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around seasons
※学パロ。ティキアレが同級生設定。















彼女に出会ったのは
高2の春だった。


桜舞う季節。
高校に入って二度目の春は、緊張感もなく、
穏やかな暖かさに、皆気怠さを隠せずにいた。


学校というものに興味のなかった俺は、サボる事も希ではなかった。
元々頭のいい方ではなかったし、かと言って部活動に励む程積極的でもなかった。

しかし、流石にこのままでは留年も危ういと、担任の教師から忠告を受け、渋々ながら学校へやって来ていたのだ。



久しぶりに登校した自分にクラスメイト達は好奇の目を向けてくる。


他の同級生よりも頭ひとつ高い身長

ハーフのような顔立ち

耳には黒いピアス


この外見と、普段は休んでいて見慣れない顔が物珍しかったのだろう。


皆じろじろ見ては何か囁くような声で自分の話をしている。


正直その視線がうっとおしかった。


そうして若干気まずそうにしていると、一年の時一緒だった奴が話しかけてきた。


実際あまり親しかった記憶はないが親切にも色々話をしてくれて、自分の席にも案内してくれた。






しかしHRが始まるまでは、まだ時間があって、
暇を持て余していた俺は、
なんとなく隣の席を見た。


隣に座っていたのは小柄な少女だった。



それだけなら大してなんとも思わなかった。


けれど、俺はその容姿に目が留ってしまった。



”まっしろ”



彼女の第一印象はまさにそうだった。


珍しい真っ白な白髪。

一見見よう人には、異形に見えるかもしれないが、
彼女の雰囲気がそれを感じさせなかった。


“凛”とした、彼女の雰囲気が。



真っ白な髪が光に反射してきらきらと光っている。

その髪が透けて、覗く横顔。

長い睫毛、

大きな瞳の色は銀に近い灰色か、

その瞳の矛先は彼女の持っている文庫本に注がれている。


雪みたいな白い肌。

姿勢のいい背中。

長い綺麗な指・・



そこまで見ていて、ふと視線を感じて顔を上げた。

そしたら、彼女が俺を見ていた。


不思議そうに、大きな瞳をまたたかせて。


「あ、・・」


いつの間に、まじまじと見てしまっていたのだろうか。

目が合ってしまって、気まずさと恥ずかしさを感じて、思わずたじろいでしまう。

しかしそれを無理やりごまかして、弁解の言葉を口にする。



「どうも、俺ティキって言うんだ。よろしくな」



なんとか笑顔を作ろってそう話しかけると、彼女はきょとんとして瞬きを繰り返した。


しかし次の瞬間にはふわりと笑って、


「よろしくお願いします」



と挨拶を返してきてくれた。




たったそれだけ、
それだけだったのに、

まるで彼女のまわりに
花が咲いたみたいに、

ふわりと彼女が笑った瞬間、花びらが舞ったような錯覚を覚えた。


声も、

容姿に負けず少しハスキーな凛とした声だった。

その声が未だ鼓膜から離れない。




こんな感覚は初めてだった。


まるでうたた寝をしながら見る夢みたいに淡くて、

けれどはっとして眠りから目覚めるような感覚。



まるで、今この瞬間生まれ変わったみたいだった。


自分の世界にぱっと色がついたような。

暖かな薄紅のその色は、
丁度今、窓の向こうに見える穏やかな春の色に似ていた。










これが恋だと、
初恋の始まりだと、
気付いたのはもっとずっと後の話。










around season 1 spring.


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