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機械仕掛けの恋。



 楽しそうに駆け寄ってくる小さな子供はいつも満面の笑みをしており、にこにこと笑う顔にはくりっとした瞳がついている。
 精一杯背伸びをして見上げてくる子供が愛しくていつものように視線を合わせ、頭を撫でてやるとパァッと瞳が輝く。

『ゆあん、だいすきー』

 言って抱きついてくるのはいつものことで、出会ってからずっと子供はこんな調子だった。
 感情を司るものなんてなくて全てが無機質な機械である自分。

 それでも子供のことが愛しくて愛しくて、誰にも傷つけられないように守ってやりたくて。
 ずっと側で笑っていてくれるのならば、何を犠牲にしてもいいとさえ思えた。
 それが例え自分自身であっても。
 きっと躊躇することはない。


***


 久しぶりともいっていいくらいに珍しく要は風邪をひいてしまっていた。
 季節の変わり目というには比較的穏やかな気候の毎日だったのだが、風邪をひく前日に要はびしょ濡れで帰宅していた。天気予報では晴れと出ていたにも関わらず、昼になって急に曇り出した。

 そうして帰る頃には大粒の雨がアスファルトを打ちつけていた。要同様に傘を忘れていた者は一様に諦めたように空を仰ぎ、大粒の雨の中を走って行った。
 止むまで待つという選択もあったけれど、雨あしは一向に止む気配がなく、びしょ濡れ覚悟で家に帰ったのだが。

 びしょ濡れ姿の要に一緒に住んでいるユアンはしかめっ面の顔をさらにしかめっ面にして、無言で要にまとわりつく水滴をタオルで拭き取っていった。
 その後、しっかり冷えた身体をお風呂で温めたから風邪をひく心配はないと踏んでいたのに―――

ピピピッ、ピッ!

 電子音が鳴る。
 チラリとベッドの上に座るユアンに目を向ければ「38度・・こんな状態でよく学校に行こうなんて思えたな」と体温計を睨んでいる。

「ユア・・「病人は静かに寝ていろ」

 いつもより数倍しかめっ面の顔で言うユアンに大丈夫だからとは言えなくなった。それに触れてくる手のひらが思いの外優しかったから。

「ユアンの手、冷たくて気持ちいね・・」

 要はそうして触れてくる手のひらに頬を寄せてヘラリと笑った。



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あきゅろす。
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