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誰かに笑う君を見て


準太は、よく笑う。
和さん、って駆け寄りながら、それはもう可愛く。

聞いてみると、その笑顔はオレといる時ばかり発動するらしくて。
内心すげぇ自慢だったんだ。

だからこそ、その光景はかなりショックだった。


監督と打ち合わせることがあって、みんなより少し遅れて部活に行くときのことだ。
その日、準太のクラスで体育祭の話し合いが放課後にあると事前に聞いていたので、職員室から戻る時にちらりと覗こうと、本当にたまたま思っただけだったのに。
見てしまったのだ。
クラスメイトに向けられる準太の笑顔を。

「……」

話し掛けることは出来なかった。
もやもやと黒い感情が胸の内を占めて、何をしでかすか分からなかったからだ。
ああ、この感情は。

「オレ、格好悪ィ……」


「すんません、委員会で遅れました」

部活に準太が来て、どきりとする。
もやもやが蘇る。
普段は絶対にしないミスすら連発して、練習に身が入らない不安定さの再発に、自分の思いを確信した。
こんなんじゃ、ダメだ。

「…和さん?今日、何かあったんスか」
「あー、準太、ちょっと時間くれ」
「?ハイ…」

集中出来ないなんて、部員に失礼だ。
話を付けよう。
部室に二人。
申し訳ないとは思うが、渦巻く気持ちを吐き出す。

「準太」
「ハイ」
「…クラスではいつもああなのか?」
「へ?」

突拍子のないこと言ってるって分かってる。
だけど気付いてしまった以上はもう、止められなくて。

「どういう…?」
「…お前、クラスメイトにあんな笑顔すんな」
「…えぇ?!」
「っていうのは理不尽なんだけどさ…」

準太が大切すぎて、抱く感情には慣れないものがまだまだある。

「…情けないけど、」

初めてのこの気持ちは、

「嫉妬、したんだ」

目を瞬かせる準太の視線に耐えられなくて、俯く。
すると背中に重みがかかる。
それはいつも通りのぬくもりで、沈んでいた心が救われた気がした。
準太の行動一つで、オレはこんなに落ち着くことが出来るんだな。

「えへへ」
「…んだよ、笑うなよ」

あぁ、なんか落ち着いたら落ち着いたで恥ずかしくなってきた。
畜生、今はこいつの少し抑えた声すら憎い。

「だって和さんが嫉妬してくれたって、なんだか嬉しくて」
「……」
「大丈夫、オレが大好きで仕方ないのは、和さんだけです」

突然の告白にはっとして顔を上げると、いつのまにか準太が目の前に来ていて。
すっかり立ち直ったオレの視野いっぱいには、
あの愛しい笑顔が広がった。









その後

「夫婦喧嘩は終わったの?」
「慎吾…どこまで知ってんだ」
「ていうか喧嘩じゃないですって」
「んーまぁ、一部始終なんとなーく?」
「…みんなには言うなよ」
「はいはい。あ、監督が呼んでたぞ」
「おう」
「んで、準太」
「ハイ」
「和己がいないから言うんだけどさ、あいつ相当お前のこと好きだからな?」
「分かってますよ」
「…頼むぜー」
「うス、じゃあオレも練習戻ります」

「……なんかすげぇ、アテられただけじゃね?オレ…」





write》空兎 海様
(誰よりも、君が。)

空兎様に相互記念として鼻血ものな和準小説を戴きました!!もう和さんが嫉妬だなんて愛がビシバシ感じられてニヤけてしまいます…!準太が笑顔になるのも解りますよ(^^)空兎様、どうもありがとうございました!



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