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機械仕掛けの恋。



 しばらくユアンの胸に抱かれたままだった要は、ハッとしたようにユアンを仰ぎ見た。
 ユアンは何も言わないまま、じーっと要を見た後、身を離し静かに部屋を出て行った。
 要も今度は引き止めたりしなかった。
 もそもそとベッドに入った要は先程の行動の意味を考えた。
 ユアンが行ってしまうと思った途端、気付かないうちに手が伸びていた。
 まるでユアンが"また"何処かに行ってしまうのを止めるみたいに。

 昔から知っているならまだしも、要とユアンは出会ってから日もあまり経っていない筈で。
 どうして"また"だなんて思ってしまったのだろう。

そもそも本当にユアンとは初めてだったのか?
それに、なんで俺は「ユアン」って名前をつけたんだ?
あの時、頭に浮かんだ声は?
ユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアンユアン




ああユアンは壊れたんじゃなかったか―――?


 そう思った途端に要は気を失ったのかベッドに沈み込んでいた。
 ベッドの脇にはいつの間に来たのだろうか、ユアンが気配もなく立っていた。
 ユアンは振り上げていた手をゆっくり下ろし、ベッドに横たわる要に目を向ける。

 そうして手の内で要のいつもより色づいた頬を触り、赤い唇、頤、首筋へと滑らしていく。しなやかな首筋を幾度か撫でたあと、ユアンはその首筋に顔を埋めた。
 要が小さく声を出したが目覚める気配はない。
 ユアンは首筋から顔をあげ、ある一点を撫で擦る。しなやかな首筋に色づく赤い痕は先程ユアンがつけたものだ。

「このまま思い出さなくてもいいんだ…かなめ」

 眠る要の側でユアンは聞こえないくらい小さな声でそう言った。



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あきゅろす。
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