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secret chemistry
バサッ
勢いよくテーブルに何か落ちた音に、眉をひそめてそちらを見る。
テーブルに投げられたものに視線をやると、それは某女性週刊誌の今週号だった。
続いてそれを投げ捨てた人物に目線を移す。
その人物は部屋のドアに仁王立ちで立っていた。
小柄な眼鏡を掛けた白髪の女性。
なんてことはない、いつも行動を共にしている俺のマネージャーだ。
「どうしたの」
「どうしたもこうしたもないですよ…!」
何やらまた怒っている彼女。
しかし無視する訳にもいかず、話しかけるとヒステリック気味な声が飛んできた。
これも何時もの事なのだけれど…
「全く…あなたはどうしてスキャンダルばかり起こすんですか!?」
少しはフォローする僕の身にもなって下さいと、説教をし始める彼女。
それを聞くふりをして、左耳から聞き流し、今回の怒りの原因である雑誌を手に取りそのページを見る。
そこには某女優との密会デートと題して、その時の写真と…ご丁寧に相手女優のインタビュー記事まで載せられていた。
そこまで読んで、まだ説教を続ける彼女の顔を見て、ふっと笑う。
「だいたいって…聞いてるんですか!?」
「おおっと」
すると、彼女は急に俺の顔をのぞき込んできて…驚いて声をあげてしまった。
「聞いてなかったんですね…」
ため息をつき、さっきまで怒っていた彼女は、呆れたように冷めた目でこちらを見やる。
そして、
「…もういいです…三時からメンズ雑誌のインタビューと写真撮りがあるので、あと15分で支度して下さい」
いつものマネージャーとしての彼女を取り戻し、淡々とスケジュールを述べると、きびすを返し、部屋から出て行く。
「その記事、デマだぜ」
彼女がドアノブに手をかけた時だった。
俺はその小さな背中を視界の隅におさめながらそう言ってやった。
彼女の動きが止まった。
「…その話はもういいですから」
「よくないじゃん」
俺は立ち上がり、彼女の方へ歩み寄る。
そして、その肩を掴んで此方を向かせた。
めがね越し、顔を覗き込む。
彼女の瞳は濡れていた。
それに、胸がちくりと痛む。
「悪い、意地悪くしすぎた」
「っ…なんの事ですか?」
しかし彼女ははぐらかし、目線を合わせようとしない。
あくまでも平静を装う気なのだ。
その態度に、少しの苛立ちを覚える。
どうして頼らない?
どうして一人でそうやって抱え込もうとする?
「妬いてんだろ」
「思い上がらないで…!」
「認めろよ、ほんとは凄い気にしてんだろ」
「違……っんん!」
彼女の顎を掴み、顔を上げさせ、体をドアに押し付けて、無理矢理にキスでその口を塞ぐ。
否定の言葉などこれ以上聞きたくない
かけていた眼鏡が床にかしゃんと音を立てて落ちる。
しばらく暴れていた彼女だったが、力で押さえつけたためか
だんだんと力をなくし、大人しくなった。
その頃になって、ようやく唇を離してやる。
顔を見れば頬は赤く染まり、目には先程とは違う意味で涙を浮かべていた。
「は ぁ…急に何するんですか…!」
彼女は無理矢理の行為に、当然怒り、俺を睨んだ。
しかしそんな事は気にもせずに、言葉を放つ。
「お前が俺の話、ちゃんと聞かないからだろ?」
「…あなたの話なんて、聞くだけ無駄じゃないですか…」
けれど、
彼女は相変わらずそっぽを向いたまま。
「ひどい言われ様だな」
「………」
その頑な態度に苛立ちを通り越して呆れるが、先ほどと違ってどこか拗ねたようなそれに、少しだけ気を良くする。
「兎に角、あれは嘘だから」
「…でもあの日、あなた確かに…」
「確かに、彼女には会ったよ、…けどそれだけだ。記事に書かれてるような事はしてないよ」
「………」
「信じて」
少し屈んで、彼女の目線まで顔を下げ、その目尻に滲んだ涙を指で拭いながら、真剣にそう言う。
「…わかりました。信じます…」
彼女は暫く黙っていたが、一つため息をつくと、そう呟いた。
納得はしていないようだが…
そんな彼女に苦笑しながらも、その華奢な体を抱き寄せて、呟く。
「…ごめんな」
と。
「…謝らないで下さいよ、僕も少し…言い過ぎました…
…仕事に私情をはさむなんて、マネージャーとして失格……っん」
「それは言うなよ。
てかアレンは気張りすぎ…も少し甘えろよ」
悲しい顔をして、諦めたような台詞をはく彼女に胸が痛んで、またその口を塞いだ。
芸能界でも色々な女性と付き合ってきたが、いつも社交辞令や遊び半分でだった自分が、
初めて本気で好きになった女。
立場上色々問題になるので、こうして隠れて付き合っている訳だが…
そのせいで彼女には色々辛い思いをさせてしまっている。
だから、さっきみたいな顔を見ると、いっそバラしてしまいたくなる
「…こっちの方がよっぽどスキャンダルな記事になりそうだけどな」
「ちょっ…洒落にならない事言わないで下さい…!」
そう、冗談半分で呟けば、彼女は本気で焦った声を出す。
それに苦笑いを浮かべる。
「ん…わかってるって」
バレればきっと彼女とはこうしていられない。
あの社長が黙っちゃいないだろう。
だから隠すしかない、今は…まだ
けれどいつか、大勢の前で堂々と言ってやるつもりだ。
¨彼女は俺の大切な人です¨
*わわ、お久しぶりです…!
間があいてしまいました
今回のはパラレルリクで「芸能人×マネージャー」ということで書かせてもらったのですが、うーんどうでしょう?
真澄様、こんなんでよろしかったでしょうか
一応設定としては、
アレンさんは表向きは男のマネージャーとして通してたりとか。
ティッキーは俳優っぽい感じかなぁ。
あ、社長さんは勿論あの人で(笑)
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