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楽しきかな。


「メリークリスマスだよな和己」
「だなあ」
「……………」
「楽しそうで何よりじゃないか」
「…何この状況」




クリスマス。
何故だかジャージで集合という召集を受けて、礼拝終了後に部室に行くとなんとも悲惨な状況だった。
一面、クリームだらけ。
部員も、クリーム塗れ。
なんだ、これ。
「あ、慎吾来たよ裕史」
「お、じゃあ慎吾にも行きますか!」
他の部員に比べて生クリームの汚れが少ない二人がにやっと笑った。
せえの!と言って何かを投げつけた。
え、ちょ。
「ぶふぉお」
思わず避けたら後ろで声があがった。
あ、和己が餌食にあった。
顔面に生クリームを張り付かせて後ろによろめいた和己の顔は生クリームで真っ白だ。
なんで、パイ投げ?
クリスマス関係なくねえ?
「あーちょっと慎吾」
「なんで避けるんだよ馬鹿」
「わあ和さん!?」
「おー…。利央も被害にあったのか?…って」
和己の顔を見た利央がこちらにかけてくる。
一見心配そうだが、その手にはこんもりと生クリームが。
「おま、ちょ、来んな!」
只でさえ狭い部室に大人数だ。
投げるのではなく直接向かってくる体。
避けられる訳がない。
「えい」
「ぐえ」
うわ、なんかべっちょりした感覚が。
うわあ。やな感じ。
「利央ナイスー!」
「だって俺もやられっぱなし嫌ですから!」
ああ、利央もやられたのね。で、どうせなら巻き込んでやろうと思ったわけね。
なんて後輩だ。
「利央てめこら!」
「わああ迅助けて」
「ちょ、利央こっちこないでよ!」
迅を盾にする利央。
焦る迅。
素直な後輩には可哀想かな、とも思ったけれどこの際知ったこっちゃない。
どうせなら巻き込んでやる。
「迅覚悟!」
「え、うわっ」
べしゃりと迅に張り付く生クリーム。
人にやられるのはあれだが、確かに人にやるのは楽しい。
利央、お前の気持ちわかったわ。
「慎吾ひどーい」
後輩にぶつけた俺を山ちゃんが後ろから笑う。
それにきちんと本やんがツッコむ。
「いや、多分山ちゃんだと思うよ一番ひどいの」
「えー、裕史俺を裏切るの?」
「んー、山ちゃん一番最初俺にぶつけたよね?」
「俺の愛だよ。裕史が何事においても一番なの」
「うーん、全然愛を感じないな」
「黙れバカ2人!」
何故だか机に大量に置いてあるパイを手に取り、山ちゃんたちに投げつける
「うわぁい怖い裕史助けてーえ」
「ちょ、ぶっ」
山ちゃんは何の躊躇いもなく本やんの後ろに回り本やんを盾にした。
無論、山ちゃんよりも背の高い本やんにぶつかり、山ちゃんは何の被害もない。
ああ、こいつが被害が少なかったのは部員がこういう目にあっていたのだろうな。
遠い目で悟る。
被害がひどい面子を見ると、利央、タケ、物凄く機嫌の悪いマサヤン。
うわあ、よくマサヤンを盾にしたなお前。
俺は怖すぎて無理だ。
「わー裕史かっこいい」
「………」
「身を呈して守る!いやあ、男だねえ」
「やーまーちゃーんー?」
パイを掴んだ本やんがゆらりと立ち上がる。
うん、見事にクリーム塗れ。
え、ちょ、何でこっちにくるの山ちゃん。
「慎吾助けてぇー」
「やっぱりか!」
お前ってやつは!
折角のクリスマスになんで野郎だけでパイ投げなんだ。
楽しくないわけではないが、片づけを思うと正直めんどくさい。
せめてクリスマスに関係あるものにすれば良かったのに。
そんな思いをよそに、若干1名の悪巧みから野球部員はクリーム塗れになるのだ。
ああ、楽しきかなクリスマス。
楽しそうな悪魔の声を聞きながらそう思った。




「ねえ、誰が片付けんのかなこれ」
「俺は知らねえ」
「バレたら監督怒るよね」
「俺は知らねえ」
「マサヤン機嫌悪…」
「…………」





write》捺崗 響様
(夢篝)

捺崗様宅で配布されてたクリスマスフリー小説です!掲載許可を戴けたので飾らせて頂きました(^^)生クリーム塗れの男子高生というおいしい設定は素晴らしいですね!!もう想像しただけでニヤニヤします。最初は乗り気じゃなくてもぶつける楽しさに気付いたりと賑やかな雰囲気が凄く微笑ましいなって思いました!捺崗様、掲載許可ありがとうございました!



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