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其之拾

上に立つ者には少なからず人を惹き付ける能力がある、人の裏を見る能力に長けている。
母の影に覆われて見えないフリをしているだけ。
自分は誰にも好かれはしない、だから母上に嫌われるのも仕方の無い、当り前の事だと、認めたくない母親に疎まれているという事を、違う形で無理矢理納得しようとしてるだけ。
 
『全ての人間が自分を疎んでいて、誰も君の心配なんてしない?
自意識過剰だね。
普通、意識していなくても小さな子供が危ない目に遭えば人は心配する。
全ての人間が自分を疎んでいるって事は、全ての人間が自分を意識してるって事。
ありえないでしょ。
だから誰も君を心配しないなんてありえない。
良く周りを見てれば色んな事に気付くでしょ。』
 
梵天丸君はフルフルと首を振って俯いてしまった。
これ以上目を背けるのは、片倉さんとかに失礼だと思う。
あの人は、結構好きなキャラ。
キャラと言うか、思想が好きなんだけどね。
だから、少しだけ虐めるよ?
 
『君の母上様がどんな人かも、君についてどう思っているのかも、私は知らないよ。
だって私は君の母上様じゃあないからね。
…でも君は醜くなんて無いと思うよ。』
 
ただ片目が病に侵されてしまっただけ。
 
「嘘を言うでないっ!」
 
隠したままの目について私が知っていると言う事、伊達家の子供で有名な子供だから不思議じゃないと思う。
もし不思議な事だったとしても、この子は触れられたくないトコロに触れられた所為で気付かない。
 
『嘘じゃないよ。』
 
嘘を吐く意味が無いし、私はもっと、醜いモノを作った事があるのだから。
 
『君は、まだ、戦に、出た事が無い?』
「………。」
 
答えてもらえなくても、私は確信を持って答えを出せる。


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