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オイラが独占!(弁才)
※才蔵は右と言い張る
※才蔵総受け
※弁丸視点
※弁丸の口調をよく分かってない




暦の上では春の筈なのに、上田城は今日も雪が降った。山や町並みに見える雪は大分溶けたのに、未だに降り続けるのは何故だ。早く去ればいいのに、冬将軍。
火鉢の前で手を翳して座っていると、背後の襖が開いた。

「さみーさみー!マジでさみー!」

肩を摩りながら入ってきたのは、勇士の与頭である才蔵。「なんだ、いたのか弁丸」と言って自分の隣に座った。同じように火鉢の前で暖を取る。

「子供は風の子だろー?外で遊ばなくていいのか?」
「遊ぶ程、雪がもう無いじゃん。どうやって遊べってのさ?」
「そこはお前の発想力に任せる」
「めんどくさいから、やーだよっ」

むすっとしながら言葉を返すと、「そうだな」って柔らかく笑った。綺麗な笑顔だった。
顔に熱が集まる。火鉢のせいだと顔を背けて原因を睨んでやった。薪が爆ぜる音を聞きながら、才蔵を盗み見る。
火の明かりに照らされた端正な横顔は、同じ男から見てもかっこよくて綺麗だと思う。思えば才蔵と二人きりって珍しい。彼の周りにはいつも人がいるし、オイラは楽な移動手段として清海のおっちゃんの背中に引っ付いてるし。おかげで握力は強くなってるけど。
いつも皆ばっかり才蔵と一緒で狡い。たまには甘えてもいいだろうか。彼なら文句を言いつつも許してくれると思う。
肩に寄り掛かろうかと企んだら、体がいきなり宙に浮いた。

「なっ!?」
「よっ…と」

脇の下に手を差し込まれ、抱き上げられて移動した先は、胡座をかいた才蔵の膝の上に着地した。後ろから抱き込まれ、背中に密着する冷たい体温に、どくりと鼓動が跳ねた。

「な、なにす…」

見上げるとすぐ傍に、はにかんだ才蔵の顔。それが可愛いなんて思ってしまい、言葉に詰まった。
心臓がばっくんばっくんと音を立てて五月蝿い。鎮まれ心臓。
次の才蔵の言葉で、一瞬だけ止まったけど。


「あー、やっぱり温ぇな子供体温!」


……湯たんぽ代わり?
顔を引き攣らせたけど、心臓は直ぐさま元通りに跳ねる。才蔵がぎゅうぎゅうと抱き着いてきたのだ。

「ちょ、ちょっと才蔵!」
「いいじゃねぇか、ちょっとくらい体温分けろ」

あったけー、と呑気に吐かす才蔵。もうどうしたらいいんだか分からない。あわあわと言葉にならず、手をばたつかせていると襖がスパーンと開いた。

「体温ならワシのを分けてやるぞ、才蔵!」
「引っ込んでください、若。才蔵、私が分けますよ」
「否!才蔵温める、我と動物達!」
「一発闘れば温まるって!才蔵、ヤろうぜ〜!」
「才蔵はあんたなんかとヤらないってば!才蔵〜!あたしが温めてあげるっ」

上から順に、幸村様、六郎、佐助、鎌之介、そして姉ちゃん。
才蔵もオイラも見るだけで「うわぁ…」と辟易した。体に回された手に力が篭る。

「いらん。弁丸で充分だ」
「何を言うか。それでは背中が温まらんだろうが」

幸村様の言う事は当然。背中はがら空きだ。皆は才蔵の背中を狙っているのだろう。何か面白くなくて、体を回転させて才蔵の首に腕を回す。姉ちゃんと目が合った。

「弁ちゃん?」

くりっとした目に良心が痛んだけど仕方ない。

オイラだって、才蔵を独占したい。

袖口から手製の爆弾を一つ取り出し、皆を睨む。幸村様が顔を引き攣らせた。

「ま、待て弁丸。こんな所でそんなモノ…」
「大丈夫だよ、辛子成分が入ってるだけ。目がしみるだけだから」
「貴方達も巻き添え喰らいますよ?」
「才蔵ならオイラ抱えても逃げれるし、温かい部屋は此処だけじゃないもんね」

ね、と同意を求めるべく横を向くと、凄い至近距離に才蔵の顔があってびっくりした。お互い息が掛かるくらいの距離だ。
驚きで硬直しているオイラに才蔵はニッと笑う。

「おう、やっちまえ」

その言葉を聞くなり爆弾を投げようとするオイラを見て、皆は慌てて部屋から出て言った。
やった、と小さくガッツポーズして、才蔵に抱き着く。また心臓がどくどくと跳ねた。

「…あったけぇなァ」

そう言う才蔵も既に温かい。頭を撫でる手が気持ち良くて目を閉じた。

たまには、オイラが独占してもいいよね?



■弁丸って才蔵の事をなんて呼んでん…?いや、みんなの事をなんて呼んでん…?
伊佐那海も「弁丸くん」か「弁ちゃん」だったか分からず…。

この時代に湯たんぽ無いよ!とツッコミは無しで。

才蔵はこっそり弁丸に癒されてればいいよ!

12/04/05

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