気付いてしまうと、触れられないそこに神経が集中していく。けれど、自分の胸を男の手が這っている様など見たくなくて、視線を下ろせない。
「あはは…は…、は…ふ……んっ…」
擽ったさとは別の、感覚が込み上げ、笑いとは違う何かで息が乱されていく。
―――ア、レ?
触って欲しいようなオカシナ気になってくる。
「…っ……ん…」
「ふふ。勃ってきた」
―――何が…?
そう、訊きかけた時、右胸から、ビリッと、甘い痺れが身体を駆け抜けた。
「は…んっ…!」
何事かと、つい胸元へ視線を向けると、ぷくりと存在を主張している乳首をきゅうっと抓まれていた。
―――ち、乳首?
「ちょっ…!ヤメ―――!」
『止めないと』、何故かわからないが、そう思った―――。
が、強く、けれど痛みに感じる一歩前の、強さで捩られ、また身体中を走った感覚に挙げかけた制止の声は掻き消されてしまった。
「っ…!」
絶妙な力加減で、クリクリと、摘み、捻り上げられていく。
「あ…ふ…」
―――何で?
弄られる度、ビリビリと、電気が走る。
こんなもの、ただ付いてるだけのモノだと思ってたのに。
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