機械仕掛けの恋。
2
要が家の扉前に着くとはかったように扉が開いた。これには最初こそ驚いていたが、今となっては慣れたもので扉の先に視線を向けた。
そこにはやっぱりユアンがいて、要と目が合うといつも無表情な顔が少しだけゆるみ微笑が浮かぶ。些細なその仕草を見るたびにユアンがまるで人間のように思えてしまう。人間である筈がないのに、どうしてそう見えてしまうのだろう。
あのニュースのこともあり、要はユアンに対し心配ばかりしていた。ユアンには聞いたことがないけれど本当はどこか故障しているのではないか、という疑いも捨てきれていない。
しかし、それをユアンに聞く勇気も持てないまま心配する気持ちだけが募っていく。
「おかえり、要」
「うん。ただいまユアン」
いつも通りの短いやり取りを交わし、自然な動作で要の持っていたスーパーの袋をスッとユアンが手に取る。
それくらい自分が持つと言ってみてもユアンは聞く耳を持たない。だから要は、「ありがとう」と言ってそのまま靴を脱ぎ、ユアンと一緒にリビングへ向かった。
ユアンはスーパーの袋を台所へ運び、しばらくすると手にマグカップを一つ持ってくると、それをソファに座る要に差し出した。
渡す直前に、「熱いから舌を火傷しないようにな」と一言注意を添えて、当然のようにユアンも要の隣に座った。
「子供じゃないんだから火傷なんてしないよ」
笑いながら要は湯気のたつマグカップの中身にふぅふぅと息をふきかける。たっぷりとミルクの入ったココアは要の大好きなもので、自然と口元が綻んでいた。
一口啜りテレビをつけた。
パッと映ったのはよくある旅番組だった。ゲストを交えてメインキャスターがいろんな場所を訪れては各所の解説をしている。
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