機械仕掛けの恋。
6
部屋に戻った要は大人しくベッドに入り、枕で背もたれを作って座った。
ユアンはベッドの淵に座って、持っていた盆を膝の上に置き、要の額にそっと手をあてる。
何をしているのかと思っていたら、要の体温を計っているのだと言われた。
「…まだ熱がある。念の為、明日も休んでもらう」
「えぇーーッ!もう大丈夫だっ…う、げほっ、ごほっ」
大丈夫だと言おうとした途端に咳が出てしまった。なんだってこんなタイミングで出るのか。
ゴホゴホと咳き込む要の背をユアンは何も言わずにゆっくりと擦ってくれた。
次第に咳も治まった頃「やはり明日も休んでもらう」と先程と同じことを言われ、要はそれに頷くしかなかった。
「それよりユアン、お腹すいた」
「ああ。熱いから気を付けろ」
言って口元に差し出されたレンゲに要は目を丸くした。
普通に自分で食べるものだと思っていたからだ。
ユアンを見やれば、なんてことのない顔をしているが、要はどうしようか考えてしまった。
いくら病人とはいえ高校生にもなって、食べさせてもらうなんて、やはり恥ずかしい。というよりも、要は誰かにそうしたことをしてもらった記憶がなかった。
だから差し出されたレンゲを困った顔で見るしかない。
「口を開けろ」
食べない要に焦れたのか、ユアンが静かに言う。
ガラス玉の瞳に見据えられて要は言われるままに口を開き、粥を呑み込んだ。それを見てユアンは次の粥を掬い、要に食べさせていく。
食べ終わった後はユアンから薬を渡され、嫌な顔をしつつも水で無理矢理胃に流し込んだ。
「うー……まずい」
「当たり前だ」
苦虫を噛み潰したような顔で残りの水を飲んでも口の中にある苦さは消えなかった。やはり、粉より錠剤だ。
ギシッとベッドが軋む音がして、要がそちらを向くとユアンが盆を片手に立ち上がっていた。
要は思わずユアンの服の端を引っ掴んだ。無意識だった。
「あ…っ!ご、ごめん」
慌てて掴んでいた服をパッと離して謝る。何に対して謝っているのか要もよく分かっていなかった。
「盆を置いてくるだけだ。終わったら直ぐに戻ってくる…大丈夫だ」
言ってユアンは要の頭を片手で引き寄せ軽く抱き締めた。
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