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dusty rhapsodyJ
二人はお互いに手紙を出し合った。
そしてなんと相手も同じ気持ちだったことがわかり、喜びあった。
"では、明後日、またあの日の舞踏会の場所で…6時に"
何度目かのやり取りの末、ついに会う約束を交わした二人。
一刻と迫る時が待ち遠しかった。
*****
約束の日、アレンは姉に協力してもらい、城を抜け出した。
護衛の為、付き人に一人ついて来て貰ったが、こんな風に出かけるのは全くの初めて。
しかし、今のアレンに少しも不安などなかった。
ただただ、彼に会えるのが嬉しくて仕方がなかったから。
庶民の利用する馬車に乗る事、数十分。
遂に約束の地に降り立った。
海に臨む邸宅はあの日のまま。
ただ一つ違うのは、そこには今日二人しかいないということ。
屋敷へと続く階段を一段一段登っていく。
時折海からの強い潮風がふいて、アレンの髪とドレスがなびく。
その度にアレンの瞳も不安げに揺れた。
実はここに降り立ったあたりから、段々と緊張してきてしまったのだ。
それはアレンの悪い癖で…。
そうなると頭の中は
マイナスの事しか考えられなくなる。
今日の格好は変なんじゃないかとか、
この前は
仮面をしていたけれど、
自分の素顔を見たら幻滅されるのではないかとか…
しかしアレンはそんな考えを振り払うように頭を左右に振った。
そして揺れるドレスの裾を、震える両方の手で抑えながらまた一歩ずつ進んでいったのだ。
普段は臆病な彼女だが、今は
彼に会いたいという気持ちが勝っていたから。
最後の一段を登りきり、視線を前に向ける。
すると視界のすぐ先に、彼が立っていた。
アレンを見つけた彼は振り向き、ふっと微笑んだ。
あの日見た、仮面の下の笑顔がそこにはあった。
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