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『私』の短い夢


「あんた馬鹿じゃないの。」

花の街ハルルの宿屋1室、少女の呟きが部屋の中に木霊した。

「え?」

その言葉の対象であろう少年は、言葉が表している通り意味がわからないとでも言いたげな表情で返事を返す。

「だーかーら!あんた馬鹿!?結構今更だけど。」

二人しかいない宿屋に声が響く。
外は夕焼けに彩られて幻想的な風景になっているのだが、それとは対照的に少女の怒号が飛ぶ一室。
なんとも風情が無い。

「こんな危険な旅にあんたは何で付いて来てる訳!?」

更に、馬鹿じゃないの、とでも畳み掛けそうなリタの口を少年は手で塞ぐ。
リタはすぐにその手を振り払い、肩で息をする。

少年―――ルーリアがこの旅に付いてくる事になったのは、数週間前だ。
野宿中、思わぬ事に大量の魔物に襲われていた所、加勢をしたのがルーリアである。それから彼は、仲間達(特にユーリ)に頼まれて付いて来ているのだ。

「まあ、馬鹿かも。でも。」

一回そこで言葉を区切って、少し、柔らかく笑う。
リタはそれに対して、でも?、と呟く。

「これも一種の運命みたいなものじゃないですか。たまたま通った道で、襲われてる人達。」

助けてみれば、人を救うようなことをしている、それを知って無視出来るほど自分は薄情ではないと信じたいから、と言い、最後に、少し運命みたいな物を感じたから、と付け足す。


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