キスして。
特別な日は、特別な人と一緒に。
『キスして。』
2月1日23時50分。
オレの家、オレの部屋。
和さんと二人きりの空間。
明日は特別だから。
そう言ってわざわざ泊まりに来てくれた和さん。
オレは感動しすぎて泣きそうになるのをなんとか抑えて、家族を完全にシャットアウトさせた。
学年末対策の勉強会と称して、他愛もない時間を過ごして今に至る。
「高校に入ってから初めて組んだ時さ、レギュラー全員とバッター勝負したことあっただろ?」
「懐かしいッスねー、ありましたありました!」
そして思い出話。
ベッドでごろごろしながら過去を振り返る。
「頑張ったのに最後の最後でタケに打たれたなぁ」
「あー、アレがあったからもっと練習しなきゃって思いましたね」
「二人で必死に配球考えたりな」
バッテリーとして和さんと組めたことはオレの宝だ。
こうやってその時のことを語れるだけでも嬉しくて、顔がゆるくなってしまう。
鮮明に覚えているあの時は確か、
「そん時に言われたんだぞ、メオト漫才」
「言い出しっぺは慎吾さんでしたよね」
クスクスと笑い合って、本当にそれだけなのに幸せだなぁと思う。
それにしても和さんはどうしてその話を持ちかけたのだろう。
「…っと、」
考えていたら身体が引き寄せられた。
うわっ、目の前に和さんの顔がある。
高鳴る鼓動がばれてしまいそうだ。
「準太」
「…何ですか?」
きっと全身真っ赤になったに違いなかった。
「誕生日おめでとう」
そう言いながらそのまま頬にキスをくれた。
…くっそう、いつ時計確認したんだこの人は!
オレはそんな余裕無かったのに!
「…ぅ、も、和さん、ずるいですよぉ…」
「え、いや、準太?!泣くなって…」
これからだったのに、なんて聞こえたような気もするけど、正直それどころじゃない。
感極まりすぎてもう何が何だか分からない。
好きな人に一番にもらえるおめでとうって、格別だ。
「それでだな…」
溢れる涙を拭っていると、ポケットをごそごそさせている和さんの姿が。
「ぅー、なんですかぁ」
「これ…なんだが」
そうしてぶっきらぼうに手渡されたものを見ると、シンプルで小さな箱。
え。
これって、もしかして…
「開けていいッスか?」
「おぅ」
心臓がバクバクと音を立てているのがよく分かる。
だって、
「これ、指輪…」
「安物だけどな」
うわーうわー!
オレをこれ以上どうしようっていうんだ!
「これでちゃんとしたメオトだな」
「和さん…反則すぎます……」
その左手にはちゃっかりお揃いの指輪が光っていて、してやられたとしか言い様が無かった。
ここまでくると何か報復してやりたい。
だから。
「…じゃあ和さん、付けてください」
「ん?」
「オレの指に和さんが、はめてください…」
「……っおまえ」
にっこり笑ってみると、頭をガシガシと掻きながらもまた身体を引き寄せてくれた。
「顔、赤いですよ〜」
「似たようなもんだろっ」
本当に本当に、オレは幸せ者だ。
特別な日に特別な人から、こんなにも特別なものを貰えて。
自分の指にも存在を主張するリングを確認して、嬉しさに浸る。
あーもう、今日は一日中和さんに甘えてやろう。
なんて思っていたら、
「ホント、おめでとな。生まれてきてくれてありがとう」
誓いのキスな、と茶化される一発をお見舞いされたのは秘密の話。
write》空兎様
(誰よりも、君が。)
空兎様宅の準太誕生日記念のフリー小説です!是非お持ち帰りしたいと掲載許可を戴きましたっ。もう二人で二日を迎える時点で和さんの愛情をビシバシ感じるのですが、指輪まで用意していたなんて素敵過ぎますよ!!「これでちゃんとしたメオトだな」って台詞は溶けましたから(^^)和さんと準太の絆が更に深まったのに感動が止まりません。空兎様、感動が詰まった作品ありがとうございました!
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