機械仕掛けの恋。
8
朝いつも通りに起きるとすっかり体調も良くなっていた。
午前中はベッドで本を読んだり、携帯を弄ったりとだらだらと過ごした。
携帯には体調を心配するメールが何件か送られていた。
「ユアンー。今日の夕方に友達来るってあるんだけど、会ってもいいよね?」
携帯のメール画面を見ながら要はユアンに声を掛ける。
「誰だ?」
「誰だって…親友の斎だよ。何か心配だから学校帰りに寄ってくれるみたいでさ。ついでに休んでた間の授業のノートも持ってきてくれる…って聞いてる?」
何の反応もないユアンに目を向ければ、なにやら考えごとをしているようだった。
そのまま要に何も言わずに部屋を出て行ってしまった。
水音が聞こえるから多分、要の夕御飯を作っているんだろう。
ユアンは家事をする以外は、要が使っていたパソコンに張り付いていた。
一体パソコンでユアンが何をしているのか気になって、こっそり覗き込んだことがある。
パソコン画面には流れるように過ぎていく数字の羅列。
こっそり覗き見ていたにも関わらず、要はユアンに「なにこれ?」と聞いてしまっていた。
きっと要が覗き込んでいたのはバレていた筈だ。
なのにユアンは怒るでもなく「関係ない」と一言言って、あっという間にパソコンのウィンドウを閉じてしまった。
つくづく不思議なアンドロイドである。
一般的に流通しているアンドロイドは基本的に人間に従順だ。プログラムされたことを実行し、それ以上もそれ以下もない。
ユアンはどこからやってきたんだろう。
もしかすると国で秘密裏に開発された新型アンドロイドかもしれない。でもそんなアンドロイドが道端のごみ棄て場にいるのはおかしい。
斎が訪ねてくるまで要はああでもないこうでもないとユアンのことを考え続けた。
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