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上田は今日も平和です(六才)
※ギャグです
※六郎がキャラ崩壊気味です
※六才よりです


 

冬と言えば炬燵。炬燵と言えば蜜柑。
普段あまり果物を食べない方だが、出されれば食べるし、炬燵で寛いでいるとする事が無いのでついうっかり手が伸びてしまう。
一房ちぎっては、口内に放り込み、その酸味と甘さに舌鼓を打った。うん、甘い。
同じく炬燵で蜜柑…ではなく饅頭を食べていた伊佐那海が首を傾げる。

「才蔵って、蜜柑好きなの?」
「んん?…好きって言うほど好きじゃねぇし、嫌いでもねぇけど」
「凄い食べてるよ?」

伊佐那海の指摘に蜜柑を取る手が止まる。俺の手前には蜜柑の皮が、小さいとは言え山になっている。

「出されれば食べるってだけだ」
「じゃあなんであたしが出した饅頭は食べないの!?」

どん、と大きな皿に山盛りの饅頭を突き付けられ、身を引いた。自分の顔より大きな山。こんなに沢山あっては、手をつける気も起きない。

「菓子の甘さと果物の甘さは違うだろ」
「同じだよー!甘いもん!」
「そうじゃなくて…菓子は食い過ぎると胸やけを起こすが、果物は起こさないんだよ」
「あたしは胸やけ起きないよ?」
「…じゃあ俺がそういう体質なんだよ」

だから菓子はいい、と告げると自称お菓子係の伊佐那海は頬を膨らませながらも「体質じゃあ仕方ないねー」と納得したようだった。あと、何故か安心したように胸を撫で下ろしている。何だ、と問うと伊佐那海は苦笑した。

「あのね、あたしは巫女だからH出来ないし、子供作れないでしょ?」
「い、いきなり何だよ」
「だから代わりに才蔵があたし達の子供を妊娠したのかなーって心配したんだー」
「してたまるか!」

蜜柑の皮を顔に投げ付けてやる。当然、「ひっどーい!」と怒り出した伊佐那海は饅頭山盛りの皿を持って「才蔵には一個もあげないんだからっ!」と出てってしまった。
…一個くらい貰っておけばよかったか、なんて食い意地張った事を考えていると、背後の襖が音を立てて開く。冷たい空気がなだれ込んできた。寒さに肩を竦めながら振り向くと、そこには六郎サンが立っていた。

「六郎サンも温まりに来たのか?」

俺の問いに答えず、ずかずかと部屋に入ってきた六郎サンは、俺の手を取り両手で包み込む。緊張で潤んだ目が俺を見据えた。

「才蔵…子供共々、幸せにしますから!」
「…は?」

今、六郎サンは何て言ったのだろうか。子供がどうとか言わなかったか?
六郎サンは無反応の俺を不思議に思ったらしく、きょとんとしながら尋ねてくる。

「私と貴方の子供、出来たんでしょう?」
「出来てねェよ!」
「まさか…私以外の子供ですか!?」
「んなワケあるか!」
「そうでしょうとも」

キリッと真顔で言い切る姿は、本当に男前だなーと思う。美人はずるい。
……いや、違う。そもそも男が孕む筈がない。六郎サンだって分かってる筈だ。なのに何故、こんな阿呆な事を言うのか。
ふと、六郎サンから香る匂いに顔を顰めた。

「酒の匂い…?まさか六郎サ」
「男の子でしょうか女の子でしょうか?楽しみですね」
「ちょ、やめ!愛おしそうに腹を撫でるのやめてくれマジで!」

うっとりと腹を撫でてくる六郎サンに俺の声は届いてないらしい。仕舞いには腹に抱き着いて耳を澄ませて、「鼓動が聞こえます…小さいながらも生きてるんですね」などと宣う。いやそれ俺の鼓動だから。

「…ぶっくっく、俺、もうダメ…!」
「これ甚八、静かにせぬかブフゥ!」

声の出元を辿ると、ちょっぴり開いた襖の隙間から、腹を抱える甚八と口元を扇子で隠す幸村のオッサンがいた。顔がほんのり赤く染まっている事から、二人も酒が入っている事に気付く。六郎サンがこんな状態なのも、恐らく二人の仕業だろう。こんな面倒な事態を引き起こした二人に怒鳴った。

「おいこらオッサンども!六郎サンに何しやがった!?」
「オッサンって言うな!」

即座に反応した甚八が乱暴に襖を開ける。ヴェロニカが、あらやだごめんなさいねと謝罪しているように見えた。幸村のオッサンは扇子を楽しげに扇いでいる。

「いやなに、甚八が手に入れた南蛮の酒を楽しんでいたのだがな」
「中でもとびっきり強ぇ酒を、六郎が飲んじまったんだよ」
「……とびっきりってどれくらい?」
「ほんの二、三杯で鎌之介が潰れるくらい」

ほれ、と甚八は小脇に抱えた鎌之介を見せた。こいつも酒にはなかなか強かった筈なのに、ぐでんぐでんではないか。それで六郎サンは酔っ払っちまったのか。道理で阿呆な事を言っているワケだ。

「で、どうすんだよコレ…」
「六郎は任せた!」
「俺達ァ、これから重大な使命があるんだよ」
「あ?なんだよソレ、聞いてねーぞ!」

使命ってなんだ?また近いうちに伊達や徳川と衝突があるのか?
外の気配に警戒をして幸村のオッサンを見ると、扇子を閉じ、鎌之介を指す。鎌之介に任務を命じるのだろうか。
幸村は自信満々に言い放った。

「鎌之介が男か女か、今日こそこの目で確かめるのだ!」
「 阿 呆 か っ !」

腹に引っ付いている六郎サンの頭を撫でながらツッコミを入れてしまった。甚八が「イェア!」なんて浮かれている。俺のツッコミに幸村のオッサンが唇を尖らせて反論した。

「だって才蔵ばっかりずるい」
「拗ねんな気色悪い」
「おい、鎌之介が目ぇ覚ます前に確認しよーぜ」
「うむ!隣の部屋が空いとるかのう!」

二人の会話を聞いて、内心「…最低だ」と毒づく。三人と一匹が隣の部屋に消えたかと思ったらヴェロニカだけこっちの部屋に戻ってきた。

「どうしたよ?」

ヴェロニカはふるふると首を横に振り、俺の隣に寝転ぶ。首を傾げた瞬間、オッサン達のいる部屋から、凄まじい殺気を感じた。戦闘体勢になりたくとも、六郎サンが邪魔で出来ない。

「六郎サン、どいて…」

「由利鎖鎌奥義・一 目 連 っ!!」

凄まじい轟音と共に響く破壊音。また修理費がかさむな、と吹き飛ばされた二人の悲鳴を聞きながら虚空を見上げた。
腹に引っ付いている六郎サンは、「一姫二太郎三なすび…」などと寝言を漏らしながら、いつの間にか夢の中。


――上田は、今日も平和です。



 
12/02/05

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