レッド★ライン
6
どうやら殴られたようだ。
後ろを向けば、最初に転ばした男が数人の仲間に肩を支えられ、不敵に笑っている姿が見えた。
まだ動けたのか、と舌打ちしたい気分だった。
ざっと見回して十人弱。
さすがにこれだけの人数を相手にする程、ユーリは喧嘩なれしていない。
そうしてとり囲まれたような現状に、いよいよ本気でヤバいかもしれないと思い始めた。
なんだってこんなことに――と思っても既に遅く。
逃げようにも頭からの出血が原因か意識が次第に朦朧としていて、実のところ立っているのもやっとの状態であった。
だから逃げるなんて到底無理な話だ。
にじりよってくる男達にぼこぼこにされる自分を思い浮かべて、それがなんとも可笑しくて、こんな時だというのに笑えてしまう。
くっくっと笑うユーリを見て男達が何事か喚いているが、意識が霞んできているのかよく聞こえなかった。
空気の震える感覚に殴られると予想し、目を瞑るが一向に拳は飛んでこない。
代わりに場に似つかわしくない男の声が聞こえた。
誰―――だ?
そう思ったのを最後にユーリの意識は暗転した。
崩れ落ちた身体が倒れた先はアスファルトの上ではなく、力強い男の腕の中で。
それが一体誰の腕か意識のないユーリに分かる筈もなく―――。
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