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hit小説
dusty rhapsody

※この物語は、実際の史実、人物等とは一切関係ありません。
また、完全なフィクションであり、このような歴史事実はありません。

あらかじめ、ご了承下さい。













時は中世後期、ヨーロッパ。

今から語る物語は、その時代のとある国のお姫様と、またとある国の王子様のお話デス。











「舞踏会…?」

「ええ、しかも今宵行われるのは巷で流行りの仮面舞踏会なんですって!」



ここは王室宮廷。
その広大な屋敷の一角の部屋に、国王陛下の愛娘である二人の姫達が何やらこそこそ密談中。



「ねぇ、こんな機会、めったにないわよきっと。行ってみない?アレン」


「ええ…?!でもリナリー姉様…お父様に見つかったら…」


「大丈夫、手は打ってあるから!」



白く光に透ける髪の色を持つ姫は"アレン"と呼ばれていた。
一方黒く緑に光る美しい髪の色を持つ姫は"リナリー姉様"と呼ばれていた。

二人は姉妹なのだが性格はその髪の色のごとく正反対だった。



内気な妹のアレンは、社交界や舞踏会などが苦手で、大々的な国の行事以外ではそういう場に殆ど出かける事はなかった。

一方活発な姉のリナリーは、積極的に色々なパーティーに参加していた。
国の行事は勿論、庶民の祭りまで…
今夜のように王様に黙って抜け出し、身分を隠して一晩中遊び呆ける事もしばしば…



「毎日毎日、こんな堅苦しい、しきたりばかり重んじる屋敷にいたら、気が滅入ってしまうわよ?
ねぇ、今日くらい羽をのばしましょう、アレン」


リナリーは妹の手を取って真剣な目で訴えた。

彼女がアレンを誘ったのはただ一緒に遊びに行きたいという理由だけではなかった。

自分と違い、引っ込み思案で気が優しい妹は、生まれてこのかた自分の意志で屋敷の外へ出ようとはしなかった。


人の多い場所が苦手だと言ってはいるが、本当はいつも自分の身分を気にしているのではないかとリナリーは最近思うようになった。



実は妹のアレンと自分は本当の姉妹ではない。


アレンは、女王陛下、リナリーの母君(正妻)との子供ではなく、国王陛下が身分も知れないどこかの愛人に生ませた子供なのだ。


愛人は体が弱くアレンを産んですぐに亡くなってしまった。

愛人を本気で愛していた国王は、アレンを引き取り自分と正妻との間の子供として育てたのだ。


勿論その事は極秘にされていたのだが、

アレンが10歳、リナリーが11歳の時に、深夜両親がその事を話しているのを聞いてしまったのだ。
彼女はその時何も言わなかった。
心配する姉を安心させるかのようにただ笑顔を向けるだけだった。


だけどあれを聞かされて気にしない人間がいる訳がない。

優しいアレンの事、
きっと一人抱え込んで、一人で悩み、一人で考えてしまっているに違いない。




だから、せめて自分は、そんな妹の心を少しでも和らげてあげたい…
そう思ったのだ。











いつにも増してしつこく真剣に誘ってくる姉に、アレンは困ったような笑みを浮かべながら、

しばらくして"わかりました"と返事をするのだった。










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あきゅろす。
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