「お疲れっしたー!!」 こんなに部活が長く感じたのは初めてかもしれない,と思うほど今日は楽しみな事があった。 部活が終わり帰り道、あいつと一緒に並んで手を繋ぎ歩く。 これだけでも俺は毎日嬉しく、楽しみだが、今日は別。 特別なイベント日だ。 どんな風に渡せばいいか? あいつはどんな反応すっかな? また昨日みたいに微笑んでくれっかな? 自分でも驚くような乙女心に少し恥ずかしくなる。 「阿部、帰ろ?」 俺が着替え終わったのを見計らって喋りかけてきたような抜群なタイミング。 ん・・と俺が返事をしたら綺麗な顔で笑いじゃあ行こ♪と言われ俺の手と栄口の手を重ねあってから歩きだす。 …さて,これはどのようなタイミングで渡せばいいのか。 思いきって喋りかけてみるか? つか、方法はそれしかない気が・・・。 いつも俺からこんなサプライズなんてしないから,ぶっちゃけ少し照れくさい。 けれどいつまでも照れていたら渡せないから,俺はかんばって声をかけてみる。 「さ、さかえぐっ・・・!」 「あ、あべ・・・・っ!」 ・・・見事にはもった。 お互い同時に話しかけるとかどんな漫画だよっ とふと思い、ぶはっと俺が噴出すと栄口もあははっと笑い出した。 それからお互い顔を見れば頬を赤くしてまた同時に微笑む、という何とも言えない幸せな気持ちになった。 「阿部。もしかしてこの後の行動も一緒だったりするの,かな…?」 そう栄口に微笑まれ,俺はハッとする。 ・・じゃあもしかして栄口も,なのか?? そんな期待をしたら俺は少し笑えてしまった。 「なら,同時に言ってみっか?」 「うん!」 「…じゃぁ、行くよ?せーのっ」 『『HAPPYバレンタイン!!』』 「…ぷっ、あははは」 「ははっこれも同じかよ」 そう笑いあって、お互いに少し照れながらもプレゼントを渡し合う。 そして栄口が俺の唇に軽く触れた。 「阿部、好きだよ」 「…俺も好き、だ」 と言い合い、この後のキスはさっきの軽いキスではなく少し激しく息づかいが荒くなくような甘いキスをした。 ―――あぁ、このまま時間が止まってしまえばいいのにな。 俺はそんな事を本気で思った。 end. [次へ#] [戻る] |