機械仕掛けの恋。
3
「あれ、今日も弁当?最近ずっとじゃねぇか」
昼休み時。
やっと4時間目も終わって、いそいそと持たされた弁当の包み開け食べ始めていた要は、頭上から聞こえるその声になんなのだとばかりに目を向けた。
しかし親友である斎はそんな要の態度も気にせず、近くにある机にどっかり座ると購買で買ったのだろうパンを一口頬張ってから「なあ誰かに作ってもらってんの、それ?」と興味津々に身を乗り出して聞いてきた。
要は親友である斎にまだアンドロイドを拾ったことを言っていなかった。斎を信じてないわけじゃない。
けれど、ユアンの事はあまり人に言っていいことではないと要は考えていた。
今現在の人間社会で製造番号も名前も持たないアンドロイドが存在するなんて、あってはならない、いや有り得ないことなのだ。
もしユアンの存在がバレでもすれば、きっと廃棄処分されてしまうかもしれない。
そう思ったら親友の斎にさえ言っていいのか悩んでしまうのだ。
結局、当たり障りのない要が言ってもおかしくない理由を口にした。
「ああ俺が作ってんだよ。最近、料理に目覚めてさ!弁当作るのも毎日の楽しみの一つになりつつあるんだ。斎も作れば?」
実際に毎日弁当を作ってくれているのはユアンで要はいつもギリギリまで寝ているのだが。
この場合、少しくらいの嘘は致し方ないと言えよう。
聞くものが聞けば苦し過ぎる理由。かくいう斎も要の不自然さに疑問を持ったが、ここは大人しく引くことにした。
「俺はするよりもさせる人間だ」
斎は不適に笑うと何食わぬ顔で要の弁当から厚焼き卵二つあるうちの一つをかっさらい、あっという間に口に放り込んだ。もちろん要がそれを一番大好きだと知っていての行動だった。
「いーつーきぃいいいいい!吐け吐き出せ!今すぐにだ!!」
襟元に掴み掛かり激しく揺すってくる要を横目に見る。どうしていつも同じ手に引っ掛かるのか。
「んな無茶、言うなって」
「じゃあ勝手に食べてんじゃねよ!バカ」
「そりゃあ…あまりに美味しそうだったからな。手が滑った」
「斎の手は何回滑んだよッ!」
してやられた要はふざけた事を言う斎を無視し、残りの弁当を素早く胃に収めていった。
途中、斎がご機嫌伺いのようにパンを差し出してきたが、食い掛けのパンなんて受け取る訳もなく。
その日一日要は斎を無視し続けたのであった。
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